2019 Fiscal Year Research-status Report
The development of Intravenous lipid emulsion therapy for overdoses of lipophilic drugs
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19K09446
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
辻 琢己 摂南大学, 薬学部, 准教授 (90454652)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 急性薬物中毒 / Lipid therapy / クロミプラミン |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は,脂溶性薬剤の過量服用に対する治療方法(解毒方法)として,脂肪乳剤の静脈内投与(lipid therapy)を臨床に還元するための基礎的研究を行っている.即ち,本申請課題では,脂溶性薬剤として三環系抗うつ薬であるクロミプラミンを用いて,lipid therapyの最適な投与方法および安全性等に関する基礎的データを集積する.平成31年度は,クロミプラミン(CMI)を経口投与したWister系ラットに脂肪乳剤としてイントラリポスを持続静脈内投与し,各個体の血液中および組織中のCMI及びその代謝物であるデスメチルクロミプラミン(DMCMI)濃度を調べた.また,今後計画している利尿薬との併用療法の有用性の有無についても予備的研究を実施した. Wistar系ラット(雌性,170~200 g)に100 mg/kgのCMIを経口投与し,CMIによる中毒状態を誘導した.これらの個体を実薬群(20%イントラリポスを2 g/kgとなるように尾静脈から持続静注(0.12 mL/min))及び非投与群に分け,CMI投与120分後,240分後における血液中,脳中及び肝臓中のCMIとDMCMIの濃度をHPLCで測定した.その結果,CMI投与120分後の肝臓中CMI濃度は実薬群では222±127 μg/100 mgであり,非投与群(490±186 μg/100 mg)と比較して有意(P<0.05)に低く,組織への移行が抑制された.また,脳中のCMI濃度も実薬群で低い傾向がみられ,120分後でも効果が持続していることが示された. 以上の結果から,脂肪乳剤の投与により,CMI投与120分後までの組織への移行を抑制できる可能性が示唆された.一方,利尿薬を併用した場合は,利尿による血液濃縮により血中CMI濃度が上昇する可能性が示された.この予備的研究の結果については,今後,詳細に調べる予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31年度は,本課題申請時の研究計画に記載した通り,おおむね順調に進行している.すなわち,研究実績の概要で記載したように,イントラリポスを投与した実薬群の肝臓中のCMI濃度は,非投与群と比較して有意に低値であった.同様に,脳中でも非投与群と比較して,低値が長時間維持されていた.これらの結果から,lipid therapyの臨床応用の意義が極めて高いと考えている.一方,当初,利尿薬の併用により,排泄が促進できる可能性があると推測していた.しかし,予備的研究においては,予想に反して血中CMI濃度の上昇がみられている.CMIの代謝物であるDMCMIにも薬理作用が存在するため,この利尿薬の併用療法については,代謝物であるDMCMIの動態についても併せて詳細に調べる必要があると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は,本課題申請時の研究計画に記載した通り,イントラリポスの持続静脈内投与がCMIの組織移行を抑制することを明らかにした.また,利尿薬の併用療法の有用性の有無に関する研究についても一部実施した.これらの結果をもとに,平成32年度は,CMI及びDMCMIについて,1)利尿薬の併用によって組織への分布がどのように変化するのか,2)尿中への排泄はどのように変化するのか等について詳細に調べる予定である.さらに,ECGプロセッサシステムを有効に活用し,イントラリポスの持続静脈内投与により,CMIの過量投与によって生じる心電図異状等の中毒症状を抑制できるか否かについても段階的に調べる予定である. 以上の研究によって,lipid therapyの有用性を明らかにし,急性薬物中毒に対する安全かつ効果的な治療方法を提案したいと考えている.
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Causes of Carryover |
購入予定の試薬の製造が遅れたため購入できなかった.改めて2020年度に購入する予定である.
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