2021 Fiscal Year Research-status Report
"Cognitively perceived pain" - the cerebral structural and functional dynamics on its mechanism and therapy
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19K09368
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
荻野 祐一 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (20420094)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 慢性痛 / 非定型歯痛 / 痛覚変調性疼痛 / 抗うつ薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
非器質的疼痛とは、痛みを説明できるだけの客観的な器質的原因が明らかでない痛みを言う。非定型歯痛(Atypical Odontalgia, 以下AOと略す)は、典型的な非器質的疼痛疾患であり、軽微な歯科治療を契機に長引く痛みや違和感を訴える一方、明らかな器質的原因が見当たらない。臨床におけるAO治療においては、経験的に高容量の抗うつ薬治療が有効であるが、その機序は不明である。研究申請者を中心に脳画像解析研究を実施してきたチームを継続し、倫理性の担保と被験者の安全性確保のために、臨床試験審査委員会(倫理委員会)の審査を通過後、UMIN登録(UMIN000029226)と臨床研究賠償責任保険加入(証券番号: NF07921991)を実施し、被験者データを集積した。透明性と公正性、持続的なチェックを担保した態勢のもと症例集積を開始し、現在 (2022/05)、AO患者24名 (女性: 17名, 男性: 7名, 年齢: 54.7 ± 13.0歳) の集積がある。患者群と年齢・性別マッチングさせた健康被験者も25名集まり、現在データの解析中という状況にある。AO患者の初診時から治癒時まで平均 222 ± 124.4 日、本研究におけるアミノトリプチリン使用量が平均 51.8 ± 29.6 mg /日と、非歯原性歯痛の診療ガイドライン (2019) に合致した投与量で治癒に至っている。「治癒」はVAS値が20以下、もしくは初診時より20以上の低下を示した場合と定義している。治療により歯痛の有意な減弱と共に、神経障害性痛要素、不安と抑うつ、痛みの破局化スコアの低下が見られている。一方、性格的なこだわり傾向を計る「不合理な信念尺度」スコアに変化はない。三環系抗うつ薬以外の薬物治療を要した患者は除外している。今後、解析結果を検討し学会発表と論文化を加速させる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ここ2年間にわたるコロナ禍の影響で、本研究のような患者を含むヒトを対象とする臨床研究は極めて困難な状況に面してきた。しかし、そうした逆境にもかかわらず、共同研究者の尽力もあり、参加希望して頂いた患者さんのデータ、健康被験者のデータ共に集積を継続することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
非定型歯痛(AO)患者群の脳構造・機能ネットワークの特異性と変化(dynamics, 動態)を明らかにするという観点から以下の仮説検証を行う。AOに対する抗うつ薬治療過程における脳画像解析を用いた研究は、文献調査をする限り、本研究が初めてであるが、脳における三環系抗うつ薬の作用効果部位は大うつ病(major depression)において先行研究がある。例えば、1) 抗うつ薬治療により、前頭前野の増大や海馬体積の縮小を防ぐ(脳構造的)効果がみられた、2) 同じくうつ病における安静時脳機能 (resting-state functional MRI: rs-fMRI) 研究において、前頭葉・帯状回から辺縁系(視床、線条体、扁桃体)を結ぶ機能的繋がりの増加が、抗うつ薬治療反応群に確認された、3) アミノトリプチリン(トリプタノール)の効果部位は扁桃体が示唆されている(ラット)、といった 先行研究が挙げられる。我々は、仮説「抗うつ薬による治療前後で前頭葉と辺縁系を結ぶ機能的ネットワークが増加する」を検証する。この仮説検証が肝要な点は、この前頭葉と辺縁系を結ぶ機能的ネットワーク増加が、人間の感情処理において抑制的制御 (inhibitory control) を表象しているとされていて (Dichter et al. 2016)、仮説が正ならば「“痛みを過剰かつ過敏に認知するようになってしまった病態”が、治療により抑制的制御(クールダウン)されていること」を今後の具体的な研究の推進方策とする。
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Causes of Carryover |
令和4年までに症例集積を終了し、脳画像解析から論文発表へと進捗する研究計画であり、学会発表費、論文投稿料、英文校正費、被験者謝金に使用予定である。
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Research Products
(2 results)