2020 Fiscal Year Research-status Report
子宮Ecosystemの観点から捉える子宮体がんに対する抗腫瘍免疫応答
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19K09778
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
鈴木 史朗 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍免疫応答研究分野, 研究員 (20612758)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 腫瘍免疫 / 子宮体がん |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、Ⅰ)子宮体がん内部位別の抗腫瘍免疫応答子宮体がんとⅡ)子宮内細菌叢の関連性という2課題を解明すべく臨床検体・臨床情報を用いて研究を行っている。 名古屋大学医学部附属病院で手術が施行された子宮体がん症例から、患者同意取得のもと検体採取を行った。①腫瘍浸潤リンパ球の回収、②腫瘍組織から病理組織標本の作製とDNAおよびRNAの回収、③便・腟分泌物・子宮内分泌物由来のDNA抽出を、症例毎に可能な項目について検体採取した。①および②に関しては腫瘍サイズによって子宮内腔側、筋層浸潤側と正常筋層の部位別に複数個所から検体採取した。 ①で得られた検体を用いて、FACS解析(12色の同時染色:live/dead、CD3、CD4、CD8、CCR7、CD45RA、Foxp3、PD-1、CTLA4、TIM3、LAG3、TIGIT)を行った。また、②の病理組織標本での免疫組織化学的検討(Foxp3およびCD8陽性細胞の腫瘍内局在別定量)はVS120システムを用いた画像解析にて行った。 子宮体部の腫瘍内局在別の比較では、CD8陽性T細胞が子宮内腔側まで浸潤している(CD8陽性T細胞の腫瘍浸潤が均一)である症例、CD8陽性T細胞が子宮内腔側まで浸潤していない(CD8陽性T細胞の浸潤が不均一)である症例、CD8陽性T細胞の浸潤が少ない症例の3群に大別された。少数例ではあるが、群別に腫瘍浸潤リンパ球のサイトカイン産生能をFACS解析した。 ③に関しては子宮内分泌物検体から抽出できたDNA量が細菌叢解析を行うには十分でない症例が多かったことから、採取や抽出方法の改善を要する状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究において進捗に影響を与える主要な因子として臨床検体の収集が挙げられる。検体数は対象症例の手術数や同意取得率にも左右される。研究代表者の異動に伴い、名古屋大学大学院医学系研究科と愛知県がんセンター(異動先)の共同研究として2020年度内に愛知県がんセンターの症例に関しても症例蓄積が行える体制を整えた。 研究協力いただいた症例から、腫瘍浸潤リンパ球および抹消血単核細胞の回収や、腫瘍組織からの病理組織標本作製とDNAおよびRNAの回収に関しては、コロナ禍の影響を最小限として大きな滞りなく遂行できている。一方、便・腟分泌物・子宮内分泌物由来のDNA抽出については、便・腟分泌物検体と比較して子宮内分泌物検体からのDNA抽出量が十分でない症例が多く収集に難渋している。今後子宮内分泌物・便・腟分泌物検体セットでの細菌叢解析を実施するためには、子宮内分泌物に関しては最適な採取や抽出方法の検討が必要な状況である。 子宮体がん症例18例(類内膜がん13例、明細胞がん4例、漿液性がん1例)の検体を用いて、名古屋大学医学部微生物・免疫学講座分子細胞免疫学/免疫細胞動態学教室内研究室の協力のもと、FACS解析(12色の同時染色:live/dead,CD3,CD4,CD8,CCR7,CD45RA,Foxp3,PD-1,CTLA4,TIM3,LAG3,TIGIT)を行えた(13例では腫瘍内局在別の評価も実施)。また、11例においては免疫組織化学的検討(Foxp3およびCD8陽性細胞の腫瘍内局在別定量)についてVS120システムを用いての画像解析にて行った。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き検体の収集およびそれらを用いた研究を名古屋大学大学院医学系研究科と愛知県がんセンターにて行っていく予定である。 収集済み検体に関しては、愛知県がんセンターおよび名古屋大学医学部の両施設にいる研究協力者のサポートのもと順次、腫瘍浸潤リンパ球および抹消血単核細胞を用いたFACSによる免疫担当細胞サブセット解析や腫瘍組織から回収したDNAおよびRNAを用いたがん関連遺伝子発現解析/遺伝子変異解析を進めていく。 同一腫瘍内の局在別腫瘍浸潤リンパ球のsingle-cell RNA seqやtrajectory解析を行い、腫瘍内におけるTregやCD8+Tcellの分化傾向を解析する。また、局在別でbulk RNA seqも行い、TregやCD8陽性T細胞lの腫瘍内変化に影響を与え得る因子を探索する。 20年度に成果を報告した子宮体がんの筋層浸潤先進部~傍腫瘍領域におけるリンパ組織様構造に関しては、さらに症例を追加して病理組織学的・免疫組織化学的解析を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の状況下において、病院間の行き来を要するような検体収集や研究交流が制限されたことによって関係経費は縮小しており、またWeb開催もしくはハイブリッド開催での学会が増加したことによる旅費抑制の影響もあり、当初見込んでいた使用額を下回る使用額となった。そのため、同額分に関しては、次年度の研究計画に伴う物品費を上積みする計画で繰り越し使用する予定とした。
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Research Products
(3 results)