2020 Fiscal Year Research-status Report
マクロファージ極性をM2へと導く新規転写因子の機能解明と生活習慣病創薬への展開
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19K11764
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
永島田 まゆみ 金沢大学, 保健学系, 助教 (30645510)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肥満 / 慢性炎症 / インスリン抵抗性 / マクロファージ / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満によって誘導される脂肪組織や肝臓の慢性炎症は、浸潤するマクロファージの「量」だけでなく、炎症惹起性M1マクロファージと炎症抑制性M2マクロファージの割合がM1優位へとシフトする「質」の変化が深く関与する。我々は、肥満の脂肪組織において、熱ショックなどの細胞内ストレスにより活性化する転写因子Heat shock factor (HSF) 1の発現が低下することを見出した。HSF1の肥満における慢性炎症とインスリン抵抗性の関係について明らかにし、生活習慣病の治療に向けた新規標的分子となることを検証する。 マクロファージで発現するHSF1の役割を個体レベルで検証するため、Cre-loxPシステムを用いて、マクロファージ特異的にHSF1を欠損するコンディショナルノックアウト(M-HSF1cKO)マウスを作製した。これらのマウスに高脂肪食を与え肥満を誘導し、インスリン抵抗性や炎症について検討を行った。高脂肪食投与によるM-HSF1cKOマウスの体重推移、脂肪重量、肝重量はコントロール群と同等であった。しかし、M-HSF1cKOマウスは耐糖能が改善し、脂肪組織におけるインスリンシグナルの亢進を認めた。また、脂肪組織に浸潤するマクロファージ及びcrown-like structure形成の減少と炎症シグナルの減弱を認め、脂肪組織における慢性炎症の軽減を示した。マクロファージにおけるHSF1の欠損は、脂肪組織へ浸潤するマクロファージを減少させ、炎症を抑制し、インスリン抵抗性を改善させることが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析に必要なマクロファージ特異的にHSF1を欠損するコンディショナルノックアウト(M-HSF1cKO)マウスを十分に得ることができた。高脂肪食投与によりM-HSF1cKOマウスは、コントロール群と同程度の体重増加を示したが、脂肪組織におけるインスリンシグナルの亢進、マクロファージ浸潤の減少と炎症シグナルの減弱、更に耐糖能の改善が認められた。このようにM-HSF1cKOマウスによる代謝表現型解析から、マクロファージにおけるHSF1の重要性を示す結果を得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
HSF1のマクロファージの極性への関与について検討を行う。 具体的には肥満のM-HSF1cKOマウスの脂肪組織や肝臓に浸潤するマクロファージ極性について、フローサイトメトリーを用いてM1マクロファージまたはM2マクロファージのどちらが優位に増加しているのか定量的解析を行う。また、M-HSF1cKOマウスとコントロール群のマウスから骨髄細胞由来のマクロファージを樹立し、LPS刺激によるM1誘導、またはIL-4刺激からのM2誘導を行い、遺伝子発現解析からマクロファージ極性を評価する。また、STAT6の発現についても検証する。更にセラストロールなどを用いてHSF1を活性化させた場合のマクロファージの極性変化についても検討を行う。
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Causes of Carryover |
当初計画していた試薬の購入額が予想よりも安価になったために残額が発生した。次年度使用額と当該年度以降分として請求する助成金を合わせた使用計画については、マウスの飼育経費、遺伝子発現解析用の試薬、ウエスタンブロット法、培養細胞で使用する関連試薬などの購入費として使用予定である。
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Research Products
(4 results)