2019 Fiscal Year Research-status Report
韓国済州特別自治道における住民自治制度と住民の主体形成に関する研究
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19K12479
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
金子 満 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (10513161)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 韓国済州特別自治道 / 住民自治 / 住民自治センター / 住民自治学校 / 住民投票 / 主体形成 / 住民自治委員会 / 住民葛藤 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の初年度である今年度の研究で明らかになったのは以下の3点である。①まず韓国の地方自治制度の歴史的分析を主に済州特別自治道を中心に行った。特に高度な自治権をもつ「国際自由都市」として誕生した済州特別自治道が韓国国内におけるグローバル化における最先端の試験的場所であると同時に、これらの取り組みを国家が主導しつつも同時に住民一人一人に住民投票という形で権力を付与し、住民との同意形成をもとに開発を進めるという特殊な地方自治システムについて先行研究および現地の行政部局へのヒアリングによって明らかにした。その際、韓国の一般的自治体の特徴が、道-市-洞(日本でいう県-市-町)であり、予算編成などの権限をもつのは道-市の2階層であるが、済州特別自治道のみ1階層とし、その際スリム化した行政職員を地域住民の自治組織である「住民自治センター」に配置し、住民自治を支援するという新しいシステムを導入している様子を詳しく分析した。②国家主導のグローバル戦略を背景に外資による開発が積極的に行われつつ、一方で、住民投票権によりこれらの開発にブレーキがかかるという矛盾した状態にある事業に着目し、地域住民同士の葛藤や分断的リスクが存在することを明らかにした。③地域住民自治組織である「住民自治センター」内に設置されている「住民自治学校」に着目し、その内実について明らかにした。特に住民自治制度について地域住民がより理解をし、住民参加・参画を促す目的で実施されている様々なプログラムについて詳しく調査した。これらの成果をまとめ「九州教育学会第71回大会」にて「韓国における住民自治制度と住民の主体形成に関する研究-済州特別自治道における住民自治センターの取り組みを中心に―」というタイトルで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の前半期は、先行研究の整理および現地調査とおおむね順調に研究が進んでいたが、後半期として2月末に2回目の現地調査を実施する予定が、新型コロナウィルの関係で中止せざるを得ない状態となってしまった。本来であれば、「住民自治学校」の受講する地域住民へのヒアリングや実際の活動の場に参与する予定であったが中止となった。また、研究に必要なデータを行政機関にお願いしていたが、新型コロナウィルの対応でおわれていたため対応について延期せざるを得ない状態となった。そのため、現地調査によるヒアリングと行政機関への基礎データの収集が困難となってしまい、研究もやや遅れてしまっており、研究費も繰越申請せざるをえない状態となってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在世界的な広がりを見せている新型コロナウィルの影響により、現在、研究対象地域である韓国は、渡航中止区域となっている。新型コロナウィルがある程度収束しないかぎり、本研究を継続する事は、不可能であるといわざるを得ない。とりあえず、新型コロナウィルが落ち着くまでは、国内の先行研究の整理および韓国のWEB等で済州特別自治道の状況を把握しながら本研究の周辺を固めていく作業を実施する。また、WEBを活用したリモートリアリング調査の実施や、現地に韓国人の協力者がいるため、可能であればデータ収集を謝金として行うなどの工夫も必要であると考えるが、ある程度の研究の遅れを覚悟しなければならないと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度の前半期は、先行研究の整理および現地調査とおおむね順調に研究が進んでいたが、後半期として2月末に2回目の現地調査を実施する予定が、新型コロナウィルの関係で中止せざるを得ない状態となってしまったため、次年度使用額が生じてしまった。使用計画については、新型コロナウィルがある程度収束し、韓国への渡航中止勧告が解けない限り困難であるといわざるを得ない。渡航中止勧告が解ければ、研究の遅れを取り戻すため、当初の予定より滞在期間を延長することを考えている。また渡航中止勧告が継続するようであれば、WEBを活用したリモート調査の実施、現地の韓国人協力者への謝金という形でデータ収集や調査代行を実施などの工夫も考慮しなければならないと考えている。
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Research Products
(1 results)