2019 Fiscal Year Research-status Report
脂肪細胞形質転換に起因した非アルコール性脂肪性肝炎発症と予防の分子メカニズム解明
Project/Area Number |
19K10583
|
Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
那須 民江 中部大学, 生命健康科学部, 特任教授 (10020794)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北森 一哉 金城学院大学, 生活環境学部, 教授 (80387597)
内藤 久雄 藤田医科大学, 医学部, 講師 (90547556)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 高脂肪‐高コレステロール食 / NASH / 脂肪細胞 / オイルレッド染色 / ナイルブルー染色 / 小脂肪滴 / 大脂肪滴 / 脂肪細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
SHR雄ラット7週齢を24匹購入して、コントロール群、高脂肪・高コレステロール(HFC)食群、コントロール+降圧剤群(ヒドララジン)、HFC+降圧剤群の4群とした。降圧剤は8週目から投与し、HFC食は10週目から投与した。HFC食投与開始から2週間目と8週間目に動物を解剖し、血液と肝臓を採取し、血清は使用時まで-80℃で保存した。肝臓は一部4%パラホルムアルデヒド固定し、病理標本の作成に使用した。残りは遺伝子解析時まで-80℃で保存した。病理検索用にH&E、EVG、オイルレッドおよびナイルブルー染色をした。すでに報告したように、HFC2週目では肝臓に小脂肪滴が、8週目では大脂肪滴やバルーニングが観察された。しかしこれらの所見は降圧剤によって明らかに軽減した。ナイルブルー染色において、2週目ではどの群もピンク色の染色は少なく、HFC群とHFC+降圧剤群の明確な差は観察されなかった。8週目のHFC群では薄いピンクの大きな脂肪滴として染色されていたが、HFC+降圧剤群はピンクに染色された脂肪滴は少なかった。この染色は極性の低い中性脂肪を赤色に染色するので、降圧剤が極性の低い中性脂肪を減少させたのかもしれない。一方オイルレッド染色法で比較すると、HFC2週間投与群では鮮紅色の小脂肪滴が観察されたが、降圧剤はこの小脂肪滴を減少させた。一方、8週目のHFC群では薄い赤色の比較的大きな脂肪滴として染色されたが、HFC+降圧剤群は鮮紅色の比較的小さな脂肪滴として染色された。オイルレッドは極性の低い中性脂肪やコレステロールを染色するため、降圧剤は極性の低い中性脂肪やコレステロールを抑制したのかもしれない。このように降圧剤ヒドララジンは脂肪細胞の形質転換に関わり、HFCによるNASHを軽減させる可能性がある。今後は脂肪細胞の形質転換に関わるPPARαやPPARγの発現との関与を解析し、NASH発症に関わる脂肪細胞の分化の重要性を解析する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物実験が終了し、今年度の目標の「脂肪細胞の分化を病理的に明らかにする」ことは、脂肪染色を2種行う事によりほぼ達成した。最初はコレステロール染色を行う予定であったが、適切な染色方法がなかったため、2種の脂肪染色を試みた。中性脂肪とコレステロールの差異は明らかにできなかったが、生化学的なそれぞれの測定により補完できると考えている。従っておおむね順調に進捗していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
用いた実験動物にHF食を与え、2週目には小脂肪滴、8週目には大脂肪滴、バルーニングおよび線維症が観察された。即ち脂肪細胞の形質転換が観察された。従って初期の計画通り、脂肪細胞の形質転換の分子メカニズムを解析する。即ち脂肪細胞の分化や肥大化にはPPARγ1/2や、その上流のkruppel-like factorsやcAMP response element-binding proteinなどが関与し、またインスリン抵抗性も関与しているので解析する。さらに降圧剤が、これらの遺伝子にどのような影響を与えるか検討する。さらに降圧剤による脂肪細胞の改善に関してはangiopoietine-related growth facterが関与していると考えられるので、この遺伝子への作用について解析する。
|
Causes of Carryover |
初年度に動物実験と肝臓の形態的変化を、特に脂肪細胞の特殊染色を行う事により脂肪細胞の形質転換を観察できた。脂肪細胞の染色が安い業者に依頼できたので、消耗品費が少し残った。次年度は分子生物学的変化を観察するための費用を計上したが、この試薬やキット類の中には値上げされた商品もあるので、初年度のあまりを令和2年度の消耗品費に充てる。
|