2019 Fiscal Year Research-status Report
高齢期の妻や親を介護する男性介護者世帯に対する災害時の健康管理と共助に関する研究
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19K11153
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Research Institution | Kinjo University |
Principal Investigator |
彦 聖美 金城大学, 看護学部, 教授 (80531912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大木 秀一 石川県立看護大学, 看護学部, 教授 (00303404) [Withdrawn]
曽根 志穂 石川県立看護大学, 看護学部, 講師 (30381700)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 男性介護者 / 家族介護者 / 災害看護 / ソーシャル・キャピタル |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢期の親や妻を介護する男性介護者は増加している。女性に比べて、仕事中心の生活を送ってきた男性介護者は地域との関りが少なく、ソーシャル・キャピタルが乏しい。また、男性介護者は弱音を吐かず、自己完結しやすいため、男性介護者世帯は孤立しやすく、災害時には支援が遅れる可能性がある。さらに、被介護者と共に男性介護者自身も健康状態に不安を抱え、災害時は共倒れの危険があり、家族単位で支援する必要がある。 男性介護者世帯に対する防災支援として、保健医療介護の専門職であるか否かによらず、様々な立場からの支援者が、男性介護者世をどのように捉え、どのような防災支援を想定しているかは明らかではない。男性介護者世帯の災害時に向けた自助の実態と、保健医療介護専門職者や地域住民の認識と支援の実態を多面的に把握することは、男性介護者世帯を取り巻く包括的で、きめ細かな防災支援体制の構築に向けたエビデンスを提供すると考える。 そこで本研究の目的は、男性介護者世帯に対する災害時に向けた健康と危機管理、防災に対する準備状態を①男性介護者(当事者)自身、②保健・医療・介護領域の専門職支援者、③地域住民の3側面から量的・質的に把握し、男性介護者との共助の在り方を検討することである。以上は、災害時の男性介護者世帯に対する健康管理と危機管理の推進、地域の共助の促進のみならず、被介護者を介護する全ての世帯に対する支援のユニバーサルデザイン化の推進につながる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、男性介護者世帯に対する災害時に向けた健康と危機管理、防災に対する準備状態を①男性介護者(当事者)自身、②保健・医療・介護領域の専門職支援者、③地域住民の3側面から量的・質的に把握し、男性介護者との共助の在り方を検討することである。 2020年度は、本格調査に向けて、男性介護者グループの活動からの予備的なヒアリング、家族介護者を対象とした防災イベントにおける参加者の防災に関する現状とニーズ把握、学術学会による情報収集により、フォーカスグループインタビューガイドと質問紙の作成を行った。男性介護者グループの活動からは、避難所に認知症の被介護者を連れていくことには躊躇があること、「避難行動要支援者」への登録と公開には賛否の意見、迷いがあること、災害時に対する備えには関心が高いことが把握された。防災イベントに参加した介護者からは、防災に関心はあるが知識・情報の不足、集団避難に対する抵抗感、閉鎖的な介護生活、家族・地域の人との希薄な関係性等が把握できた。 これらの結果と情報収集、多領域の文献検討より、①男性介護者(当事者)自身、②保健・医療・介護領域の専門職支援者、③地域住民に対する調査のためのフォーカスグループインタビューガイドと質問紙を作成した。所属大学倫理審査委員会の承認を経て、調査の実施予定であったが、新型コロナウイルス感染症の流行があり、調査の実施は延期している。地域の感染症拡大の状況をみながら、予定している調査を順次実施する予定である。これらの調査により、男性介護者世帯の災害時に向けた自助の実態と、保健医療介護専門職者の認識と支援、地域住民の認識と支援の実態を多面的に把握し、男性介護者との共助の在り方を検討していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、まず、対象者②の保健・医療・介護領域の専門職支援者に対する質問紙調査を実施する。引き続き、対象者①の男性介護者(当事者)グループに対する防災セミナーとフォーカスグループインタビュー調査、対象者③の地域住民グループに対す防災セミナーとフォーカスグループインタビュー調査を、適切な時期を判断して実施していく予定である。 新型コロナウイルス感染症予防の観点から、インタビュー調査の実施が難しいと判断された場合は、郵送法質問紙調査へ切り替える等の調査方法の変更を検討する予定である。 結果は速やかに公衆衛生関連及び在宅ケア関連の学会や学術雑誌において公表していく。
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Causes of Carryover |
(理由)新型コロナウイルス感染症の流行により、令和1年度に実施を予定していた調査の実施が遅れたため、調査実施に係る予算、その依頼等に係る経費に関して、次年度へ繰り越す使用額が生じた。 (使用計画)令和2年度は、保健・医療・介護領域の専門職支援者に対する質問紙調査を実施するための郵送法自記式質問紙調査に係る費用、男性介護者(当事者)グループと地域住民グループに対する防災セミナーの開催とフォーカスグループインタビュー調査に係る費用、およびセミナー開催や資料準備・得られたデータ入力作業に必要なアルバイト謝金、結果の分析等に必要な当事者や研究者との意見交換、さらに広範な文献データベース、書籍情報、網羅的な情報収集と成果の公表等のための経費を予定している。
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