2021 Fiscal Year Research-status Report
カンピロバクター属菌フードチェーン下流における汚染モデルの構築とリスク管理最適化
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19K10587
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
伊藤 智 神戸学院大学, 栄養学部, 助教 (30594428)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸本 満 名古屋学芸大学, 管理栄養学部, 教授 (20454449)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | カンピロバクター属菌 / ダイレクトPCR / リアルタイムPCR / 汚染伝播 / サンプリング法 / 加熱調理 |
Outline of Annual Research Achievements |
カンピロバクター食中毒の主な原因には、加熱不足による生菌の生残が挙げられる。加熱調理は熱源や伝熱方法、食材の厚みなど条件が複雑なため、加熱が十分かどうかの判断は調理者の経験に基づいて判断される。原因食品として多く報告されている焼き鳥は、厚みのある肉を遠火で加熱する調理法であるため、加熱不十分となりやすい。これは調理者がどの程度加熱すれば、細菌が死滅するのかを把握していないことが原因であると考えられる。 2021年度はこれまでに開発したカンピロバクター属菌の検出感度が高いラップ法を用いて、3種の加熱方式で調理した鶏肉中のカンピロバクター属菌の生残数を定量測定した。加熱条件が殺菌及び生残に及ぼす影響を定量的に明らかにすることを目的とした。 加熱調理モデル実験は、カンピロバクター・ジェジュニで植菌した鶏肉(ササミ)を①煮汁の対流熱による湿式加熱[湯せん方式]で1~5分、②直火焼きによる乾式加熱[グリル方式]で7~11分、③間接焼きによる乾式加熱[フライパン方式]で3~7分行い、加熱後、中心温度を測定、カンピロバクター・ジェジュニの生残数を定量測定した。 加熱調理後、全ての検体から生残が検出されなくなったのは①湯せん方式で4分、②グリル方式で13分、③フライパン方式で8分だった。この加熱時間よりも短い加熱時間のサンプルからも生残が未検出(0logCFU)だった試料があった。これは鶏肉(ササミ)の厚みの差から加熱ムラが生じ、殺菌に影響したと考えた。加熱完了の目安となる中心部分の色について、赤みが消失したサンプルからも生残が確認された。加熱時間が長いと赤みが消失する場合があり、中心部分の色は加熱殺菌の目安にはならないことが分かった。カンピロバクター属菌の確実な加熱調理殺菌のためには、加熱方式ごとに「加熱時間」「中心温度」の管理が必要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リアルタイムPCR法を用いたCampylobacter属菌定量測定法により市販鶏肉の汚染実態調査を実施した。今後、同法を用いて調理段階の汚染伝播モデル実験を実施し、調理過程ごとの汚染伝播率を測定することができる。本法を用いることで、従来法である培養法より短時間に定量的にデータを得ることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
カンピロバクター食中毒は、生又は加熱不十分な鶏肉の喫食、調理中の取り扱い不備による二次・三次汚染などが原因であり、調理・消費段階の伝播汚染実態を把握したうえで対策・対応を講じる必要がある。しかし、カンピロバクター属菌はその特性(微好気性、VBNCなど)から、従来の培養法では正確な実態調査は難しく、特に調理環境で汚染実態調査や伝播経路を探索する場合は低菌量を定量する必要があるため実態を明らかにすることが困難だった。 本研究の最終年度となる2022年度は、カンピロバクター属菌の調理環境における伝播汚染実態を明らかにするため、開発したDirect-qPCR法で汚染伝播モデル実験行い、三次汚染伝播率を測定する。加えて、汚染伝播したカンピロバクター属菌を効果的に殺菌・除菌する方法を比較・検証する。これらの結果をもとに考案したカンピロバクター食中毒予防のための家庭でできる具体的な方法を取りまとめる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、発表を計画していた学会が中止またはウェブ開催となり、出張旅費を使用しなかったため。 汚染実態調査のための試験法を改良するために、データ分析に注力したため、試薬などの消耗品費を予定より使用しなかったため。改良試験法が完成したため、次年度は本年度の消耗品費を使用し、汚染実態調査を行う計画をしている。
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Research Products
(1 results)