Exploratory research of innovative pulp capping materials both with promoting healing of dental pulp and adhesive property to hard tissue

2020 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 19K10123
• Research Institution: Hokkaido University
• Principal Investigator: 佐野 英彦 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (90205998)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 松本 真理子 北海道大学, 大学病院, 助教 (30733969) ; 樋田 京子 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (40399952)
• Project Period (FY): 2019-04-01 – 2022-03-31
• Keywords: 歯髄 / 接着 / 生体材料 / 生体適合性 / MTA

Outline of Annual Research Achievements

歯を削る必要のある治療の際に，時として歯の神経（歯髄）まで至る切削が行われることがある．この時，条件が許されれば歯髄を保存していく治療が可能になる．そのことで，歯髄を除去する際の歯に対する大きなダメージを与えることなく，歯の寿命を延ばすことが期待できる．米国等の先進国では極めて高価な神経の治療を回避することが可能となる．いまのところ，このような時に使える材料や手技に限界があり，新たな材料の出現が待たれている．本研究では，露出された歯の神経の部分を完全にシールし，傷ついた神経の治癒を助ける材料の開発を検討していくことを目的としている．
本研究を遂行していくにあたり，臨床に有用な新規直接覆髄材の開発に際して，①直接覆髄材に用いる適切なキャリアとしてリン酸化プルランを選択し， MTAとキャリアに対する生体反応の検討，② CPN等ナノ物質を用いた場合に，生体の治癒促進が可能であるかどうかの検討を加えた．
硬組織接着性と歯髄の治癒促進を併せ持つ直接覆髄材は，今のところ製品として世界にほとんど見られない．加えて，直接覆髄ための臨床技法はテクニックセンシティブであり臨床成績も期待できないことが多々ある．また，臨床成績が期待できるMTAに関してもその治癒機転に関する詳細なメカニズムは明らかでない．従って本研究では，臨床に直接有効な開発に関わるばかりではなく，偶発的露髄の治癒機転に関する生物学的な新たな知見も期待していくことにもある．また，リン酸化プルランとMTAを組み合わせた直接覆髄材の臨床応用に向けた，可能性の検討も可能となっている．

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

2020年に発生した，新型コロナウイルスのパンデミックは研究の遂行に大きな障害になった．サルを用いた研究に関しては，切片の評価をすることで，リン酸化プルランとMTAに関わる歯髄の評価を検討することは可能であったが，リン酸化プルラン単独での歯髄への影響，MTA単独での歯髄への影響，およびリン酸化プルランとMTAを組み合わせた際の歯髄への影響に関して，ラットで検討する予定であった．この検討に関しては，大学院生のローニーとともに新たな検討を予定していたが，本年度中にローニーが私事で母国へ一時帰国した際に，感染対策のための母国にてロックダウンが行われ，さらに航空機の手配の問題や入国に関わる障害が発生し，日本に帰国することが大幅に遅れることとなった．そのため，ラットを用いた検討の多くは，次年度に持ち越すこととなった．

Strategy for Future Research Activity

サルの歯髄を用いた知見をもとに，ラット歯髄を用い，リン酸化プルランとMTA直接覆髄材による歯髄反応を光学顕微鏡下にて検討している．歯髄に対するキャリアーの有無の影響，MTAの有無の影響，および4META-MMA/TBBレジン単独の場合などの検討が行えている．HE染色で特徴的な像を捉えた後に，新たなターゲットを見据えた免疫染色を行い，興味深い知見が得られると考えられる．
以上の知見をもとに，今後はCPN（Colloidal Platinum Nanoparticles）等ナノ物質を用いた場合に，歯髄の治癒促進が可能であるかどうかの検討を行う．直接覆髄に際してCPN等を検討に加えるのは，これらが4META-MMA/TBBレジン等の硬組織への封鎖性の向上に役立つことがすでに実験から得られているからである．
また，臨床を想定した場合，象牙質に深い窩洞形成を行った場合や，ブリッジの支台歯形成を行った場合など，露髄あるいは不顕性露髄を引き起こすことが起こり得る．その際，CPNを用いて接着性を向上させる試みも歯髄保護という観点から，不合理性はないと考えられる．そのため，CPN等ナノ物質を単独で用いた場合あるいは新規直接覆髄材と併せて用いた場合の，ラット歯髄反応を上記実験と同様なクライテリアにより検討することは新たな臨床に有効な知見が得られる可能性がある．

Causes of Carryover

2020年に発生した，新型コロナウイルスのパンデミックは研究の遂行に大きな障害になった．リン酸化プルラン単独での歯髄への影響，MTA単独での歯髄への影響，およびリン酸化プルランとMTAを組み合わせた際の歯髄への影響に関して，ラットで検討する予定であった．この検討に関しては，大学院生のローニーとともに新たな検討を予定していたが，本年度中にローニーが私事で母国へ一時帰国した際に，感染対策のための母国にてロックダウンが行われ，さらに航空機の手配の問題や入国に関わる障害が発生し，日本に帰国することが大幅に遅れることとなった．そのため，ラットを用いた検討の多くは，次年度に持ち越すこととなった．