2021 Fiscal Year Research-status Report
環境と空間認知の発達からみた幼児期における多様な動きの習得メカニズムに関する研究
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19K11465
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Research Institution | National Institute of Fitness and Sports in Kanoya |
Principal Investigator |
森 司朗 鹿屋体育大学, 理事, 理事(教務・学生・研究・国際交流担当)・副学長 (80200369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中本 浩揮 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 准教授 (10423732)
畠中 智惠 純真短期大学, こども学科, 助教 (30883615)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 幼児 / 運動発達 / 空間認知 / フィードフォワード制御 / 基礎的運動パターン / 運動経験 / 環境 / フィードバック制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、戸外の自由な遊びの中の多様な運動経験における動きの習得のメカニズムを明らかにするためにこれまで得られたデータに関して以下の2点を検討した。1点目は、昨年度までに得られた里山の自然環境で「森のようちえん」活動を行っている園の2歳児から5歳児までの子どもたちが日常の保育の中で経験している動きについて時系列的な分析を行った。幼児の動きに関しては、各学年のクラスの担任教師に最近1週間の園での子どもの37種の運動パターン(杉原他2011)の出現割合と出現頻度を約5か月間にわたり評定してもらいその結果を分析した。その結果、2歳児から4歳児までは姿勢・移動系のカテゴリーが操作系のカテゴリーに比べて出現割合、出現頻度ともに高い傾向を示していたが、5歳児になると両カテゴリーともに同程度の出現割合、頻度を示していた。2点目はA保育園の年少・年中・年長児それぞれの30分の自由遊びの様子を約半年以上の期間をあけて行った2回の観察結果からえられた動きを石河他(1980)の基礎的運動パターン分類を参考に分析し、結果をまとめた。 さらに、昨年度の継続として、「森のようちえん」活動中の「自由遊び」中の動きの習得のメカニズムについて昨年と同様の方法での検討と幼児の“おにごっこ”遊びの場面での横断的な分析を通して他者との空間認知能力の発達について検討を行った。動きの習得に関しては、今年度は3歳児を対象にその活動の様子を4台のビデオカメラで撮影するとともに、それぞれの幼児にトラッキングセンサーを使って活動中の行動の軌跡を測定し、同時に万歩計を使って歩数の測定を行った。また、空間認知能力の発達に関しては、これまでに測定した5歳児に加えて、4歳児でも3人一組の“おにごっこ”を通しての空間認知能力の発達と動きの変化についてもトラッキングセンサーを使って、“おにごっこ”中の行動の軌跡の測定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
里山の自然環境で月に1度行われている「森のようちえん」の活動を実施している保育園の2歳児から5歳児の担任教師に日常の保育での運動パターンの出現割合と出現頻度を評価してもらった結果に基づいて時系列的な変化に関して検討を行い、その一部を九州体育・スポーツ学会で発表するとともに、鹿屋体育大学学術研究紀要に投稿した(査読中)。また、天候と新型コロナ感染での影響も受け予定通りは進まない時期もあったが、これまで同様同保育園の「森のようちえん」活動の中の自由遊びの時間(30分)での3歳児から4歳児の7月から3月にわたる活動の様子を撮影するとともに、トラッキングセンサーを使って対象児の活動中の行動の軌跡を測定するとともに万歩計を使って歩数を測定し、データの分析を行うことができた。また、A保育園の日常の自由遊びでの前半後半の2回に分けた調査の後半時に3歳、4歳、5歳の各クラスの中から数名にトラッキングセンサーを着装させて得られた対象児の活動中の行動の軌跡や同距離、移動面積と観察された基礎的運動パターンとの関連について検討を行っている。 さらに、4歳児と5歳児の3人一組の“おにごっこ”を通しての空間認知能力の発達と動きの変化についても“おにごっこ”中の行動の軌跡を分析するためにトラッキングセンサーで測定し、データ分析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、今年度はこれまで調査してきた里山での「森のようちえん」の活動を実施している保育園の2歳児から5歳児までの幼児を対象に、日常の保育での37種類の基礎的運動パターン(杉原ほか2011)の出現割合と出現頻度に関して、昨年の学年に対して継続的に調査を行い、その結果をもとに、そのパターンを基本動作とカテゴリーに整理し、時系列的に分析を行う。また、A保育園の日常の自由遊びでの行動の軌跡や同距離、移動面積と観察された基礎的運動パターンとの関連について検討を行った。この2つの結果に基づいて、年少、年中、年長のそれぞれの発達的特徴において、共通性と特異性を確認し、その結果を学会等で報告を行うとともに論文に投稿する。さらに、「森のようちえん」活動中の「自由遊び」の時間での2から3歳児の子どもの身体活動37種類の基礎的運動パターン(杉原ほか2011)の出現割合と出現頻度で分類し、これらの結果と観察時にトラッキングセンサーを使って測定した活動中の行動の軌跡や同距離、移動面積のデータを分析結果から自然環境での幼児の獲得している動きの種類や時系列的な動きの変化等に関して分析をおこなうことで運動経験の“多様さ”と環境の関係を明らかにし検討する。 次に、トラッキングセンサーを使って測定した4歳児と5歳児の3人一組の“おにごっこ”を通して “おに”の“子”を追跡する追跡行動において“子”の動きを追従するようなフィードバック制御と“子”の動きを前もって予測して行動を開始するフィードフォワード制御に基づく2つの追跡行動に関する発達的な違いに関して横断的な分析をおこなうことで、他者との空間認知能力の発達と多様な動きの習得との関係を明らかにしていく。 最終的には、これまで得られた結果に基づき多様な運動の経験が引き出す動きの変化とその際の環境の特性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
今年度は、新型コロナの影響でデータ回収の遅れ及び国外・国内での学会等での発表をする機会が少なかったため,その分の予算が残った。次年度はこの予算を使って、学会発表や論文作成に関する予算に加算していく予定である。
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