2019 Fiscal Year Research-status Report
軽度認知障害・軽度認知症本人が「幸せに生きていく」ことを支える支援に関する研究
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19K11432
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
牧 陽子 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 長寿医療研修センター, 室長 (60642303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 英幸 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院, 部長 (00298366)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 認知症 / 軽度認知障害 / 互恵性 / 共感 / 社会認知 / 幸福度 / 自律支援 / エンパワメントアプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度には本研究で提案している‘Self Management of autonomous Interdependence Life Empowerment (SMILE): お互い様のセルフマネジメント’、および、その支援に関してのコミュニケーション支援方法の展望論文を発表した。SMILE支援では、認知症の進行予防に効果があるとされる、運動・知的刺激・趣味(楽しいと思うことをすること)・社会参加・利他的活動/役割・笑うこと・睡眠/生活リズム・食事に関して、どのような意味を持つのか理解した上で、個々人が自分の生活をセルフマネジメントしていく過程を支援していく。SMILEの特徴として、1) 自主性を重視し、個々人が自分にあった生活を選択していくという自律型支援 2)本人・家族が共に生活に向きあうことにより、ケアの授受の関係性でなく一緒に生きていくパートナーとしての関係性を構築していくための支援 3) 笑うこと、自己肯定感、互恵の関係性という、心理面を重視すること、という自律的・主体的な相互依存関係(autonomous interdependence)の構築を目指す支援であること、があげられる。「進行しないために何をするか」ではなく、「今を楽しむ、認知症とともによりよく生きる今を積み重ねていく」ことで、結果的に認知症の進行予防につながり、病気を受け入れ安心してよりよく生きていく支援を目指すものである。コミュニケーション支援としては、認知症当事者が意思決定をしていく上で、認知機能低下に対して、どのような支援が求められるのか、いかに共有意思決定を進めていくのかに関して、支援方法の提案の展望論文を発表した。さらに、認知症者が社会参加をしていく上で必要な支援に関して、総説を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「認知症とともに幸せに生きる (Living well with dementia)」は、認知症医療・支援、認知症の国家政策において中心的な課題となっている。本研究は軽度認知障害(MCI)及び軽度認知症の、「幸せに生きるあり方」およびそれに対するリハビリテーション支援について提案し検証することを目的とする。「幸せに生きる」あり方は多様であるが、自立を障害されていく認知症では、「他者とよりよい関係性を保つこと」が、認知症とともに幸せに生きる上での共通の要素としてあげられると考えられる。自律が障害されるために、必然的に他者の支援を受けて日常生活を成り立たせていくこととなる。その一方、社会的認知の低下により、他者視点に立ち他者の心的状況を推察するとともに、自己洞察をすることが困難になっていくところに、認知症の生きづらさとともに支援の困難さがある。ただし、他者視点に立つことは困難になっていても、自己視点から他者と共感をしていく機能は、進行してからも残存していくことが報告されている。MCI・軽度の段階では、認知機能向上を目指す支援のみではなく、この他者と共感し、互恵的な関係性を結んでいくことを目的としていく支援により、進行をしてからも、他者との良好な関係性で、自立が障害されても支援を受け入れて生活をしていくことが可能となると考えられる。そこで、本研究では、他者との互恵的な関係性、及び、他者との共有意思決定に焦点をあてることとする。 2019年度は、開始年度であり展望的な構想を提案することとし、支援の展望論文・コミュニケーション支援の展望論文を発表した。また、認知症者の社会参加を推進していくために必要となる支援に関して総説を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、支援方法をさらに具体化するための検討を行う。軽度認知障害・認知症は、”life changing disease”とされ、生活の在り方・人との関係性も変わっていく。疾患の告知の本人・家族の心理的影響は大きく、心理的サポートを必要とする人は多く、傾聴をしつつ、自分で自分の考えに気づいていく過程の支援が求められると考えられる。認知症とともにどのように生きていのか、という問いに対して、他者から教えられるのではなく、自分で回答に到達することで、認知症が進行してからも、他者との関係性を良好に保つことにつながっていくと考えられる。非薬物的支援は対象者に合わせたテイラーメイドの支援が求められるが、傾聴のポイント、質問を行うためのポイント等、チェックポイントは、共通項として提案していくことができると考えている。 ここで、認知症の非薬物的介入は、個人中心のテイラーメイドの支援を原則としていて、均質な介入方法を定めて全ての人に適用するという方向性は、現実の臨床にそぐわず、research-practice gapを拡大することにつながる。介入は、当事者との対話・関係性で進めていくものであり、介入方法を厳密に定めていくのではなく、対話・関係性を深めていくためのチェックポイントを共通化することで、実臨床の要請にこたえるエビデンスを報告していくことができると考えている。そこで、本研究では、2020年度には、多職種の臨床家に協力を得て、コンセンサスメソッドによりチェックポイントを検証することとする。2021年度には、認知症本人・家族に意見を求めて、内容の検討をしていく。認知症当事者の参加をする当事者研究に関しては、どのように意見を求めていくのか、議論がなされているが、本研究では、実際に臨床支援に携わっている多職種の意見を集約した後に、当事者に意見を求めることとする。
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Research Products
(4 results)