2020 Fiscal Year Research-status Report
災害発生時における精神障害者の適応的行動を促進させる介入支援モデルの開発
Project/Area Number |
19K10869
|
Research Institution | Kobe Tokiwa University |
Principal Investigator |
立垣 祐子 神戸常盤大学, 保健科学部, 准教授 (80382266)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神崎 初美 兵庫医療大学, 看護学部, 教授 (80295774)
松清 由美子 久留米大学, 医学部, 准教授 (60587468) [Withdrawn]
庄司 寛子 (久保田寛子) 大阪市立大学, 大学院看護学研究科, 特任講師 (30582960) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 災害 / 精神科 / 適応行動 / 介入支援モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,災害発生時における精神科入院中の患者の行動特性を明らかにし,不適応行動に対しては,適応的行動へと転換できるよう,適応的行動に対してはその促進が円滑になされるよう介入支援モデルを開発することにある. 2020年度は,3か年のうちの2年目にあたり,前年度に収集したデータを質的データ分析ソフトNVivoを用いて行った.その結果,精神科入院中の患者の行動特性は,病棟種別によって認められる行動特性に特徴があることが明らかになった.本研究では,精神科病棟を編成する「精神科救急病棟」,「精神一般病棟」,「精神療養病棟」,「アルコール治療専門病棟」,「認知症治療病棟」でデータを収集した.また,本研究の主題である適応的行動,不適応的行動について①安全な避難行動,②発災後の生活の2側面を軸として,行動特性を分析していった. その結果,先に述べた病棟種別によって認められる行動特性の例として安全な避難行動を促すための病棟内の患者をフロアへの移動があるが,「精神科救急病棟」では,隔離中の患者は集団が怖く隔離室に戻りたがるといった行動が認められ,スタッフの個別対応が必須となることが明らかになった.「認知症治療病棟」「精神一般病棟」では,フロアへの誘導に従うがすぐにそれぞれの病室に戻ってしまうという不適応行動が認められることが明らかになった.背景には認知機能の低下や認知の歪みがあることが想定される.さらに集団で緊張を感じる精神科の患者のとっての適応行動は,集団行動にそもそも馴染まないという可能性も考えられた.本研究が目指す精神科患者の特性をふまえた独自の支援介入モデル開発の必要性を裏付ける結果となり,次年度の方向性として適応的な行動を促すための現象の理解をさらに追究し適応的行動への転換の方法を考える必要があることがわかった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,災害発生時における精神科入院中の患者の行動特性を明らかにし,不適応行動に対しては,適応的行動へと転換できるよう,適応的行動に対してはその促進が円滑になされるよう介入支援モデルを開発することにある. 3か年のうちの2年目にあたる本年度は,当初計画では「尺度アイテムを作成し,信頼性・妥当性」を検証することを想定していたが,コロナ禍で逼迫する精神科病院での質問紙調査は倫理上適切ではないと判断し,モデル開発の方法を量的研究法から質的研究法に変更して研究活動を継続した.実際には,NVivoを購入し,質的データ分析を詳細に行った. その結果,1年目に収集したデータ分析から精神科入院中の患者の災害発生時の行動特性について「適応的行動」,「不適応的行動」の特性が明らかにできた.さらに,避難行動においてその特性が顕著であり,介入支援モデルでは,避難行動を重視する必要があること等,介入支援モデルの作成にあたり,いくつかの主要な手がかりをつかむことができた. 2021年度は,最終年度となり「災害発生時における精神障害者の適応的行動を促進させせる介入支援モデル」を提示することになるが,本研究で得られたデータと既存の先行研究から概念を抽出し,コロナ禍での研究活動には制限があるが,現時点でできる方法で可能なかぎり介入支援モデルの提示を試みる.
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は研究期間の最終年度であり「災害発生時における精神障害者の適応的行動を促進させせる介入支援モデル」を提示することで完了する.2年目の研究活動は,コロナウイルス感染症感染拡大の影響で精神科病院での質問紙調査を行うことができなかった.現時点では,感染拡大の収束について不透明であり,また,ある程度収束しても臨床の疲弊を考慮すると現実的なデータ収集方法には大幅な変更を行うしかないと考えている.現時点では,本研究で得られたこれまでのデータを土台に概念を抽出し,モデルの作成を行えるのではないかと考えている.そのため,当初計画にはなかったが,現在,中範囲理論について調べている.コロナ禍での研究活動には制限があるが,現時点でできる方法で可能なかぎり介入支援モデルの提示を目指すこととする.
|
Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症により当初計画していた質問紙調査の実施を行えなかったため.遠隔での研究活動を推進するためパソコン等の購入を検討している.また,質的データかた支援モデルの構築を行うため,関連図書の購入にあてる.
|