2022 Fiscal Year Annual Research Report
進行性神経変性疾患におけるQOL向上型口腔機能評価法の開発
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19K10233
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
島田 明子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (00452871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小見山 道 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (60339223)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 咀嚼運動 / 嚥下機能 / 進行性神経変性疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
2050年問題を抱える超高齢社会の日本では、加齢に伴い有病率が上昇し摂食嚥下障害を伴う進行性神経変性疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)やパーキンソン病(PD)の患者数が急増しており、『口から食べる』機能の維持・管理は歯科医療従事者にとって重要な責務である。ALSやPDにおける嚥下障害の重症化に伴い、患者は栄養摂取のため胃瘻設置を余儀なくされるが、胃瘻設置時期について現在標準化された臨床基準がない。本研究により胃瘻設置時期決定のための標準化された摂食嚥下機能評価法が確立できれば、胃瘻設置時期決定の最適化の一助となり、終局的には、尚早な設置による不要なQOL低下や、設置の遅延による低栄養や誤嚥性肺炎のリスクが回避でき、進行性神経変性疾患患者の『口から食べる』機能の維持・管理が可能になると思考する。 本研究では、まず、健常者において異なる咀嚼条件下で咀嚼から嚥下までの筋活動を観察し、嚥下機能に影響を及ぼす咀嚼関連因子の検出を行った。性状の異なる食品を咀嚼嚥下させ、咀嚼筋活動の分析を実施した。その結果、健常者において、本実験条件下での咀嚼時間短縮による嚥下機能への影響は見られなかったが、咀嚼パターンの調整により円滑な嚥下運動が実行された可能性が示唆された。また、食品性状と嚥下関連筋活動の関連性も示された。次に、健常者における食塊認知に重要な舌の体性感覚の変化が咀嚼運動に及ぼす影響の検討を行った。性状の異なる食品を舌の表面麻酔あり・なしの条件で咀嚼嚥下させ、舌の感覚機能の変化が咀嚼嚥下運動にもたらす影響を検討した。その結果、健常者において、本実験条件下で表面麻酔による舌の温熱刺激および機械的刺激に対する感覚鈍麻は確認されたものの、咀嚼機能は影響されないことが示唆された。 本研究により、健常者によって食品性状および感覚入力の違いによる一連の咀嚼嚥下運動制御の様相が明らかとなった。
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