2021 Fiscal Year Annual Research Report
加齢による妊孕性低下とそれを防ぐ分子メカニズムの解明
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19K09793
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
康 宇鎮 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 細胞医療研究部, 研究員 (10647978)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 菜摘子 明治大学, 農学部, 専任准教授 (00451691)
宮戸 健二 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 細胞医療研究部, 室長 (60324844)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | クエン酸合成酵素 / 加齢 / 妊孕性 / 非ミトコンドリア型 / eTCA回路 / カルシウムオシレーション / 男性不妊 |
Outline of Annual Research Achievements |
TCA回路は、クエン酸回路とも言われ、この回路に異常が起こると体内でのATPの酸性量が制御できなくなり、細胞機能の異常から、最終的には死に至る。TCA回路の律速酵素は『クエン酸合成酵素』であるが、この酵素に『非ミトコンドリア型』が存在することは知られていない。我々の研究から、非ミトコンドリア型クエン酸合成酵素(extra-mitochondrial citrate synthase, eCS)は精子による新たな卵活性化因子として働いていることが明らかになった。eCSは、精子だけでなく、神経細胞を含めた様々な細胞で発現しており、eCs欠損マウスの新生仔は、生存に必須な出生後の急速な成長が起こらなかった。このことからCSと同様にクエン酸回路の律速酵素であるeCSがミトコンドリア外で生体機能の調節に重要な役割を担っていることは明らかになった。一方、細胞質やミトコンドリア以外のオルガネラをつなぐ、もう1つのTCA回路(ミトコンドリア外TCA回路、以下eTCA回路)の存在については不明である。そこで本年度は、eTCA回路の存在を証明するため、ミトコンドリア外でeCSの存在を確認し、ミトコンドリア外でのATP産生量を調べた。まずeCS-GFP融合タンパク質の発現ベクターをヒト胎児腎細胞(HEK293細胞)に導入し、eCSの細胞内局在を調べたところ、CSは主にミトコンドリアに存在しているが、eCSはCSとは異なる細胞質に広く局在していることがわかった。さらに、eCSを強制発現させた細胞からミトコンドリアとミトコンドリアを含まない画分を分離し、ATP産生を比較したところ、ミトコンドリアを含まない画分でもeCSを強制発現させることにより、3倍ほどATP産生量の増加がみられた。したがって、eCSはミトコンドリアで働くCSとは異なる経路で細胞内エネルギー産生に関わっていることが推測された。
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