2019 Fiscal Year Research-status Report
生活史分化パターンの地域間変異に着目したサクラマス個体群の遺伝的構造の解明
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19K12418
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
北西 滋 大分大学, 理工学部, 准教授 (90552456)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 俊昭 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (30409255)
岩槻 幸雄 宮崎大学, 農学部, 教授 (60213302)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 遺伝的構造 / 生活史多型 / 分散 / マイクロサテライトDNA / 外部形態 / 空間スケール / 時間スケール |
Outline of Annual Research Achievements |
サクラマスには降海型と河川残留型の2つの生活史があり、地域ごとに生活史の割合が異なっている。本研究では、この生活史分化パターンの地域間変異に着目し、生活史分化パターンの異なる複数地域において複数年にわたり個体群の遺伝的構造の解析・比較を行うことにより、生活史が本種の遺伝的構造に与える影響を明らかにする。 研究所年度である2019年度は、現地調査によるサクラマス個体のサンプリング地点の選定とサンプリングの実施、マイクロサテライトDNA実験プロトコルの確認と野外サンプルを対象とした解析、サクラマス種群の形態調査とDNA解析の3項目を実施した。 サンプリングについては、北海道道北地域6河川および道央地域6河川、富山県3河川において、サンプリング地点の選定とサンプリングを実施し、各地点において十分な数のDNA解析用サンプル(40~55個体)を得た。マイクロサテライトDNA実験については、現所属への異動後始めての実験であり、前所属と実験・解析機器の相違による実験プロトコルや取得データの相違の可能性があったため、まず、実験プロトコルの確認とデータ解析系の確立を行い、その後野外サンプルを対象に実験を進めた。これら実験・解析系の確立は、既往のサクラマス遺伝構造解析と本研究との比較解析を行う上で必須であるとともに、今後の野外サンプルを用いた大規模解析のベースラインとなるものである。形態調査では、まず、アンケート調査などによりサクラマス種群の天然個体群の判別を行い、天然個体群と判断できる地域においてサンプリングを実施した。各個体群において、個体の外部形態記録とDNA解析用サンプルの採集を行った。今後、体色や模様と遺伝子系統の関係性などについて解析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外でのサンプリングでは、レンタカーのトラブルによる調査スケジュールの若干の遅延があったものの、天候に恵まれたこともあり、当初計画していた調査地点の選定とサンプリングを実施することができた。特に富山県では、漁業協同組合などの関連組織からの十分な協力を得られたこともあり、当初は2年程度を要すると考えていたサンプル数を採集することができた。 分子生物学実験ではプロトコルの確認と取得済みデータとの整合性の確認を行った。また、野外サンプルを用いたマイクロサテライトDNA解析に取り組んでおり、順調に実験が進展していると評価できる。また、形態調査についても、九州を中心に天然個体と判断できる複数地点においてサンプリングの実施とDNA系統を明らかなにすることができ、成果の一部については学会発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、前半は昨年採集したサンプルを対象にマイクロサテライトDNA解析を進めていく。秋以降は、昨年と同じ地点において、サクラマスのサンプリングを実施する。また、西日本を中心に、天然個体の分布調査を進め、各地点における天然個体の外部形態とDNA系統との関連性についての調査も進めていく。
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Causes of Carryover |
実験プロトコルの改良による試薬使用量の低減化によって予算を削減できたことに加え、本学所有の実験装置(シークエンサー)の故障により一定期間実験ができず、その分の試薬費および解析費が減ったことにより、初年度に支出を予定していた物品費と解析費(その他費用)に保留が生じた。これらの繰越額については、次年度の物品費およびその他として執行する予定である。
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Research Products
(1 results)