2021 Fiscal Year Research-status Report
A Search for Quantum-resistant Problems over Finite Noncommutative Group
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19K11956
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
静谷 啓樹 東北大学, データ駆動科学・AI教育研究センター, 教授 (50196383)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 耐量子問題 / 有限非可換群 / 計算量理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題で検討している有限非可換群上の分解問題(以下、「分解問題」)には、その解が存在するかどうかの「判定問題」と、実際に分解問題の解を与える「計算問題」がある。これまでに、(1)判定問題に関して、NP内部の階層構造における低階層のレベル2に入ること、(2)計算問題に関して、分解する部分群の選びかたによっては決定性多項式時間で計算可能な場合が存在すること、(3)判定問題に関して、分解する部分群の選び方によらずランダム自己帰着性を有すること、(4)計算問題を関数ないし写像と見たとき、ランダム自己帰着性より広い概念である自己帰着性(auto-reducibility)を有すること、これら4点が本研究で判明している。 上記(3)は、分解問題のインスタンスの無視できない大きさの部分集合が容易に計算可能なら、問題全体が容易に解けることを意味する。したがって(2)を勘案すると、分解問題が決定性多項式時間で解けてしまうような部分群(本研究で「弱い部分群」と呼ぶ)を含む部分群を網羅的に分類し、弱い部分群の大きさ(上限・下限)を評価することが重要になる。これらの分類と評価は、非可換群に対する一般的議論でできることと、特定の具体的な群について解明すべきことに分かれるのは明らかであるが、本研究においてはどちらもまだ十分に解明されていない。 一方で(4)については、インスタンスを構成する要素の並びを変えるだけで自己帰着性が成立することが証明できる。このような単純な仕組みによる自己帰着の例を分解問題に限らず広く集めて体系化することも、分解問題の理解を深める上で重要と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、本研究で「弱い部分群」と呼んでいる部分群の分類とその大きさの評価を目指していたが、十分ではない。一般の非可換群について、分解問題を定義した部分群が正規部分群あった場合に弱い部分群になることが解明されたのみである。これは一般の非可換群に対する唯一の構造定理かもしれないが、個性が豊かな各非可換群の上で議論するには情報が足りておらず、さらなる考察が必要である。さらに、自己帰着性やリフティングなどの考察も手が回っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
一般の非可換群について、「弱い部分群」関する構造定理が拡張可能であるかどうかを考察するとともに、具体的な非可換群に固有の弱い部分群があるかどうかを検討する。ただし後者は個別の群に拘泥することを避けるため、例えばコクセター生成系を持つような群を対象にすることも射程に入れている。自己帰着性については、その性質を持つことの証明の一般化、すなわち分解問題の文脈を離れて、分解問題を含み自己帰着性を持つ問題たちに共通する特徴を切り出すことに注力する。
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Causes of Carryover |
研究発表ないし資料収集等のため旅費のみを計上していたが、感染症の拡大に伴って出張が制限され、また学会等もオンラインでの開催が主となったため、旅費は執行できなかった。
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Research Products
(2 results)