2019 Fiscal Year Research-status Report
Processing of surface modification for reinforcement of dentin by using active calcium phosphates.
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19K10144
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石幡 浩志 東北大学, 歯学研究科, 助教 (40261523)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 秀明 東京都市大学, 理工学部, 准教授 (00196263)
兼平 正史 東北大学, 歯学研究科, 助教 (30177539)
山田 聡 東北大学, 歯学研究科, 教授 (40359849)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 象牙質 / 象牙細管 / 知覚過敏症 / う蝕 / 破折 / 摩耗 / 象牙質改質 / 寒天 |
Outline of Annual Research Achievements |
象牙質改質の効果を評価する手法である象牙質透過性の定量的計測法の開発を行った。象牙細管が直径1~2μmと極めて細いことから,細管構造が規則的,安定的に維持されているかについて,細管内に液体を注入した際の透過性を計測する事で評価出来るものと推測した上,液透過性を計測する手法を提案,象牙細管内の経時的液移動量の計測を行った. 〇象牙質における経時的液透過量計測法 東北大学大学院歯学研究科研究倫理委員会の承認下で実施された.ヒト健全抜去智歯の歯冠部における髄角から咬合面に1.3mmの厚みでディスク状に試験片をスライスカットした.スライス面に0.5 M EDTA(pH 7.4)溶液を2分間塗布しスメア層を除去した.これらのスライス両面に外径φ10mm,内径φ5mmで,2ヶのカップで構成されるSplit ChamberをOリングを介して挟み固定した.片方のChamberに精製水を注入,試験片を通過して対測のChamberに達した液量をフローセンサー(LG16-0150d: センシリオン)にて経時的に計測した. 〇象牙細管の液透過量の経時的定量 各注入圧における液透過量は3kPaで約5500nl/min,2kPaで約4300 nl/min,1kPaで約2500 nl/minであった.象牙質を透過する液の流量は,注入圧が一定の条件下では安定しており,定量的再現性が認められた.以上のことから,象牙質液透過性には恒常性があると考えられ,歯の光学的特性に影響を与える象牙質内部の細管構造は,一過性の物理的刺激に対しては相当に堅牢であると考えられる.これを逆説的に見れば,歯の光学的特性が変化した際は象牙質内部には何らかの不可逆的構造変化が生じている可能性が示唆される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究はヒトの歯の象牙質に特有の構造である精緻な象牙細管に対して,オーガニック素材の寒天を媒体として,Ca成分を導入し歯質改質による耐酸性,耐食性および破折に対する抵抗性を強化することである.本年度は上記の象牙質改質効果についての評価を正確に行うための計測プラットフォームを整備し,その信頼性を確認する物性検証システムの構築を着実に行い,2年目以降の本格的開発フェーズを着実に行うための基盤を整えた.このような物的成果に加え,本研究の核心的開発テーマであるオーガニック素材による歯質強化について,噴射媒体の寒天粒子に含有できる天然素材してPOs-Ca((株)江崎グリコ)をふさわしい素材としてノミネートし,その導入の実現をめざしている.昨今のコロナ感染症によるパンデミックが露呈した高齢社会の脆弱性については,特に感染症に対する抵抗力に最も影響を及ぼすフレイルについて,その予防に摂食機能の温存が不可欠であることがクローズアップされた.本研究は基礎研究にとどまらず,喫緊の課題である高齢者における摂食機能の維持強化において不可欠な歯の保存に対してダイレクトに貢献する社会実装を念頭としたテーマであり,期待される開発成果を得て,人々すべからく咬合寿命を延伸する事を数年で達成できる見込みである.
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Strategy for Future Research Activity |
い次年度は,共同研究者の東京都市大学工学部機械工学科・佐藤秀明准教授が担当する,寒天噴射システムの基本仕様を構築し,噴射性能およびそれによる歯面清掃効果について検証する.寒天に含有するカルシウム成分については,歯質に対する吸収性に着目し,寒天粒子に含浸して噴射した際の象牙細管中に残留できるカルシウム量を計測し,最も有効なCa成分含有材量を見いだす.開発した象牙質透過性計測システムによって,寒天噴射後における象牙細管の液透過性を定量的に計測することで,寒天粒子による象牙細管封鎖効果を検証する.言うまでも無く,噴射媒体による象牙細管の封鎖は象牙質へのCa成分導入を増強すると共に,象牙質知覚過敏症の治療効果をもたらす.以上の評価を通じて,噴射清掃による象牙質清掃,改質効果の実用性を評価し,臨床向けプロトタイプ試験機の仕様策定に向けての基礎資料とする.
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Causes of Carryover |
計画は極めて順調に推移した一方で、開発アイテムに予想以上の発展性が期待されることが判明したため、その有効性を最大限に発揮するためのシステム開発に向け再考を行い、来年度の成果をより高める計画策定を行った。特に来年度は寒天に含有する象牙質改質成分材料について極めて効果的な候補素材に対応した開発を行う予定である。
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