2019 Fiscal Year Research-status Report
床外乱刺激バランス応答に着眼した脳卒中片麻痺者の歩行再建に必要な身体機能の解明
Project/Area Number |
19K11306
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
加茂野 有徳 昭和大学, 保健医療学部, 講師 (70551232)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荻原 直道 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (70324605)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 歩行再建 / 脳卒中片麻痺 / バランス能力 / 外乱応答 / 逆動力学解析 / バイオメカニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、脳卒中片麻痺者の歩行再建に必要な身体能力として、歩行時の左右脚間の体重移動と床反力に対する応答に関係する側方バランス機能に着目し、左右の床外乱刺激に対するバランス応答を明らかにすることを目的とするものである。 まず、当該年度においては、健常成人を対象に、外乱装置上に立った状態で最大速度400 mm/sで左方向に200 mm移動する外乱を与えた。そのときの外乱応答における身体運動をモーションキャプチャシステムを用いて計測した。外乱装置のテーブル上に設置した床反力計を用いて、左右の床反力および着力点を計測した。床反力計は左右の脚に1枚ずつ使用した。計測から得られたデータをヒト筋骨格モデルに代入し、逆動力学計算によって外乱応答中に関節に発生する関節モーメントを推定した。 その結果、外乱装置のスライドテーブルが左に移動すると、身体は慣性によって反対方向の右に移動した。身体の移動に対応するため、テーブル移動方向と同じ側の脚では荷重が減少し、反対側の脚では荷重が増加した。このとき、荷重が増加した側の脚は屈曲し、減少した側の脚は伸展した。荷重が増加した側の脚は主に膝関節が屈曲し、減少した側の脚は足関節が主に伸展していた。これに対応して、荷重が増加した脚では足関節で底屈モーメントが生成され、反対の脚では背屈モーメントが生成された。前額面においては、荷重が増加した側の脚の股関節で外転モーメントが生成された。この外転モーメントは外乱による側方への力に対応するためのものと考えられる。 このような側方外乱に対する姿勢制御戦略の生体力学的特徴は、脳卒中片麻痺者に限らず、高齢者や種々の患者の転倒予防策に貢献できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度において、健常成人における床側方外乱刺激に対する応答を計測ならびに解析することができた。その結果より、ヒトのバランス能力に関する発展的な知見を得るとともに、本研究課題の根幹をなす計測ならびに解析の方法を確認することができた。今後は、外乱実験条件の追加に加えて、脳卒中片麻痺者を対象とした計測を行っていく予定である。 以上の理由より、本研究課題は現在までおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、健常成人を対象に外乱刺激条件(外乱方向および外乱速度)を追加して計測ならびに解析を行う。外乱条件を比較することで、外乱の強さに対して身体のどの部位を活用して対応するかという、より詳細な姿勢制御戦略に関する情報が得られる可能性がある。また、左右方向の外乱応答を比較、分析することで、ヒト立位姿勢制御の左右対称性を評価することができる。得られた知見を学会、論文等で公表するとともに、解析結果をもとに、脳卒中片麻痺者を対象とした実験の外乱条件を検討する。 次に、脳卒中片麻痺者を対象として、健常成人を対象とした研究と同様の計測と解析を行う。さらに、歩行運動を3次元動作解析装置(モーションキャプチャ)と床反力計(フォースプレート)を用いて計測し、歩行能力と外乱応答との関連を明らかにする。また、歩行運動と外乱応答の計測を、リハビリテーションの実施とともに経時的に行い、歩行運動と外乱応答の変化を検討する。 最終的に歩行再建と歩行能力向上に必要な身体機能を明らかにすることを目的に、本研究課題を推進していく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、当該年度に予定していた学会での研究成果発表を見送ったことと、消耗品の購入が抑えられたことが理由である。 次年度は、学会や論文投稿による研究成果発表と、実験実施および解析に必要な消耗品の購入を予定している。
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