2021 Fiscal Year Research-status Report
精神障害の親を持つ子どもの自尊心回復に向けたアプローチ-訪問型家族支援の導入-
Project/Area Number |
19K10917
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
土田 幸子 鈴鹿医療科学大学, 看護学部, 准教授 (90362342)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 大 三重大学, 医学系研究科, 助教 (30378301)
長江 美代子 日本福祉大学, 看護学部, 教授 (40418869)
甘佐 京子 滋賀県立大学, 人間看護学部, 教授 (70331650)
牛塲 裕治 福井県立大学, 看護福祉学部, 助教 (30905477)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 訪問支援 / 家族支援 / 親子 / 相互理解 / コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
精神障害患者のいる家庭では、家庭内でのコミュニケーションが少なく、障害についても語られることがあまりないため、その状況下で暮らす子どもは、親の示す精神症状に対して、どのように対応してよいかわからず、戸惑う。また、障害のことに触れようとしない大人の態度から、「隠さなければいけない」と学習し、内と外の使い分ける行動が子どもの生きづらさにつながっていた。本研究で用いる「メリデン版訪問家族支援」では、精神障害患者のいる家庭に訪問し、症状や生活上の困りごとを語り合ったり、コミュニケーションを円滑にする方法を練習する手法をとるが、これらの介入で互いに理解しあうことは、子どもの生きづらさや自尊心にどのような影響を与えるのかを明らかにする研究を計画した。 令和3年4月より医療機関から紹介を受けた1事例に対して訪問家族支援を実施したが、他者とのかかわりに敏感な子どもさん(小学生)には会うことができず、母親である当事者、父親を対象に18回の訪問を繰り返した。精神症状をめぐって非難しあうことが多かった夫婦が、コミュニケーションの練習や互いの話を聞くことによって普通に話し合えることが増え、診察場面で家族への不満を多く語っていた対象が家族の不満を話すことが少なくなるなど、家庭内で円滑に会話ができていることがうかがえた。しかしながら、本研究の対象である子どもの参加は難しく、家族内で語り合うことが子どもの自尊感情にどう影響するかなどについては、確認できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
医療機関から訪問家族支援を実施する研究協力者として選定された対象者(家族)であっても、訪問家族支援の導入が難しく、実際に訪問家族支援を実施できたのは、令和3年度になってからだった。1事例に対してメリデン版訪問家族支援を用いた介入を実施した(計18回)が、Covid-19による緊急事態宣言で訪問が難しくなるなど中断を余儀なくされた。 実施した1事例についても、他者とのかかわりに敏感な子どもさんで、家族ミーティングへの参加が難しかったため、家族で語り合うことによる夫婦間のコミュニケーションの変化は観察できても、本来の目的である親子のコミュニケーションや子どもの自尊感情の変化に関するデータ収集はできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
Covid-19の蔓延によって予定通り取り組めなかった期間分の研究期間(1年)の延長を考えているが、研究目的である家族で症状や生活上の困りごとを語り合うことによって、互いの理解や関係性、子どもの自尊感情にみられる変化を明らかにするための複数事例への訪問家族支援の実践・データ収集は難しいと考える。そのため、子どもを有する精神障害患者に対してメリデン版訪問家族支援を実施したことのある支援者に「子どもを有する精神障害患者とその家族(子ども)の紹介」を依頼し、既にメリデン版訪問家族支援の手法を用いた介入を受けたことがある子どもに、家族で症状や生活上の困りごとを語り合うことをどのように感じたか、またそれによって、親の障害の理解や親との関係性、自身の自尊感情が変化したかどうかを問うインタビュー調査を実施できないかと検討している。子どもを有する精神障害者に対するメリデン版訪問家族支援の実施経験者に打診し、了解が得られたら、研究倫理審査を経て実施していきたい。
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Causes of Carryover |
訪問家族支援が導入可能な対象と出会うことが難しく、まだ1事例しか実施できていないことから残額が生じている。申請時に計画した方法では、家族で症状や生活上の困りごとを語り合うことによる親の障害の理解や関係性の変化、子ども自身の自尊感情の変化を図れるほどの(複数事例の)実施件数が見込めないため、メリデン版訪問家族支援の手法を用いた家族支援を受けた経験のある(実施し終了している)子どもを有する精神障害者とその家族(子ども)へのインタビューを実施したいと考えている。未使用の費用については、対象者へのインタビューを実施するための旅費やインタビュー時に使用する会場借用費、対象者への謝金などに充てる。
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