2022 Fiscal Year Annual Research Report
網羅的発現解析が明らかにした眼特異的転写産物は角膜再生の新規キープレーヤーか?
Project/Area Number |
19K09993
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
木下 晃 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 准教授 (60372778)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小路 武彦 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (30170179)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | Gillespie syndrome / ITPR1 / 次世代型シーケンサー / RNA-seq / 新規転写開始点 / 神経堤細胞 / アクチン繊維 / YAP |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代型シーケンサーを用いて無虹彩と小脳性運動失調を特徴とするGillespie syndrome (GLSP)患者5名にinositol 1,4,5-triphosphate receptor type I (ITPR1) 遺伝子の57-59番目のエキソンに変異ホットスポットを同定した。ITPR1は脊髄小脳失調症の責任遺伝子として知られているが、「なぜGLSP患者だけで無虹彩が発症するのか?」は不明であった。 Itpr1のC-末端にV5タグを付加したマウスを作製し、Itpr1の局在を視覚化すると、神経堤細胞 (NCC) に由来する虹彩や角膜内皮・ストロマに局在が確認された。報告者はItpr1の3’-末端側にNCC特異的な転写開始点 (TSS) が存在すると予想した。RNA-seqによりエキソン57の直前に眼特異的新規TSSを同定し、ここから218アミノ酸残基の眼特異的アイソフォームが発現していることを明らかにした。 ゲノム編集で作製したエキソン62に7 bpの欠失をもつマウスは運動失調に加え、無虹彩を再現した。組織学的観察からItpr1欠失によるNCC由来組織の分化異常が、無虹彩の原因であることが判明した。 最後に「なぜItpr1の変異が分化異常を引き起こすか?」を明らかにするために、ドキシサイクリン依存的に野生型もしくは変異型の218アミノ酸残基のアイソフォームを発現する細胞株を樹立した。野生型はアクチン繊維に結合し、その方向と張力を調節して、転写共役因子Yapの核内移行を促進した、一方変異型ではその機能が弱かった。GLSPにおける無虹彩の発症機序は、眼特異的Itpr1アイソフォームによるアクチン繊維を介した転写調節異常が原因と結論づけた。 空間トランスクリプトームによる遺伝子発現の定量化に基づき、眼の発生を明らかにすることが今後の目標である。
|
Research Products
(4 results)