2020 Fiscal Year Research-status Report
Studies on involvement of microbial food chain in biomagnification of organic pollutants accumlating on the surface of nanoplastics
Project/Area Number |
19K12368
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
多羅尾 光徳 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60282802)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 秀重 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70187970)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | バイオフィルム / 生物増幅 / 生物濃縮 / 微生物食物連鎖 / 極小プラスチック / 微量有機汚染物質 / Daphnia magna |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 極小プラスチック(UMP)の表面に形成されたバイオフィルム(BF)の有無が,動物プランクトンが摂食する UMP 数に影響を及ぼすかを検証した.表面に緑藻 Chlorella vulgaris の BF を形成した粒径 0.04 mm 程度のポリプロピレン製 UMP を日齢 14 日のミジンコ Daphnia magna に供試し,暗所 25 ℃ にて 5 日間,培養した.対照として BF を形成しない UMP も供試した.その結果,D. magna は,BF を形成した UMP のほうを多く摂食することが明らかとなった. 2. 有機汚染物質(基質)→ 細菌 → 原生動物の微生物食物連鎖系を通じた生物増幅を評価することを目的として,細菌細胞表面の疎水性と有機汚染物質の吸着量の間に関連があるかを検討した.13種類の細菌を用い,それぞれの細菌の細胞表面の疎水性をヘキサデカン-水分配法にて測定した.続いて,モデル有機汚染物質である 2,4-dichlorophenol(DCP)を 1 mg C/L 含む培地で細菌を暗所 25 ℃ にて24時間培養培養した後,細菌に吸着した DCP 量を測定した.菌体湿重量あたりの DCP 量と培地中の DCP 濃度から濃縮係数(CF)を求めた.その結果,細胞表面の疎水性と CF の間に強い負の相関が認められる(r = -0.80, p < 0.05)という.当初の予想とは正反対の結果が得られた.なお,グラム陽性菌と陰性菌の間で細胞表面の疎水性や CF に明瞭な違いは確認されなかった. 3. UMP および UMP 表面の BF に吸着させるモデル有機汚染物質としてポリ塩素化ビフェニル(PCBs)を用いるため,海岸から採取したプラスチック片から PCBs を抽出・精製した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の当初計画では,プラスチックに付着した細菌から原生動物への有機汚染物質の生物増幅を明らかにすることを目的としている.これは,有機汚染物質が細菌(バイオフィルム)に吸着し,さらに原生動物が細菌(バイオフィルム)を捕食することにより生物増幅されるとの仮説に基づいている.本年度の研究においては,この仮説の前段階である,細菌が有機汚染物質を吸着することを実験的に明らかにすることができたものの,吸着量が細胞表面の疎水性と負の相関を示すという予想外の結果が得られた.現象の再現性を確認するために実験デザインの見直しを行ったり,得られた現象を説明するための仮説を検討したり,仮説を検証するための実験デザインを構築したりする必要があった.そのため,次のステップとして計画していた,有機汚染物質を吸着した細菌の原生動物への摂食実験を行うまでには至らなかった. それに対して,バイオフィルムを形成したプラスチックの動物プランクトンへの摂食実験は当初の計画どおりに進行しており,次年度にはモデル有機汚染物質として PCBs を吸着したバイオフィルムの摂食実験の実施が可能であると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
1. UMP 表面に形成された BF が吸着した有機汚染物質の,動物プランクトンへの生物増幅を評価する.C. vulgaris の BF を形成した,またはしない UMP に PCBs を吸着させる.これら UMP を D. magna に供試し,各 UMP の摂食速度,および D. magna に蓄積される PCBs の量を求める.生物増幅の程度に影響を及ぼすと考えられる UMP の性質(疎水性および粒径)と,D. magna に蓄積される PCBs の量に関連があるか調べる.UMP の疎水性の違いは PCBs の吸脱着に影響し,粒径の違いは D. magna による摂食速度に影響するため,PCBs の生物増幅のされやすさも影響されると考えるからである. 2. 細菌の細胞表面疎水性と有機汚染物質の吸着量の間に負の相関が生じることの理由を解明する.脂溶性(オクタノール-水分配係数)が異なるいくつかの有機汚染物質を,表面疎水性の異なる細菌に吸着させ,吸着量に及ぼす細胞表面疎水性と有機汚染物質の脂溶性の関連を明らかにする.細胞表面疎水性だけでなく,細菌の脂質含有量も測定し,吸着量との関連を考察する. 3. 細菌から原生動物への有機汚染物質の生物増幅を評価する.有機汚染物質を吸着した細菌を原生動物に摂食させ,細菌から原生動物への有機汚染物質の移行率および生物濃縮係数を求める.数種類の原生動物を用い,これらパラメータの比較・検討を行う.
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