2019 Fiscal Year Research-status Report
The Effect of Wearing a Baseball Helmet with a Brim and ear-guards on Hitting Accuracy
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19K11469
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Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
赤池 行平 東京国際大学, 人間社会学部, 講師 (40615556)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
麓 正樹 東京国際大学, 人間社会学部, 教授 (40339180)
碓井 外幸 東京国際大学, 人間社会学部, 教授 (60389822)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヘルメット装着 / 初期頭部上方変位 / 打点位置の差異 / 腰部変位 / 補正動作 |
Outline of Annual Research Achievements |
野球の打撃に関する研究は、水平方向に移動する物体を視覚追従する研究はあるが、リリース直後に一瞬上方に抜けるような軌道を描く球種に対する研究はほとんどない。また、視野制限をもたらす可能性がある野球用ツバ付きヘルメット(以下ヘルメット)の着用は、上方に抜けるような軌道を描く球種を視覚追従する際には、それに伴い頭部の上方への動きが大きくなり、打撃精度に影響することが予測される。このため本研究は、ヘルメットの着用の有無が、頭部動作と打撃精度に及ぼす影響について調べた。 野球経験のある大学生14名にヘルメット着用下と非着用下において、上下方向へ変化する球種を想定し、3段階の高さに設定したVisual Target(VT)をTake-back 局面において視認させてから、ティースタンド上のボールを打たせた。打撃精度は、バットに貼付した打点記録紙上に打球痕を記録し、打撃面上の基準位置からの距離を、長軸(LA)と短軸(SA)方向について求めた。 ヘルメット着用下では、被験者の初期頭部上方変位が非着用下よりも増幅した。LA上の打点位置はヘルメット着用下でグリップ方向に移動した。SA上の打点位置は、ヘルメット着用下では視認するVTが高ければ有意に低くなり、さらに一番高い位置にあるVTを視認する状況下では、ヘルメット着用下において非着用下よりも有意に低かった。 これらのことは、野球用ヘルメット着用の有無は、初期頭部上方変位を増幅し、打撃精度に影響を与えることを示唆しており、実践現場の指導指針として有益な情報になり得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年と2019年に行った研究では、ティースタンド上の静止したボールを打撃する実験を行い、野球用ツバ付きヘルメット(以下ヘルメット)が打撃精度に影響を及ぼす可能性を明らかにすることが出来た。このことは、視野制限をもたらす可能性のあるヘルメットの構造上の問題を検討する余地を明らかにしただけでなく、野球の打撃練習の方法に対しても、今まであまり重視されてこなかった部分に焦点をあてることにもなった。 野球の実戦状況下では、打者は投手が投げてくる球種が未知の状況下で、投じられるボールを視認しながら、球種に対応してヒッティングを行う。人の視覚追従は頭部の動きにも影響を与えるということは知られていることから、特にリリース後に一瞬上方に抜けるような軌道をとる「カーブ」のような球種に対しては、打撃動作の準備局面にあたる「Take-back局面」において、投球の視認活動に伴い頭部も上方に動かされてしまう可能性が高いと考えた。 我々の先行研究において、静止した状態のボールを打つ行為ではあるが、ヘルメットの装着がTake-back局面における打者の頭部初期上方変位を増幅させ、打者のバット面上の打点位置にも影響を与えるということが明らかになった。このことは、改善を狙う目的に特化した状況下で行うことが必要であるという、「トレーニングの特異性の原則」を照らし合わせても、また様々な球種への効果的な対応のためにも、打撃練習の基本から実践にいたるまで、ヘルメット着用が必要と考えられる。ヘルメットを装着せずに練習を行っているアマチュア選手に対しては特に有意義な発見であり、競技現場への応用を勧めていくことを念頭においている。
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Strategy for Future Research Activity |
我々の先行研究では、静止した状態のボールをヒッティングする実験を行い、その結果から考察を行ってきた。しかし、野球の実戦状況下では投手方向から移動してくるボールを打つため、本研究を発展させるためには、より実践状況に近い設定での研究が求められる。 今年度は、実際に投手方向から移動してくるボールを打つ状況を設定した実験を計画している。被験者はヘルメット装着下と非装着下の両状況下において、ストレートとカーブの2つの球種をヒッティングする。モーションキャプチャーによる動作解析、無線筋電センサーによる筋電図解析に加え、視線計測器を使用したボールの視覚追従データも取得することにより、より多角的に分析を進めることができる。さらにストレートとカーブの2つの球種を、打者があらかじめ認知してる場合としていない場合に条件を分けることにより、球種が既知と未知の条件間にも差があるのか検証することを考えている。 ここまでの研究において、ヘルメット装着が打者の初期頭部上方変位と打撃精度に対して、有意に影響を及ぼしてる可能性が高いことが明らかになったため、さらに実践状況下に近い条件設定で行った結果が、ここまでの研究の最終段階として大きな意味を持つことと考えている。今後の研究の結果によっては、これまでの研究から得られた知見よりも、さらに説得力のある有効な練習方法の提案につながることが考えられる、加えて、ヘルメットという道具の構造上の問題点にも言及することが可能になるため、競技パフォーマンスという領域だけではなく、用具の構造という観点からも野球界に対して影響力のある発信が行えるのではないかと考えている。
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Causes of Carryover |
研究実験に使用する機器の購入において、機能的に我々の要求を満たすものが予定していた金額よりも低く購入できたことと、学会参加費用も低く抑えられたことにより、次年度使用額が生じた原因として考えられる。今年度以降は、実験室の細かい設備の充実を図り、実験の質の向上を図り、実験に関わる者の労力軽減と効率化を実現したい、実験データ量の多さを考えると、これを実現させることが成否に関わると考えている。
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Research Products
(4 results)