2020 Fiscal Year Research-status Report
膀胱癌の脂質代謝を介したがん微小環境における浸潤メカニズムの解明
Project/Area Number |
19K09705
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
河合 弘二 国際医療福祉大学, 国際医療福祉大学成田病院, 教授 (90272195)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西山 博之 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20324642)
神鳥 周也 筑波大学, 医学医療系, 講師 (50707825)
根来 宏光 筑波大学, 医学医療系, 講師 (80708595)
星 昭夫 筑波大学, 医学医療系, 講師 (90453711)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 膀胱癌 / PLD1 / PA / 腫瘍浸潤 / MMP-13 |
Outline of Annual Research Achievements |
PLDシグナルを介した膀胱癌の浸潤メカニズム解明のため、我々はこれまで、in silico、in vitro、in vivoによるアプローチを行った。 TCGAデータベースの解析により、ヒト膀胱癌ではPLD1、PLD2のうち、主にPLD1高発現が予後不良と関連していることが明らかとなった。次に、ヒト膀胱癌細胞株におけるPLD1ノックダウンにより、細胞浸潤能の有意な抑制を認めた。さらに、ノックダウンによる遺伝子発現変化をPCRアレイで検討した結果、MMP-13の有意な発現低下を認めた。 マウスBBN膀胱発癌モデルでは、PLD1ノックアウト(KO)により浸潤性膀胱癌の発生が抑制され、WT群ではMMP-13の経時的な発現上昇が見られたが、KO群では見られなかった。膀胱サンプルを用いてRNAシークエンスを行った結果、膀胱癌の浸潤メカニズムにおけるPLD1シグナルの下流分子としてMMP-13が候補に挙がり、さらに上流制御因子解析によりNF-kB p65が転写調節因子として想定された。 最後に、PLD1が産生するPAを添加した結果、PLD1ノックダウン細胞株におけるNF-kB p65のリン酸化レベルの亢進とともに、MMP-13の発現回復を認めた。 これらの結果より、PLD1はNF-kBシグナル経路を介したMMP-13の発現調節を介して、膀胱癌の浸潤を促進することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
in silico解析により、PLD1の発現亢進がヒト膀胱癌における予後不良と関連していることを明らかとした。 続いてin vitro解析により、ヒト膀胱癌細胞株におけるPLD1ノックダウンにより、細胞浸潤能が有意に抑制されることを確認した。ノックダウン細胞株とコントロール細胞株における発現変動遺伝子をPCRアレイで解析し、さらに得られた候補遺伝子をPLD1発現や膀胱癌の予後との相関によりフィルタリングした結果、MMP-13が候補として挙げられた。 マウスBBN膀胱発癌モデルではPLD1-KOマウスにおける浸潤性膀胱癌の発生抑制を認め、このin vivoモデルにおけるRNAシークエンスを用いたパスウェイ解析の結果、KO群においてMMP-13を含むMMPsの阻害が亢進している結果を得た。さらに、IPAを用いた上流制御因子解析ではNfkB1-RelAが候補として挙げられ、文献検索と合わせてNF-kB p65がMMP-13の転写調節因子のひとつとして考えられた。 PLD1ノックダウン細胞株におけるNF-kB p65のタンパク発現は変化しなかったが、同タンパクのリン酸化レベルの低下が明らかとなった。PLD1が産生する脂質性シグナル伝達物質であるPAを添加したところ、このリン酸化レベルの亢進とともに、PLD1ノックダウンにより低下したMMP-13の有意な発現回復を認めた。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、我々はPLD1とPLD2のうち、PLD1に着目し、NF-kBシグナル経路を介したMMP-13の発現調節を介して、膀胱癌の浸潤を促進することを明らかとした。マウスBBN膀胱発癌モデルにおいて、PLD1-KO群における浸潤性膀胱癌の発生抑制を認めた一方で、PLD2-KO群においては、反対に浸潤性膀胱癌の発生増加を認めた。これまで、PLD1に着目して膀胱癌におけるがん側の検討を中心に行ってきたが、がん微小環境においてはPLD1とPLD2は異なる機能を持つ可能性が、今回のマウスBBN膀胱発癌モデルにおいて示唆された。がん微小環境におけるPLD1とPLD2の役割に関する報告は少なく、膀胱癌における報告は我々の知る限りない。 今後はマウス膀胱癌細胞株であるMB49を用いたマウス皮下接種モデル、マウス膀胱注入モデルでPLD1/PLD2-KO群における表現型の比較を行う。BBN膀胱発癌モデルと同様にPLD1-KO群とPLD2-KO群で異なる表現型が得られた場合、RNAシークエンス等により、がん微小環境におけるPLD1/PLD2シグナルの機序解明を行う予定である。
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Research Products
(1 results)