2020 Fiscal Year Research-status Report
トロンビンによる椎間板変性メカニズムにおける新規制御因子の解析
Project/Area Number |
19K09594
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
波呂 浩孝 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10313264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 隆 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (10377492)
小山 勝弘 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (30313779)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 椎間板変性 / トロンビン / MCP-1 / PAR1 / MMP3 |
Outline of Annual Research Achievements |
椎間板変性のメカニズムを特定することは、腰椎疾患の成因解明に極めて重要である。我々は、これまでに椎間板ヘルニア退縮のメカニズムを同定してきており、炎症性サイトカイン(TNF-α、TWEAK、MCP-1)や蛋白分解酵素(MMPs)や血管新生因子(VEGF)やマクロファージの遊走が、重要であることが明らかとなっている。椎間板ヘルニア退縮と椎間板変性の機序において、いずれも炎症に起因することがわかっており、今回、これら一連のメカニズムのイニシエーターを同定すべく、実験を行った。その結果、新たな炎症イニシエーターとして、凝固因子として知られるトロンビンが候補にあがった。令和元年度の研究成果として以下のことが実験で明らかになった。1)マウス椎間板には、トロンビンの受容体であるPAR1が発現していること、2)トロンビンはPAR-1を介し椎間板に作用し、MCP-1発現を増加させること、3)そのMCP-1はマクロファージ遊走能を促進させること、4)また、トロンビンの刺激がマウス椎間板におけるMMP-3の発現を増加させ、5)さらに椎間板の変性をみたサフラニンO染色では髄核の変性がより進行していることががわかった。以上の結果よりトロンビンは椎間板において炎症を促進させ、変性をもたらす標的因子の一つであると考えられた。しかし、トロンビンが実際に変性のどの段階に作用しているかは、いまだに不明な部分が多い。今後は、in vitro, in vivoにおけるPAR1受容体のノックアウトを利用して、さらなるメカニズム解明を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在の研究成果として、マウス椎間板におけるトロンビンの作用を示してきた。受容体であるPAR1がマウス椎間板に発現していること、また、トロンビンがPAR-1を介し椎間板に作用し、MCP-1発現増加、MCP-1産生、マクロファージ遊走能促進、MMP-3発現増加、椎間板の変性があきらかとなった。今年度は、PAR1以外の受容体(PAR2,3,4)についても検討したが、結果としてPAR1がトロンビンが椎間板変性を引き起こすための主たる受容体であることが分かった。今年度はPAR-1以下の細胞内シグナルについての解析しているが、この部分の遅延がみられる。達成度としては70%程度と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの実験結果をもとに、抗トロンビン抗体の椎間板注入実験を、まずwild typeマウス、その後にPAR-1受容体ノックアウトマウスで実施しその作用を明らかにする。さらに、最適な標的分子を同定し、実際に自然発症腰椎変性ビーグル犬を用いて抗サイトカイン療法を行い、椎間板変性の抑制の評価および治療効果の検討を行う。具体的には、若年ビーグル犬に、物質Xのアンタゴニストなどを経皮的に投与する。評価は、MRI、歩行可能距離、四肢筋力などにて治療効果の検討を行う。
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Research Products
(6 results)