2021 Fiscal Year Annual Research Report
大気降下物のマルチ同位体比による大気・地圏環境への自然・人為起源物質流入の指標化
Project/Area Number |
19K12359
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
横尾 頼子 同志社大学, 理工学部, 助教 (00334045)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 降水 / 硫黄同位体 / ネオジウム同位体 / 乾性降下物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的である季節・年ごとおよび地域別に得られる大気降下物の化学組成から季節の違いや地域の影響を明らかにできる指標を構築するために,近畿圏4地点(京都府京都市,京都府京田辺市,大阪府寝屋川市,兵庫県西宮市)で1ヶ月毎に降水を採取した.本研究では,降水と共に乾性降下物について粒径別に調べるために,ローボリウムエアーサンプラーによる乾性降下物の採取を2021年3月から行い,黄砂時と黄砂のない時期での粒度分布を調べた. 2021年採取の降水試料のpHと電気伝導度を測定し,メンブレンフィルターを用いて濾過し,元素組成分析を行った.また,これまで採取した可溶性成分試料の一部を用いて硫黄同位体分析を,2010年と2011年採取の降水中の不溶性成分試料用いてネオジウム同位体分析を行った. 春季の黄砂時に採取した乾性降下物では11 μm以上と3.3-4.7 μmの重量割合が高く,花粉と黄砂の影響がみられたが,今後化学組成の検討が必要である.降水の可溶性成分に含まれる非海塩性硫酸イオンの降下量は春先と冬季に多く,硫黄同位体比は夏季に低く,春先と冬季に高い値を示し,夏季には国内起源の石油燃焼の際に放出される硫黄の影響を,春先と冬季には東アジア地域で使用されている石炭の燃焼時に放出される硫黄の影響をみる指標となる.降水に含まれる不溶性成分は春季に高いSr同位体比,低いNd同位体比を示し,ゴビ砂漠やタクラマカン砂漠を発生源とした黄砂の影響が見られる一方で,夏季と秋季の試料は低いSr同位体比,高いNd同位体比を示す季節変化がみられた.後方流跡線解析とあわせて,Sr-Nd同位体を用いた秋季や夏季の不溶性成分と中国黄土の二成分混合により,春季の降水に含まれる不溶性成分中の中国由来成分の割合を求めることができることから,Sr-Nd同位体は大気降下物に対する風送塵の流入の指標となる.
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