2021 Fiscal Year Research-status Report
悪性高熱症の遺伝子診断を目指した1型リアノジン受容体遺伝子変異体の作製と発現
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19K09383
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
小口 勝司 昭和大学, 医学部, 名誉教授 (50129821)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山田 英人 昭和大学, 医学部, 兼任講師 (50266160)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 悪性高熱症 / 1型リアノジン受容体 / 変異体 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内カルシウム(Ca2+)放出チャンネルである1型リアノジン受容体(RyR1)をコードするcDNAの塩基配列に、悪性高熱症(malignant hyperthermia、MH)患者の症例報告にあるアミノ酸配列の変異部位に相当する塩基置換を施したMH型RyR1cDNA変異体として作製した。これらをテトラサイクリン誘導性に発現を制御させることが可能な培養細胞株(Flp-In TRex293)に遺伝子導入して、効率的にMH型RyR1発現細胞株を複数種樹立した。現在も、これらMH型RyR1変異体発現細胞に対して、正常なコントロールとなり得る野生型(WT型)RyR1を発現した細胞における細胞内Ca2+動態と比較しながら解析できるシステムの構築を目指して実験を続けている。 一昨年から始まった国内での新型コロナウィルス感染の拡大により、当研究室においても実際に手を使うWetな実験系が継続的に進められない状況が長期間に渡って続いた。しかし、Dryな実験系ともいえる個々のRyR1cDNAカセット内でMH型変異を導入するためのPCRプライマーの配列と組み合わせをデザインすることは継続することができた。特に、昨年度より、カセット構造化したDNA用PCRプライマーをデザインするWebツール「DNA sequence Design Supporter(東京理科大学・基礎工学部)」を再利用することが可能になったことにより、実際の塩基配列を決定するためのシークエンス反応の操作を行わずに、デザインされたプライマーの配列から予め予測される制限酵素による切断の有無で予め判別する事が可能となり、この判別されたクローンのシークエンス反応だけを受託業者に委託して、実際の塩基配列を決定すれば良いので、より短時間で変異を確認できた各RyR1cDNAカセットを用いて実験が進められるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東京都における新型コロナウィルス感染拡大に対する「緊急事態宣言」や「まん延防止等措置法」の発令を機に、学外でのリモートワーク環境の確保が図られて、研究室外においても変異体作製用PCRプライマーセットをデザインできるDryな実験系の環境を整えることができていた。しかし、新型コロナウィルス感染の更なる拡大(第3~6波)に伴って、複数の当大学附属病院の現場からの入院前患者スクリーニング検査と当大学の医療系学部学生における臨床実習前の新型コロナウィルス感染のスクリーニング検査するための「昭和大学新型コロナウィルス対応PCRセンター」の業務に多くの時間と労力を費やさねばならない事態が生じた。このため、僅かな時間内で変異体の作製と株化細胞の維持等に取り組まねばならなかった。実際に変異体を作製するWetな実験操作は、この環境下で継続的に行うことが難しく、cDNA変異体の作製から培養細胞への遺伝子導入を経て、最終的にMH型RyR1変異体を発現する株化細胞の樹立に至る連携が上手く行かずに、実験にやや遅れが生じているのが現状である。今後の国内における感染対策の充実と現在の減少傾向にある新型コロナウィルス感染の収束に期待したいと考えている。 尚、我々がこの研究の過程で作製した正常型(WT)とMH型RyR1変異体を発現した各々の株化細胞に、単一細胞レベルで局所的な温度上昇を生じさせたところ、MH変異型において熱誘導性Ca2+放出(Heat-Induced Ca2+ Release; HICR)が生じて、MH病態に類似の病態を呈する「労作性熱中症」の病因と成り得ることが判り、その迅速な診断と治療法の提案に繋がるものと期待されたので、短報論文として共同研究者(大阪大学等)と共著で公表した。(doi: https://doi.org/10.1101/2020.10.29.351452)
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Strategy for Future Research Activity |
昨年と同様に、細胞内Ca2+放出チャンネルであるRyR1をコードするcDNAをカセット構造化したCsRyR1cDNAの塩基配列に、MH患者症例のアミノ酸変異に相当する塩基置換を行って作製したMH型RyR1cDNAの変異部位の種類の更なる追加を目指す。 一昨年始めからの続く国内での新型コロナウィルス感染も、現在は減少傾向にあり「まん延防止等措置法」等の規制も全て解除されて、更なる国内における感染対策の充実による感染の収束に期待している。同時にWithコロナの中の仕事改革とも言うべき新型コロナ検査方法など実験方略の見直しが必要であると考えている。例えば、研究分担者が兼務している「昭和大学新型コロナウィルス対応PCRセンター」の業務である新型コロナウィルス感染スクリーニング検査の工程を時間と労力を多大に必要とするPCR検査から、より簡便で短時間で結果を出すことが可能な抗原検査への移行なども提案されており、これらが実現すれば、PCR検査に費やしてきた時間的労力等が軽減されて、先のDryな実験系(変異体作製用プライマーのデザイン等)に続くWetな実験系(RyR1変異体の作製と株化発現細胞の樹立等)への速やかな移行と継続的な実施を可能にするものと期待される。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染者のスクリーニング検査するための「昭和大学新型コロナウィルス対応PCRセンター」の業務に多くの時間と労力を費やさねばならない事態が生じて、僅かな時間でMH型RyR1変異体作製と株化細胞の維持に取り組まねばならなかったので、実際に変異体を作製するWetな実験操作は、この環境下で継続的に続けることが難しくなり、変異体の作製と培養細胞への遺伝子導入とMH型RyR1変異体発現細胞の株化にやや遅れが生じていた。このため国内における感染対策の充実と現在、減少傾向にある新型コロナウィルス感染の収束に期待しながら、今後は"Withコロナ"の形ながら、実際に変異体を作製するWetな実験操作に時間と労力を研究計画通りに戻った際の遅れを取り戻すための研究経費として使用する計画である。
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Remarks |
"Heat hypersensitivity of ryanodine receptor type 1 mutants implicated in malignant hyperthermia" (URL: https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.10.29.351452v12)
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