2019 Fiscal Year Research-status Report
落葉リターは湖沼の底生動物の恵みとなるか?セルロース分解と貧酸素耐性による評価
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19K12414
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
石川 俊之 滋賀大学, 教育学部, 教授 (50396313)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | セルロース分解 / 底生動物 / 湖沼 / ヨコエビ類 |
Outline of Annual Research Achievements |
水溶性セルロースを基質にしたセルロース分解酵素活性の測定をNiiyama et al(2011)の方法に準じて実施できるよう、実験室の整備を行い、シロアリ類、ゴキブリ類など既知のセルロース分解活性を持つ陸上動物をモデルに、実験系の確立を確認した。 研究の本題である湖沼の底生動物は、琵琶湖や周辺の河川から昆虫2種、甲殻類8種、扁形動物2種、貝類2種を入手した。特に、琵琶湖周辺ではヨコエビ類を5種入手することができ、種間比較を実施することとした。 ヨコエビ類は、琵琶湖外来種であるフロリダマミズヨコエビ、在来種のナリタヨコエビ、ビワカマカ、河川に生息する二ホンヨコエビ、半地上性のハマトビムシのセルロース分解酵素活性の測定を行った。その結果、活性が最も高い二ホンヨコエビ、次にフロリダマミズヨコエビ、ハマトビムシ、ナリタヨコエビと続き、ビワカマカでは分解活性が検出されなかった。このうち、ビワカマカについては、環境の地理的変異が湖よりも顕著にみられる瀬田川で調査した結果、デトリタスの集積しやすい場所では生息密度が極めて低く、ハビタット選択とセルロース分解活性の関係性を示唆された。 甲殻類では他に、等脚類(ミズムシ)、十脚類(サワガニ、テナガエビ)の活性を測定した。ミズムシは異なる二つの生息場所で測定し、片方のみセルロース分解活性が検出された。サワガニから対象とした生物中最も高いセルロース分解活性がみられた。テナガエビでは、解剖を行い部位別にセルロース分解活性を測定した。その結果腸管では活性が検出されないのに対し、肝膵臓では活性が検出された。 このほかの生物も併せて結果をまとめると、多くの生物群からセルロース分解活性を検出されたが、全く検出されない生物もみられ、既知の食性や分布する微環境との対応が推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験系を確立することができ、また、幅広い分類群においてセルロース分解活性の検出をすすめることができた。一方、野外調査によって環境中の高セルロース有機物の存在を検討するまでは至らず、次年度に予定していた内容をあらかじめ進めることはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、感染症防止のため野外調査の実施が困難になっており、計画を延長して実施する予定である。幅広い生物でセルロース分解活性が検出されたため、いくつかの生物に着目し、生息場所での有機物中のセルロース含量と分解酵素活性の関係、生物の成長に伴う食性変化と分解酵素活性の関係に着目して研究をすすめる。また、河川生態系で提唱されているように、大型動物による有機物の断片化の効果について、分解酵素活性のありなしで生態系機能の違いを明らかにするような操作実験を計画している。
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Causes of Carryover |
2つの学会大会に参加を予定していたが、秋の学会は入試業務と日程重複のため参加できなかった。春の学会は感染症のため参加できなかった。また、謝金を予定していたが2名の学生が卒業論文のテーマとして取り組み、また調査において協力者を依頼せずに実施できたため謝金を節約することができた
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