2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K09491
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
吉野 篤緒 日本大学, 医学部, 教授 (50256848)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角 光一郎 日本大学, 医学部, 助教 (20838479)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 抗腫瘍効果 / 悪性神経膠腫 / 抗てんかん薬 / 細胞周期 / アポトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
抗てんかん薬はevidenceに基づいた投与を行えば、悪性神経膠腫患者の延命効果に繋がるのではないかと考えている。しかし、実臨床に対する基礎的研究がほとんどない。そこで悪性神経膠腫細胞株(等)を用いて、各種抗てんかん薬の抗腫瘍効果(細胞増殖抑制効果、遊走能や浸潤能など)やその作用機序を検討するとともに、化学療法施行時などにおける最善の投与方法を模索し、治療成績の向上に結び付けるために、本研究では以下の基礎的実験を行ってきた(再開発医薬品としても期待)。 (1)各種抗てんかん薬の抗腫瘍効果 悪性神経膠腫に対する標準的化学療法薬であるTMZと抗てんかん薬であるVPAやLEVとの相乗的な抗腫瘍効果を示唆する報告がある。そこで悪性神経膠腫細胞株を用いて、標準的な抗てんかん薬の抗腫瘍効果に対して検討を行ったところ、VPAなどにおいて濃度依存的に細胞増殖抑制効果がみられた。 (2)AMPA受容体非競合的拮抗剤の抗腫瘍効果 新規抗てんかん薬にAMPA型グルタミン酸受容体阻害薬があるが、増殖・浸潤が抑制されることが示唆されている。また、AMPA受容体非競合的拮抗剤である talampanelをTMZと併用投与した米国での第II相臨床試験では、生存期間の延長が報告されている(Grossman SA, 2009)。このようにAMPA受容体阻害抗てんかん薬は、抗腫瘍効果が期待されているが十分に検討されてない。そこで、新規AMPA受容体阻害抗てんかん薬の悪性神経膠腫細胞株に対する抗腫瘍効果を検討し、以下の結果を得ている。1)悪性神経膠腫細胞の濃度依存的な細胞増殖抑制効果を認めた。2)Western blot において細胞周期やapoptosisの関連タンパク質の増加を認めた。3)FACSでは抗てんかん薬としての適正血中濃度での有意な細胞周期停止および濃度依存的なapoptosisの誘導が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
悪性神経膠腫細胞(株)を用いて、各種抗てんかん薬の抗腫瘍効果(細胞増殖抑制効果、遊走能や浸潤能などを含む)や作用機序を検討するとともに、化学療法施行時などにおける最善の投与方法を模索し、治療成績の向上に結び付けるために以下の基礎的実験を行ってきた。なお、再開発医薬品(抗てんかん薬の抗腫瘍効果)としても期待している。 1)各種抗てんかん薬の抗腫瘍効果:現在までに、A-172、AM-38、T98G、U-87MG、U-251MG、YH-13の6種の悪性神経膠腫細胞株を用いて、標準的な抗てんかん薬であるVPA、LEV、CBZの3剤の抗腫瘍効果の検討を行ったところ、VPAにおいて濃度依存的 に細胞増殖抑制効果がみられた。 2)AMPA受容体非競合的拮抗剤の抗腫瘍効果:新規AMPA受容体阻害抗てんかん薬であるPERの悪性神経膠腫細胞株に対する抗腫瘍効果を検討し、以下の結果を得ている。悪性神経膠腫細胞の濃度依存的な細胞増殖抑制効果を認めた。また、Western blot において細胞周期やapoptosisの関連タンパク質の増加を認めるとともに、FACSでは抗てんかん薬としての適正血中濃度での有意な細胞周期停止および濃度依存的なapoptosisの誘導が確認された。現在、6種の悪性神経膠腫細胞株を用いて、PER(0 - 100 uM)を投与した後の細胞増殖抑制効果を検討し、濃度依存的に細胞増殖抑制効果を確認している。さらに、T98GとU-251MGを用いてFACSによる細胞周期分布解析およびapoptosis 誘導解析を行っている。また、PER 1uM(抗てんかん薬としての適正血中濃度)投与後、細胞周期およびapoptosis 誘導に関連するタンパク質についても評価を行っている。 以上、概ね計画通りに研究は進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
悪性神経膠腫細胞株を用いて、各種抗てんかん薬の抗腫瘍効果とともに、化学療法施行時などにおける最善の投与方法を模索し、治療成績の向上に結び付けるために、1)各種抗てんかん薬の抗腫瘍効果、2)AMPA受容体非競合的拮抗剤の抗腫瘍効果、などの基礎的実験を行ってきた。 今後、A-172、AM-38、T98G、U-87MG、U-251MG、YH-13の6種の悪性神経膠腫細胞株を用いて、悪性神経膠腫に対する標準的化学療法薬であるTMZと、標準的な抗てんかん薬であるVPA、LEV、CBZならびに新規AMPA受容体阻害抗てんかん薬であるPERの併用投与における抗腫瘍効果の比較検討を行う。更に検討を進め、その効果が相乗であるか相加であるのかChou Talalay methodを用いて検討を加える。また、作用機序の違い等の検討を行う(apoptosis、cell cycle、細胞死の検討: apoptosisだけでなくnecrosis、necroptosis、autophagyやferroptosis、等を検討する)。 一方、AMPA受容体阻害により浸潤が抑制されることも示されている(Ishiuchi S, 2002)。そこで、抗てんかん薬の悪性神経膠腫に対する浸潤能や遊走能に対しても検討を行う(migration および invasion assay:migration assayとして、scratch assayおよびtranswell assayを行う。また、invasion assayでは invasion chamberを用いる)。 また、膠芽腫の治療はglioma stem-like cells(GSCs)を対象、あるいは幹細胞の側面を理解とした戦略に転換する必要もあると考えられる。そこで、GSCsに対する標準的な抗てんかん薬の抗腫瘍効果の検討も行いたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で学会等を含め全てが縮小傾向となり、学会参加のための旅費、あるいは人件費がなどの経費に対する支出が無かった。一方、昨年度は当教室にてすでに購買してあった既存の消耗品等物品を実験に使用することができたために、物品費の支出が少なく研究を遂行することができた。しかし当該年度は、物品費である消耗品費、特に抗体、Western blottingに掛かる費用(抗体や試薬など)、あるいは悪性神経膠腫細胞株の培養に関わるフラスコ、培養液、 チップ類、ピペット類など、消耗品等物品費の支出がかさみ使用額が 1,973,664円となった。 消耗品等の物品費がかさんだが、学会参加のための旅費あるいは人件費がなどの支出が無かっため、結果としてわずかであるが、2,536円の次年度使用額が生じた。 次年度も、消耗品等の物品費は相当額掛かるものと考えている。不足分が発生した場合には、次年度の人件費・謝金、その他の計上費用を当てることも考えている。次年度使用額は、上述のごとく2,536円であるが、物品費である消耗品費に当てる予定である。
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