2020 Fiscal Year Research-status Report
D I Cにおける病型別の炎症と凝固の相互作用と血管作動性物質の意義
Project/Area Number |
19K09430
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
朝倉 英策 金沢大学, 附属病院, 准教授 (60192936)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | DIC |
Outline of Annual Research Achievements |
DICの本態は、著しい凝固活性化と微小血栓多発であり、進行すると不可逆的な臓器障害や出血症状をきたす。DICモデルを用いた我々の検討では、充分な抗凝固療法を行っても、特に炎症の強い病態では微小循環障害や内皮障害に起因する臓器障害を伴うDICの進展は不可逆的であり、凝固活性化以外の要素が病態に深く関与していると考えられる。血管作動性物質は、DICの循環動態に影響を与える可能性が高いが、その意義は不明である。我々のこれまでの検討から、LPS誘発DICモデルと組織因子誘発DICモデルでは、多くの相違点を有している。DICモデルでの検討を行う際には、DICモデルの病型を意識した検討が必須である。これまでDICモデルにおける出血症状の定量的な評価は困難であったが今年度の研究成果の一つとして、この方法を確立した(Int J Hematol, in press)。これに伴い薬物介入の影響も、より科学的に検討することが可能になった。 線溶抑制型DICモデルに対してtPAを投与して病態への影響を検討した。tPAは、投与量や投与時間の調整を行えば、有効かつ安全な治療方法になることを明らかにした。具体的には、凝固線溶関連マーカーや臓器障害の有意な改善のみならず、炎症性サイトカインへの抑制効果も観察された(投稿中)。 大動脈瘤に線溶亢進型DICを合併すると、時に致命的な出血症状をきたすことがある。外来管理には困難を伴うことが多かったが、我々の考案した方法で有効かつ安全にコントロールできることを英文発表した(Int J Hematol, 2021)。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、著しい血栓傾向と炎症を特徴とするが、一部の症例では線溶亢進型DICを併発して出血の原因となることを見出した(Lancet Respir Med, 2020他)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DICの病型分類は、DICの病態解析、診断、治療法の開発などDIC研究の根幹に関わる極めて重要な概念である。線溶亢進型DIC(組織因子誘発モデルに類似した病態)、線溶抑制型DIC(LPS誘発モデルに類似した病態)といったDICの病型分類は我々が世界で最初に提唱した考え方であるが、国際的に共有された概念とまでは言い難かった。我々は、数々の論文および学会発表を通して、DICの病態の多様性について報告を行ってきた。今回は、DICモデルにおける出血症状の評価方法として尿中ヘモグロビン定量が有用であることも明らかにして英文報告した。 また、LPS誘発モデルに対してtPAが有効であることを発見した。しかも、出血症状が全く見られない用量や投与方法も明らかにした。血栓止血学的分子マーカー、炎症性サイトカイン、病理学的所見、出血症状など詳細な検討を加えて現在は英文論文投稿中である。 大動脈瘤に線溶亢進型DICを合併することは少なくない。これまで外来で行うことのできる治療としては、ヘパリン皮下注などがあるが、患者負担が大きいのが欠点である。我々は詳細に血栓止血学的分子マーカーを検討することで、ヘパリン皮下注以外にも有用な治療方法があることを明らかにして、英文論文で報告した。 COVID-19における高度の血栓傾向は病態の悪化と密接に関連している。ただし、一部の症例では高度の出血症状も見られている。特にECMO装着症例では脳出血の合併が少なくない。これまでは、抗凝固療法の副作用、血管の脆弱性、後天性von Willebrand症候群などが出血の原因として指摘されてきた。しかし、我々は数多くの論文を精査する中で、線溶亢進型DICの合併が少なくないことを見出し、多数の英文論文での報告を行ってきた。
|
Strategy for Future Research Activity |
DICモデルの作成:ラットを使用し、DIC惹起物質であるLPSまたは組織因子を尾静脈より持続点滴し、DICモデルを作成する。DIC惹起 物質投与前、投与中、投与後における血小板数、フィブリノゲン、PT、D-ダイマー、AT、TAT、PAIによりDICの 発症、病型(線溶抑制型DICまたは線溶亢進型DICのモデルであるか)を確認する。 LPS誘発DICモデルとTF誘発DICモデルの病態比較検討:両DICモデルにおいて、凝固線溶動態のみでなく、血管作動性物質(エンドセリンETおよび一酸化窒素NO)の動態観察、ETおよびNOの発現臓器を同定することにより両DICモデルにおける血管作動性物質のDIC病態へ の関与・役割を考察する。 DICにおけるNO産生に関与するNOSアイソザイムの同定:両DICモデルの臓器におけるiNOS-mRNA、eNOS-mRNAの発現程度を評価することにより、NO産生に関与するNOSアイソザイムを同定する。我々の予備実験により、LPS誘発DICモデルと組織因子誘発DICモデルのいずれ においても血中NOXは著増するが、LPS誘発DICモデルではiNOS-mRNA発現が著増しているのに対し、組織因子誘発DICモデルではiNOS-mR NAの発現はなく、他のNOSアイソザイムがNO産生に関与しているらしいことを観察中であるが、アイソザイムの同定には至っていない 。 各種NOSインヒビター投与によるNO産生への影響:両DICモデルに対するアイソザイム特異的NOSインヒビターの投与に伴うNO産生への影響を観察することにより、NO産生に関与するNOSアイソザイムを確認可能である。また、特異的NOSインヒビターの投与に伴う、凝固 線溶病態、微小血栓形成、臓器障害、血行動態への影響を評価することにより、両DICモデルにおけるNOの役割を明らかにする。
|
Research Products
(41 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Journal Article] Molecular genetic analysis of inherited protein C deficiency caused by the novel large deletion across two exons of PROC.2020
Author(s)
Togashi T, Meguro-Horike M, Nagaya S, Sugihara S, Ichinohe T, Araiso Y, Yamaguchi K, Mori K, Imai Y, Kuzasa K, Horike SI, Asakura H, Watanabe A, Morishita E
-
Journal Title
Thromb Res
Volume: 188
Pages: 115-118
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-