2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of new adsorbent based on calcium carbonate and elucidation of removal mechanism of contaminants such as arsenic
Project/Area Number |
19K12388
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
稲葉 一穂 麻布大学, 生命・環境科学部, 教授 (60176401)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 鉄修飾型吸着剤 / ヒ素 / セレン / 包埋加工 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) ヒ素吸着剤の吸着条件の最適化に関しては、2019年度に実施した極低加速電圧操作電子顕微鏡(ULV-SEM)とエネルギー分散型X線分光器(EDX)による吸着剤鉄修飾層の測定データの比較考察を行った。SEM-EDXによる吸着剤断面の元素マッピングから、基材部では主としてCaが、表面層ではFeの強度分布が強く表れていること、ヒ素吸着済み吸着剤では表面層にFeと共にAsも検出され、本吸着剤によるヒ素の除去反応は鉄とヒ素による相互作用が関与していることが明らかであるが、元素マッピングに硫酸イオン由来の硫黄元素が測定されないことから、基材炭酸カルシウムへの鉄の結合は当初予測していた硫酸鉄としての関与ではなく、鉄とカルシウムとのイオン交換による鉄炭酸塩としての関与が考えられた。 (2) ヒ素吸着の効率化と安全の確保の観点から、吸着剤の物理的劣化による剥離を防ぐ方法として、アルギン酸ナトリウムゲルを用いた包埋加工についての検討を開始した。予備的な実験では樹脂の吸着能力はいくらか減少するものの、物理的劣化への対応および取り扱い性の向上については有効と考えられた。 (3) ヒ素用吸着剤を利用したセレンの回収実験を開始した。セレン汚染としては、中国で問題となっている粗悪な石炭の燃焼飛灰を土壌還元することで、含有セレンが降雨流出する問題への対策を主たる対象とした。この吸着剤によるセレンの吸着能は、最大吸着量としてはヒ素と同程度であるが、吸着平衡までの時間が長いことが明らかとなった。 (4) 炭酸カルシウム基剤に硫酸銅を反応させることで、銅修飾型吸着剤を作成した。この吸着剤を用いて、アンモニアの回収を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本吸着剤によるヒ素吸着の最適化(サブテーマ1): 2019年度に実施した、吸着剤の純水による撹拌洗浄と吸着剤表面の鉄修飾量の変化の測定から、吸着剤の鉄修飾層が機械的な衝撃に脆弱であることが判明した。そこで、水処理微生物の取り扱い性向上に広く用いられるゲル包埋加工の応用を検討した。包埋加工を施してもヒ素の吸着性は適度に維持され、粉砕された吸着剤の微細な粉末も減少したことから、本吸着剤の性能向上の可能性が示唆された。 ヒ素吸着済み吸着剤の処理処分方法(サブテーマ2): 2020年度から実施予定であったが、新型コロナウイルスの影響により、実験を担当する卒業研究生の登校に制限がかかったこと、外部機関との共同測定が行えなかったことから、進捗が遅れている。 他の汚染元素への応用および実用化の模索(総括): 本研究で検討している吸着剤の他の元素への応用については、セレンとアンモニアへの応用の検討を開始し、いくらかのデータを得ることができている。しかし、実用化に向けたネパールやインドの研究者との情報交換などは新型コロナウイルスの影響もあって進展していない。
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Strategy for Future Research Activity |
2019、2020年度に実施したサブテーマ1の結果から、吸着剤の機械的衝撃への耐久性を高める方法の検討をさらに継続する予定である。特に包埋加工処理を行った吸着剤を用いたカラム法での回収効率などについて検討していく予定である。 サブテーマ2については、サブテーマ1でヒ素を吸着させた使用済み吸着剤が集積した時点で、様々な液性の溶液への浸潤試験を開始する予定である。 なお、実用化研究に向けたネパールやインドの研究者との情報交換等は、現在のコロナの状況から見て進展は不可能と判断せざるを得ず、麻布大学で可能な基礎的な研究に特化する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの世界的な蔓延の影響で、研究予定にいくつかの影響を受けている。発表予定であった「2020環太平洋国際化学会議(PACIFICHEM2020)」(2020年12月に米国ハワイ州ホノルル市で開催予定であった)が1年延期されたために参加費と旅費に充当する予定だった金額が未使用となった。また、JFEテクノリサーチおよび国立環境研究所との共同研究も実施不可能となり、予定していた依頼分析費用などが未使用となった。 未使用額については、1年延期となった環太平洋国際化学会議がリアルとリモートのハイブリッド方式での開催となり、旅費の有無が現状では確定できないことが明らかとなった。そのため、今回はこの学会への参加は見送り、JFEテクノリサーチおよび国立環境研究所との共同測定に吸着剤表面の詳細な分析を追加するなどの計画の追加変更を加え、使用する予定である。
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