2021 Fiscal Year Annual Research Report
網膜におけるP2X受容体の視覚情報伝達修飾機構の解明
Project/Area Number |
19K09939
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
石井 俊行 日本医科大学, 医学部, 准教授 (10643140)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | P2X受容体 / ATP / 網膜 / 網膜神経節細胞 / アマクリン細胞 / 視覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、P2X受容体の網膜における視覚情報処理に対する役割を解明することを目的として実施された。P2X受容体は、P2X1からP2X7までの7つのサブタイプが知られており、網膜内にすべてのサブタイプの発現が認められている。しかしながら、いずれのP2X受容体サブタイプが網膜内のどの部位で視覚情報の伝達に関与しているのかは不明である。これまでに申請者が行った予備的検討により、P2X3受容体が視覚情報の修飾に関与していることが推定されていた。 そのため、網膜電図を用いてP2X3受容体の網膜機能への影響を検討したところ、OP波の減弱が認められた。網膜におけるP2X3受容体を発現している細胞の位置を同定するため、in situ hybridizationを実施ししたところ、神経節細胞層でmRNAの発現が認められた。また、免疫組織化学においては、内網状層及び神経節細胞層にて免疫反応がみられ、網膜神経節細胞およびアマクリン細胞のマーカーとの共局在が認められた。さらに、網膜神経節細胞について電気生理学的に検討したところ、P2X3受容体アゴニストの応答がON型網膜神経節細胞では認められたが、OFF型網膜神経節細胞ではみられなかった。 次に、網膜神経節細胞の活動電位の発生についてP2X3受容体の影響を検討したところ、P2X3受容体アンタゴニストの投与により、光刺激に伴う応答はON型及びOFF型網膜神経節細胞ともに減少したが、非光刺激条件下においてはON型網膜神経節細胞で上昇し、OFF型網膜神経節細胞では減少した。 以上の結果から、P2X3受容体はアマクリン細胞及びON型網膜神経節細胞に発現しており、網膜内の視覚情報処理としてSN比を適切なレベルに調節し、脳への情報伝達に影響を与えていることが示唆された。 これらの結果の一部は既に学会にて報告済みであり、今後論文などにより追加発表をする予定である。
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