2019 Fiscal Year Research-status Report
多職種協働による認知症高齢者へのHAD予防ケアプロトコルの効果検証
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19K11128
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
阿部 慈美 佛教大学, 保健医療技術学部, 助教 (10823297)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松岡 千代 甲南女子大学, 看護リハビリテーション学部, 教授 (80321256)
濱吉 美穂 佛教大学, 保健医療技術学部, 准教授 (80514520)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 入院関連機能障害(HAD) / 多職種連携 / チーム医療 / 認知症 / 高齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、入院関連機能障害(HAD)はまだ社会に十分には周知されていない。そこで、HAD予防に関する国内の現状について把握するべく文献による調査を実施した。文献調査に当たっては、国内での報告がまだ少ないため、HADの状態に類似した内容で、これまで多く取り組まれてきた廃用症候群やADL低下、老年症候群などについてもキーワードを増やして広く検索し、国内の病院でどのような取り組みがされているかを調査した。 その結果、HAD予防としての取り組みの報告は大学病院を中心とした大規模病院が中心であった。また、多職種連携が重要との課題から、チームで取り組むためにシステムの検討がされているが、効果評価などが不十分であることや、看護部など単一部署での取り組みが多く、多職種連携の課題が改めて浮き彫りとなった。しかし、チーム医療が上手く機能しない具体的な要因が文献調査からは見えてこなかった。 また、本研究ではHADのリスク因子である低栄養にも着目し、栄養管理へのアプローチを検討しているが、現在のHAD予防の取り組みは、主にリハビリテーション(以下リハビリ)の早期介入や、離床の機会を増やすといった内容が殆どで、低栄養への介入は認めなかった。病院内における栄養管理については、既に多くの病院にNSTチームが存在しているが、NSTとの連携も課題としては挙げている文献があるものの、実際にNSTと連携している報告は文献調査からは認めなかった。廃用症候群やADL低下においても課題については大きな差はなかった。 以上のことから、国内でのHAD予防においては、リハビリだけでなく栄養管理を含めたチームアプローチが課題であることが明らかになった。しかし、本研究を進める上で、多職種連携による認知症高齢者へのHAD予防プロトコルを効果的に機能させるために、具体的にどのような対策が必要であるかは明らかにはならなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初2019年度には、多職種でとりくむ認知症高齢者のためのHAD予防プロトコルを完成させ、プレテストまで実施する予定であった。 プロトコル作成に当たり、国内外の文献調査を実施し、特に国内の現状について詳細に調べたが、先行文献からは日本国内でHAD予防への認知が広がらない現状について、どのような課題があり、どのような対策が必要であるかについて具体的な内容では明らかにならなかった。そこで、更に国内におけるHAD予防の現状について調査する必要があるという判断に至った。調査に当たっては、課題の内容が病院の規模によっても違うことが予測されるため、大小病院に対して広く調査するために質問紙調査が必要であると考えた。また、先行文献でも課題の詳細と対策について明らかになっていなかったため、臨床において、何が弊害となっているのか詳細な課題の洗い出しと対策についても調査が必要であるため、インタビュー調査も併せて必要であると考えられた。そのために予定していた進捗状況より遅れる結果となった。今後はプロトコル作成に際しては、臨床現場の声をしっかりと捉えることで、効果的に機能するプロトコル作成につなげたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、質問紙調査とインタビュー調査により、多職種連携で認知症高齢者のHAD予防に取り組むうえで臨床での課題をより広く、より詳細に明らかにし、その結果を元にプロトコルを作成する。 2019年度のHADの現状に関する文献調査では主に大学病院を中心とした大規模病院の報告であった。更にプロトコルを作成する上での具体的な方策は認めなかった。そこで、多職種連携で認知症高齢者のHAD予防に取り組むうえで臨床での課題と対策について、全国の中小病院から大病院まで約1000箇所を対象とした質問紙調査を広く実施する。同時に、急性期病院の多職種スタッフを対象にインタビュー調査を実施し、より詳細に課題や対策について調査する。 質問紙およびインタビュー調査の内容は、多職種連携方法や効果評価の方法などチーム医療を進めるうえでの課題と対策、次にHAD予防の具体的な介入であるリハビリと栄養管理について、多職種で認知症者に効果的に介入するための課題と対策、各職種の役割である。その結果を質的、量的側面からメタ分析することで、認知症者へのHAD予防を効果的に進めるためのプロトコル作成の示唆を得る。 プロトコル作成にあたっては、調査研究をもとに認知症ケアのスペシャリストである認知症看護認定看護師や理学療法士や作業療法士などのセラピストや、管理栄養士などにも協力を得て作成する。 研究遂行の課題としては、新コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の影響により、臨床現場の状況は非常に厳しい状態である。質問紙やインタビュー調査の協力を得ることが難しい状況である。質問紙調査は4月、インタビュー調査を8~9月に実施予定していたが、両調査ともに、時期を2~3か月ずらして実施を予定している。
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Causes of Carryover |
研究の進捗がやや遅れているため、前年度に予定していたパイロットスタディなどの実施が出来なかったこと。また、新たな予備調査の必要性が出てきたため。
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