2020 Fiscal Year Research-status Report
医療通訳者介在の診療場面における通訳の正確性と患者アウトカムとの関連
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19K10513
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
濱井 妙子 静岡県立大学, 看護学部, 講師 (50295565)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 直子 順天堂大学, 国際教養学部, 准教授 (90730367)
西川 浩昭 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 教授 (30208160)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 医療通訳 / リスクコミュニケーション / 医療コミュニケーション / 通訳の正確性 / 患者アウトカム / 医療安全 / 外国人医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、質問紙調査による対象者の背景、患者満足度、患者理解度に関する2020年調査データを入力・点検し、院内通訳者介在の診療48件、患者同伴通訳者介在の診療は2019年調査と合わせて13件の有効データを分析した。結果は以下のとおりである。 院内通訳者介在の患者の満足度で「非常に満足している」は、通訳者の通訳が95.8%、診療内容が91.7%、診療時間が95.8%、医師との対話が95.8%、総合満足度が85.4%であった。また、患者の継続受診の意思は「必ず利用する」が95.8%、友人への受診勧奨は「必ず勧める」が89.6%であった。患者と医師または通訳者間の満足度の一致率は0.9以上であった。 他方、患者同伴通訳者介在の患者の満足度で「非常に満足している」は、通訳者の通訳、診療時間、医師との対話、総合満足度が100.0%で、診療内容が92.1%であった。医師の満足度で「非常に満足している」は、通訳者の通訳が23.1%、診療内容が7.7%、診療時間が30.8%、医師との対話が15.4%、総合満足度が56.3%であった一方、「非常に不満である」が通訳者の通訳が15.4%、診療内容が7.7%、医師との対話が7.7%と、患者同伴通訳者の通訳では対話が難しい症例があったと考えられる。医師と患者または通訳者との満足度の一致率は、患者と通訳者間の一致率よりやや低く、医師と患者または通訳者間に満足度の違いがあった。 医師の説明に対する理解度について、院内通訳者介在の患者は医師からの説明が「よくわかった」は87.5%、疑問や意見を医師に「十分に伝えられた」は83.3%であった。他方、患者同伴通訳者介在の患者は医師からの説明が「よくわかった」は69.2%に対し、同伴通訳者は84.6%、医師は30.8%と認識の違いがあった。患者が疑問や意見を医師に「十分に伝えられた」は69.2%であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は音声データのテープ起こしをして逐語録を作成し、ポルトガル語の発話を日本語に翻訳し、その日本語翻訳をポルトガル語に翻訳するバックトランスレーション、翻訳内容の確認作業を経て分析データセットを作成する予定であった。しかし今回はコロナ禍の影響もあり、テープ起こしならびに翻訳、バックトランスレーション作業に想定以上の時間がかかった。そのため、翻訳内容の確認作業が残っており、分析データセットの作成がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の計画は、音声データの分析を行い、研究成果を報告する。音声データは、逐語録の内容を確認して分析データセットを作成し、通訳の正確性分析ならびにインシデントにつながる可能性がある通訳変更を検討する。得られたデータの20 %を無作為抽出して、複数のコーダー間評価の信頼性を検討する。その上で、平成28年度のデータと比較分析する。次に、患者・医療通訳者・医師の3者間コミュニケーションの相互作用についてRoter Interaction Process Analysis System (RIAS)を用いて分析する。得られたデータの20 %を無作為抽出して、複数のコーダー間評価の信頼性を検討する。 これらの研究成果をまとめて、対象医療機関にフィードバックし、関連の学術集会で報告し、論文にまとめて学術誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は、音声データのテープ起こし、逐語録のポルトガル語から日本語翻訳、バックトランスレーションの日本語からポルトガル語翻訳のための料金を、業界団体が提示する医学・薬学分野の翻訳料金を参考に見直したため翻訳料金が不足することが明らかになった。そのため、前倒し請求を申請し承認された。前倒し申請時には支払い金額が不足しないように見積もり申請したため残額が生じた。残額は、次年度の配分額にあわせて、研究に必要な経費として有効に使用していく。
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