2020 Fiscal Year Research-status Report
多形腺癌(PAC)における新規遺伝子異常の臨床病理学的解析と分子標的治療法の確立
Project/Area Number |
19K10081
|
Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
宮部 悟 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (40534582)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石橋 謙一郎 愛知学院大学, 歯学部, 歯学部研究員 (80714609)
長尾 徹 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (90261007)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 唾液腺癌 / 分子病理学的解析 / 多型腺癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
「研究の目的」多型腺癌(以下PAC)は全唾液腺癌の26%を占める。再発を繰り返し予後不良となるが、heterogeneousな悪性腫瘍と考えられる稀少がんである。早期診断・治療が喫緊の課題であるが、腫瘍増殖に関わる遺伝子異常は十分に明らかにされていない。近年PACの発生や進展に関わる遺伝子変異の一つとして報告されたPRKDファミリーの再構成と体細胞変異(p. Glu710Asp. Exon 15)が特徴的な遺伝子異常であることから、PACの遺伝子異常を用いた悪性度評価基準の構築と,臨床応用可能な本遺伝子再構成や体細胞変異の臨床病理学的特徴を明らかにすること本研究の目的とする。「研究実施計画」共同研究施設において臨床情報および予後データのあるPACのFFPE未染標本から解析を行うこととしており、症例提供を受ける各施設でのIRB承認後、症例と情報の提供を受けて研究を行っている。遺伝子異常検索では遺伝子異常の検出法としてはFISH法を主に用いて,①PRKD1遺伝子再構成の有無,②PRKD2遺伝子再構成の有無,③PRKD3遺伝子再構成の有無,④PRKD1遺伝子変異(p. Glu710Asp. Exon 15)の有無の検討を行っている。計画では50例のPAC収集を計画したが、共同研究施設でのIRBが新型コロナ禍を一因として承認を得られにくい状況にあり、現在まで約30例ほどの症例収集と実験が終了しているところである。これらのtentativeな解析結果は第31回日本臨床口腔病理学会総会・学術集会におけるシンポジウム「唾液腺腫瘍診断に関する分子病理学的知見 」の中ですでに報告した。今後は統計解析を多変量重回帰分析を用いて行い、出来るだけ早期の英論文化を目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
稀少癌PAC(多型腺癌)を多施設共同研究油で多変量解析をはじめとした統計学的に解析意義のある50例を目標に症例収集し、これまで報告された遺伝子異常と臨床的indexや組織型との関連を検討することが本研究の趣旨である。症例の収集はほぼ予定通り完了したものの、症例提供施設でのIRB(倫理承認)が遅れており、本研究のボトルネックとなっている。当初からの研究計画通り、「研究開始からの2年間」でIRB承認の得られない症例を除外群として扱い、承認を得られた症例のみを解析症例として扱うことで、結果をまとめる予定である。2019年4月~2021年4月末日までにPAC約30例を各施設で倫理承認を得ることが出来た。これらの症例の遺伝子異常検索はFISH法、RT^PCR法のいずれの方法を用いたものもすでに概ね(80%ほど)終了しており、順次臨床情報との比較検討を行っている。 FISH解析に用いた一部のprobeがカスタム プローブがあるため、温度変化に敏感であり、既製品probeと比較して不安定であり、しばしばシグナルが検出出来ない事例が観察されている。このため、カスタムプローブのいくつかの再作成を余儀なくされた。さらにはカスタムプローブを発注する米国の各企業が新型コロナ禍の渦中にあり、プローブ到着が遅れるアクシデントも発生した。概ね3ヶ月ほどのプローブ到着の遅れがあったが、現在すでに80%ほどの解析は終了出来ており、研究全体としては予定より約3ヶ月遅れの進捗状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
実験は先に示した通り、以下に示す➀~③の理由で3ヶ月ほど遅延した状況である。➀多施設共同研究のため各施設のIRB承認が遅れていること、②独自に作成したカスタムプローブを用いた実験のため、プローブの不安定性の存在により、プローブ再作成を行った。③カスタムプローブ製作もとの米国企業が新型コロナ禍の渦中にあり、プローブの到着が約3ヶ月ほど遅延した。 しかし研究分担者の尽力もあり、幸い実験そのものは概ね80%ほど終了した状態にある。今後は分担研究者による実験結果の最終的なまとめを待ちつつ、臨床情報と各種遺伝子異常との統計学的解析を早急に行う。唾液腺PACの遺伝子異常の臨床病理学的意義を明らかにする上で非常に重要な論文となることを自覚しつつ、出来るだけ早い時期での論文化を急ぐ所存である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナ感染症蔓延に伴う影響で研究の一部に遅延が生じたことから研究結果をまとめ、論文作成する段で次年度使用額が生じた。 現在、本研究の最終段階に差し掛かっており、順次実験結果と臨床情報の比較検討を行っている。日本全国から収集された稀少癌PAC症例を用いた解析結果は今後の本疾患の研究を牽引するといっても過言でないほどに重要なものになると認識しており、そのため英文誌は多くの唾液腺研究者に理解の得られる内容とするべく、英文校正を充分検討する必要があると考える。具体的には、英文の精度を高めるべく、英文ネイティブのチェックを2つ業者に依頼する。これらの論文構成費に充当する予定である。
|
Research Products
(5 results)