2019 Fiscal Year Research-status Report
イスラム教徒の視点に根ざした多文化看護ケアの教材と看護実践能力指標の開発
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19K10841
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Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
戸田 登美子 甲南女子大学, 看護リハビリテーション学部, 講師 (90512658)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イスラム教徒 / 外国人患者 / 文献検討 / 尺度開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、日本では訪日外国人旅行者の増加、なかでもイスラム圏からの旅行者の割合が増加し、医療機関においてもイスラム教徒の患者に適切な看護を提供することが求められている。しかし、国内ではイスラム教徒の患者に関する看護研究は殆ど見当たらない。また、文化や宗教に配慮した看護実践能力を獲得するには、知識や技術に加え、患者の要望を敏感に察知する感受性が必要である。よって、本研究では、イスラム教患者に対応する看護師の看護実践能力指標及び、看護ケア教材を開発することを目的とする。 初めにイスラム教及び看護に関する文献レビューを行い、イスラム教患者の看護に求められる文化的感受性(cultural sensitivity)の概念及びイスラム教における生死や健康、疾患の概念を明らかにした。また、イスラム教徒の医療職、イスラム教患者に対応した経験のある医療職、医療通訳、及び医療コーディネーターをキーインフォーマントとしたインタビューを行い、内容分析を行った。次に、文献レビュー及びキーインフォーマントインタビューの分析結果を統合し、看護実践能力指標の原案を作成した。 看護実践能力指標原案については、国際保健・医療の専門家、イスラム教の医療職、イスラム教指導者らに内容の確認を依頼し、原案の修正を行なった。また、看護職を対象にプレテストを実施し、文言や表現を修正した。 今後、調査に協力を得られた医療機関に勤務する看護師を対象に本調査を行い、指標の信頼性及び妥当性を検証する。また、文献レビューやインタビュー結果をもとに、医療機関や教育機関において活用できるケア教材を開発するとともに、それらを用いたワークショップを開催する予定である。なお、これらの教材及び看護実践能力指標はウェブサイトで広く公開し、看護職のイスラム教の理解、ひいては看護の質向上をはかる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では、2019年度に看護ケア教材を開発、2020年度に看護実践能力指標を開発する予定だったが、はじめに指標を定め、それに基づき教材を開発した方が適切と思われたため、2019年度は指標開発を行った。 まず、イスラム教、及び看護に関する包括的な文献レビューを行い、イスラム教における生死、疾病と健康、及び文化的感受性(cultural sensitivity)に関する概念分析を行った。その結果、1.イスラム教の教義やイスラム教徒として推奨される振る舞いや慣習、2.イスラム教における生死、健康、病等に関する概念、3.イスラム教患者に対する全人的なケアやイスラム教の慣習や価値観が尊重された看護の3項目を看護実践能力指標に含める内容と判断した。 次に、イスラム教徒の医療職、イスラム教徒の患者の対応経験を有する医師、看護師及び助産師、医療通訳、医療コーディネーターの計7名をキーインフォーマントとしたインタビュー調査を行った。内容分析により292コードが抽出され、7つのカテゴリー、44のサブカテゴリーが導きだされた。 インタビュー及び文献レビューの結果を統合して、看護実践能力指標の原案を作成し、国際保健及び看護、イスラム教の専門家ら7名に内容の検討を依頼し、表面妥当性を検証した。また、看護職11名を対象にプレテストを実施した。これらの結果、イスラム教の教義により厳密な表記への変更、文言の説明の追加等を行い、知識、cultural sensitivity及び実践の3セクション、計55の設問で構成される指標を開発した。 現在、看護実践能力指標の本調査を実施中である。本調査は、調査に協力を得られた医療機関に勤務する看護師を対象に郵送調査にて行い、再調査は本調査より2週間から1ヵ月後に実施し、指標の信頼性及び妥当性を検証する。
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Strategy for Future Research Activity |
計画では、2019年度に看護ケア教材を開発、2020年度に看護実践能力指標を開発する予定だったが、2019年度に指標原案を開発した。よって、2020年度は引き続き指標の信頼性及び妥当性の検証を行い、指標を完成させる。開発順序を変更した理由は、はじめに指標を定め、それに基づき教材を開発した方が適切と思われたためである。 看護ケア教材開発については、2020年度に文献レビュー及びインタビュー結果に基づき、看護師用ケア教材の内容を定め、完成を目指す。最終年度の2021年度には、これらの教材及び指標を用いた看護師対象のワークショップの開催、ウェブを通じたこれらの教材の公開を行い、終了とする。
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Causes of Carryover |
看護実践能力指標の開発を2020年度から2019年度に変更したことにより、指標開発に伴う経費が生じたことによる。 具体的には、指標の信頼性・妥当性を検証するための質問紙調査の実施に必要な質問紙印刷、質問紙配布及び回収にかかる通信費、及びデータ分析にかかる費用である。これらの費用を2020年度から2019年度に前倒しして使用することとなった。
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