2022 Fiscal Year Annual Research Report
一酸化炭素中毒後遅発性脳症に対する神経栄養因子の投与による治療効果の検討
Project/Area Number |
19K09436
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
西原 佑 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (50568912)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 一酸化炭素中毒 / 遅発性脳症 / マイクログリア / ミエリン / 神経細胞 / 神経栄養因子 / IGF-2 |
Outline of Annual Research Achievements |
一酸化炭素中毒では、急性期の中毒症状だけではなく、数週間から数か月の後に認知機能の低下といった症状を呈する遅発性脳症を発症するケースがある。この詳しい病態生理はいまだ不明確である。一酸化炭素中毒ではマイクログリアの減少が認められており、それに伴う神経保護因子の産生減少がミエリンと神経細胞の脱落が起こることが遅発性脳症の一因となることが示唆されている。これに対し、本研究では、マイクログリアの生存を目的とするのではなく、減少する神経栄養因子を補充することで遅発性脳症の発症を予防することを目的としている。記憶やミエリンの神経栄養因子の一つであるInsulin growth factor 2(IGF2)を投与し、IGF2を補充することで遅発性脳症の発症を予防することができるか検討する。 一酸化炭素中毒のモデルラットにIGF2を投与し、海馬組織をサンプリングし、Western blottingによりミエリン成分の蛋白の一つであるmyelin basic protein(MBP)を解析したところ、IGF2を投与した群のラットにおいて、生食投与群に比べ、有意にMBPが保持されていた。これはreal time PCR によるデータとも合致しており、IGF2の投与は一酸化炭素中毒後のミエリンの脱落に対して一定の効果が得られることが確認された。 昨年度までの研究の結果を合わせて考察すると、IGF2投与は一酸化炭素中毒モデルラットの行動異常を改善するが、この効果はマイクログリアの生存を助けるものではなく、神経細胞に発現するIGF1受容体を介し、神経細胞やミエリンの生存を助ける可能性があることが示唆された。
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