2020 Fiscal Year Research-status Report
認知症高齢がん患者のがん疼痛と倦怠感に関する症状アセスメントモデルの構築
Project/Area Number |
19K11248
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
森 万純 大分大学, 医学部, 助教 (60533099)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 夏稀 大分大学, 医学部, 助教 (20818596)
小野 光美 大分大学, 医学部, 准教授 (20364052)
三重野 英子 大分大学, 医学部, 教授 (60209723)
寺町 芳子 大分大学, 医学部, 客員研究員 (70315323)
濱口 和之 大分大学, 医学部, 客員研究員 (60180931)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高齢がん患者 / 認知症 / 痛み / 苦痛 / 症状 / 評価尺度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、卓越した看護実践および専門分野におけるチーム医療の実践を伝える役割モデルとなる専門看護師の知を基に、科学的根拠および有効な方法論を抽出し、治療を受ける認知症高齢がん患者に対する疼痛と倦怠感における包括的な症状アセスメントモデルの構築を目指すことである。本研究は4段階で実施している。 今年度は、全段階の研究計画に対して所属大学の研究倫理審査の承諾を得た。その後、第一段階(九州・四国地方のがん診療連携拠点病院等に勤務するがん看護専門看護師、老人看護専門看護師等9名に認知症高齢がん患者の看護の実態と課題について聞き取り調査の実施および質問紙の素案作成)と第二段階(認知症機能の低下のある高齢がん患者に対する看護師の症状アセスメントの構成要素の明確化と疼痛行動評価尺度の試案作成)に取り組んだ。 痛みに対する質問に回答できない認知症や言語障害等を有する場合には、彼らの行動を観察し、痛みを評価する必要がある。国内外で作成された既存の疼痛行動評価尺度のうち、急性痛のスクリーニング目的で開発されたものは、ALGOPLUSのみである。本尺度は乳房切除術等を施行した高齢患者、脳卒中、認知症やうつ病患者にもテストされており、優れた判別特性、信頼性、文化的な妥当性、活動中や鎮痛剤投与後の変化に対する感度が示されていること、多言語での翻訳や術後の急性痛の評価が可能という条件から、本研究で用いる疼痛行動評価尺度の基盤として選出した。さらに、9名の看護師(がん看護専門看護師4名、老人看護専門看護師2名、認知症看護認定看護師2名、緩和ケア認定看護師1名)からの聞き取り調査を行い、認知症機能低下のある高齢がん患者に対する痛みや苦痛の症状アセスメントの構成要素として、「表情」「言動・声の性質」「体の動き・姿勢」「日常生活行動の変化;睡眠、活動性、食事摂取量」「精神状態の変化」の5つが抽出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画段階では、第2段階(2020年度)では、全国にあるがん診療連携拠点病院401施設(2018年4月現在)に勤務するがん看護専門看護師、老人看護専門看護師を対象として質問紙調査から病院で治療中の認知症高齢がん患者への看護の明確化を行うことにより、第3段階(2021年度)で、第1~2段階の研究結果を含め、病院でがん治療を受ける認知症を有する高齢がん患者の疼痛と倦怠感に関する症状アセスメントモデルを作成する予定であった。 第2段階の調査が新型コロナウイルス感染症の影響もあり、調査対象を全国区ではなく、九州・四国地方のがん診療連携拠点病院はじめ一般病院に勤務しているがん看護専門看護師、老人看護専門看護師、認知症看護認定看護師等への質問紙およびインタビューに変更した。調査対象者の縮小に伴い、現時点での進捗状況としては概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、当初第3段階として、研究者および研究分担者により、第1~2段階の研究結果を含め、病院でがん治療を受ける認知症を有する高齢がん患者の疼痛と倦怠感に関する症状アセスメントモデル試案を作成予定であった。第2段階の調査対象や方法の一部変更に伴い、今後本研究では、既存の疼痛行動評価尺度である急性痛のスクリーニング目的で開発されたALGOPLUSを基礎とし、認知機能が低下している術後高齢がん患者を対象として日本語版ALGOPLUSを作成し、信頼性と妥当性を検証することとする。研究方法は、以下の3つのステップ(1)測定尺度(ALGOPLUS)の質の検討(2)ALGOPLUS の日本語への翻訳(3)日本語版ALGOPLUSの信頼性・妥当性の検討で行う。 現在、測定尺度の質の検討、ALGOPLUS の日本語への翻訳と日本語版ALGOPLUS試案の表面妥当性をほぼ終えている。今後は、日本語版ALGOPLUS試案の信頼性・妥当性の検討として、認知機能低下のある高齢術後がん患者約50名、都道府県・地域がん診療連携拠点病院に勤務する病棟看護師約100名を対象として併存妥当性の検討を行う。
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Causes of Carryover |
今年度使用予定していた旅費や物品費等が新型コロナウイルス感染症の影響により、使用する機会や額が減少したため。次年度は、調査研究を予定しておりデータ収集に通うための交通費やデータ処理・管理に伴う物品の購入に充てる。
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