2023 Fiscal Year Research-status Report
悪性高熱症の遺伝子診断を目指した1型リアノジン受容体遺伝子変異体の作製と発現
Project/Area Number |
19K09383
|
Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
小口 勝司 昭和大学, 医学部, 名誉教授 (50129821)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山田 英人 昭和大学, 医学部, 兼任講師 (50266160)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 悪性高熱症 / 1型リアノジン受容体 / RyR1 |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性高熱症(malignant hyperthermia、MH)は、揮発性の全身麻酔薬が引き金となって、骨格筋の拘縮を伴って高熱を発する優性遺伝形質の疾患であり、高率で死の転帰をとる。ヒトMH疾患の症例報告に、細胞内Ca2+放出チャンネルである1型リアノジン受容体(RyR1)をコードする遺伝子上に約200ヶ所の変異部位が見いだされている。本研究では、このRyR1をコードするcDNAの塩基配列(全長約15000塩基対)に、MH患者に報告されている遺伝子変異によるアミノ酸配列変異と同じアミノ酸変異を持つMH型RyR1cDNA変異体をコードするcDNAを作製することを目指した。 今年(2023年)度は、コードするアミノ酸配列はそのままで、新たな制限酵素切断部位を挿入出来る可能性のある配列位置と制限酵素種を検索できるWeb上の塩基配列デザインツールを用いてPCR用のプライマーをデザインした。これらのプライマーを用いて、当該研究において、ユニークな制限酵素により、11個のカセット(Cassette :Cs、各々約1500塩基対から成る)に分割して出し入れ可能なCs構造化した内の1個分のCsを鋳型として、PCRによる部位特異的変異導入法(site-directed mutagenesis)を行って、MHに関連したアミノ酸配列の変異を持つCsを作製した。さらに、変異部位の導入の有無を先のWebツールで検索した制限酵素による切断の有無と実際の塩基配列のシークエンスにより確認した後に、これらの変異部位を持つ各々の各Csを元のRyR1cDNAの位置に戻して全長のRyR1変異体cDNAとした。 このPCRを用いた部位特異的変異導入法を繰り返すことにより、MHに関連した新たなアミノ酸配列の変異を持つ50種の全長RyR1cDNA変異体(Cs1内8種、Cs2内23種、Cs3内19種)を作製した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年(2023年)度より、ヒト疾患に関連するRyR1遺伝子バリアントに関して、従来の「The Human Gene Mutation Database (HGMD)」のRyR1に関するデータベースが長期間に渡って更新されていなかったので、臨床的に重要なヒトゲノムバリアントを収載したデータベースとして世界的に広く利用されている「Clinver(NCBI主幹)」も加えて、RyR1変異部位の中から、「Uncertain significance」(解釈不明)で、且つ「FDA recognized Database」(アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration)の認証済みデータベース)の記載ある変異部位を持つRyR1変異体の作製を中心として、PCR用のプライマーデザインを進める事とした。これらの変異部位が導入されたかの有無を簡易に確認しながら実験を進められる様にするために、PCRプライマーの塩基配列内に新たな制限酵素部位が入る配列を検索できるWeb上の塩基配列デザインツール「DNA sequence Design Supporter(東京理科大・先進工学部)」と「Silent Mutator-Silent mutagenesis tool(Molbiotools、プラハ・チェコ共和国)」を組み合わせて利用しながらデザインしたプライマーを用いて、当該研究において、ユニークな制限酵素部位の導入により11個に分割して利用できる様にCs構造化したRyR1cDNA Csを鋳型としてPCRによる部位特異的変異導入法によりMHに関連した新たなアミノ酸配列の変異を持つcDNA変異体(Cs1内8種、Cs内23種、Cs3内19種、計50種)を作製した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年(2023年)度と同様に、MH患者等の臨症例に報告されているアミノ酸変異に相当するRyR1遺伝子バリアントの検索を行いながら、これらのアミノ酸配列の変異に相当する塩基配列の置換を行ってMH型RyR1cDNAの変異部位体の種類の追加を目指す。 2020年始めからの続いた日本国内でのCOVID-19の感染パンデミックも、昨年5月8日から感染症法上の位置づけが2類相当から5類と移行されてより、研究分担者が兼務してきた「昭和大学新型コロナウィルス対応PCRセンター」の業務であった新型コロナウィルス感染の定期スクリーニングのためのPCR検査が無くなり、本学の医療系学部学生と職員の臨床実習前の事前検査としての臨時の簡易な抗原検査等へと移行して、検査に要する時間的な負担が大幅に少なくなった。したがって、今後は、さらに実験のペースを早めて、新たな変異体部位を持つRyR1変異体cDNAの作製を進めていく予定である。 さらに、当該研究の当初の目的であった細胞内Ca2+放出チャンネルとしての機能的な変化の有無を実際に確認するために、これらの変異体を強制発現する株化発現細胞の樹立へ継続的に移行する実験系を実施できる様に努めたい。
|
Causes of Carryover |
今後の研究の推進方策にも記載したが、新型コロナウィルス感染状況が収束に向かって国内における感染症法上の位置づけが昨年(2023年)5月8日から2類相当から5類と移行されて、今後は「Withコロナ」の形をとりながらも、本研究の遂行における新型コロナウィルス感染の防御のために要する環境的な制約とこれに関連する検査等に要する時間と労力の量的制約が大幅に減少した。したがって、プライマーデザインなどのDryな実験系に続く、これまで滞っていたRyR1変異体cDNAを作製するWetな実験系を本格的に再開することが可能となった。 次年度は、先述のWeb上のPCRプライマーデザインツール等の利用により、迅速にPCRプライマーのデザインを行える様になっており、新たな変異部位の検索を追加しながら、継続的にRyR1変異体cDNAを作製する実験の経費として使用する必要がある。 さらに、当該研究の当初の目的にあった細胞内Ca2+放出チャンネルとしての機能的な変化の有無を実際に確認するために、これらの変異体をコードするRyR1変異体cDNA作製する実験系に加えて、これらの変異体を強制発現する株化発現細胞の樹立へ移行した実験系の実施できるように進めるための実験系の経費としても使用する予定である。
|
Remarks |
研究分担者が担った新型コロナ感染防止に関する学会報告等の一部を下記に記載する。 「昭和大学病院PCRセンターで実施したSARS-CoV-2学生スクリーニング検査」 石野敬子(昭和大学), 宇高結子, 岩瀬万里子, 小山田英人, 石川文博, 田中大介, 木内祐二 日本薬学会年会要旨集(0918-9823)142年会 Page26M-pm18(2022.03)
|