2019 Fiscal Year Research-status Report
酸素濃度勾配と2つのHIFによる関節軟骨の恒常性維持のメカニズム
Project/Area Number |
19K09568
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 大典 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (60835354)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 琢 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30456107)
岡田 慶太 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (50759173)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 関節軟骨 / 酸素濃度勾配 / HIF-1α / HIF-2α |
Outline of Annual Research Achievements |
関節軟骨は巨大な無血管組織であり、滑膜から分泌される関節液を介して酸素や栄養が供給されるため、低酸素環境に置かれている。我々はこれまでの検討にて、酸素濃度は正常関節軟骨の表面では高いが深層では広範囲で低く抑えられていること、低酸素下でのみ安定化する転写因子HIF-1αは深層で強発現し、軟骨に保護的に作用すること、比較的高い酸素濃度下でも安定のHIF-2αは表層に発現し、関節の潤滑性維持を担っている可能性があることを突き止めた。本研究ではこれらの知見を厳密かつ総合的に検証すべく、関節軟骨の表層特異的、深層特異的なCreマウスを用いて2つのHIFのそれぞれの部位での役割を解析するとともに、各層での転写標的をChIPシーケンスなどを駆使して解析し、酸素濃度勾配が2つのHIFを介して関節軟骨を維持する機構を解明する。また滑膜炎が関節軟骨の酸素濃度に与える影響も解析し、変形性関節症の増悪因子としての滑膜炎の意義についても検証する。 関節特異的Creマウスを用いたHIF-1αの機能解析を行った。 正常関節軟骨層に発現するHIF-1αの役割を解析するため、関節特異的なCol2-CreERT2とHif1a-floxを交配させ、骨格成長後にタモキシフェンを投与して関節軟骨におけるHIF-1αをノックアウトし、経時的に関節軟骨の変性を組織学的に解析するとともに、内側半月と内側側副靭帯の切除によるOAモデルを作成してOA進行に与える影響も解析し、in Vitroにおいては、初代関節軟骨細胞を用いた解析の結果、Hif1aの下流のシグナルを同定し、そのメカニズムは低酸素下でのみ安定化する転写因子HIF-1αは関節軟骨深層で強発現し、NfkBシグナルを抑えることで、軟骨に保護的に作用することを解析し、発表した(Okada K, et al., Si Rep. 2020 )。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
変形性膝関節症マウスモデルにおける転写因子HIF-1αの役割の解明は昨年度論文公表することができ(Okada K, et al., Si Rep. 2020 )、NfkBシグナルを抑えることで、低酸素下でのみ安定化する転写因子HIF-1αは深層で強発現し、軟骨に保護的に作用することを解析し、発表した。 今年度は比較的高い酸素濃度下でも安定のHIF-2αの関節の潤滑性維持を担っている可能性について解析を続ける。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、関節表層特異的Creマウスを用いたHIF-2αの機能解析(変形性膝関節症マウスモデル)を行うとともに、これまで解析した軟骨に保護的に作用するHIF-1αのメカニズムの知見をもとに、表層、深層におけるHIF-1α, HIF-2αの転写標的の解析を行う。正常の表層細胞におけるHIF-2αの転写標的と、正常および変性した深層細胞におけるHIF-1αとHIF-2αの転写標的を網羅的に調べるため、それぞれの層から単離した軟骨細胞においてHIF-1α, HIF-2αに対するChIPシーケンスと、オープンクロマチン領域を調べるATACシーケンスを行い、正常から変性に至る過程のそれぞれの部位で、2つのHIFがどのような標的遺伝子を転写誘導しているのかを網羅的に解析する。
|
Causes of Carryover |
順調に研究が進んでいるため、必要以上に経費をかけずに済んだ。 次年度は in vivoの解析など、次年度以降の経費がかさむ実験に使用する計画である。
|