2020 Fiscal Year Research-status Report
Governance of value chains and labor rights in Latin America
Project/Area Number |
19K12490
|
Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
藤井 嘉祥 摂南大学, 外国語学部, 准教授 (30625190)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | グローバル・バリューチェーン / ガバナンス / 労働人権 / 産業高度化 / 社会的高度化 / グアテマラ / メキシコ / 中米 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、グローバル・バリューチェーン(GVC)において発生する労働人権の侵害の問題について、グアテマラとメキシコの事例から①アパレル産業と自動車産業のGVC統治構造、②企業・国家・NGO・労組・国際機関の労働人権をめぐる取り組みと利害関係、②企業の労使関係の3領域を分析し、労働人権の保障に基づくGVCの持続的発展のモデルを提示することを目的としている。 2020年度は前年度に得られた成果、つまりサプライヤー企業における労働基準の法令順守の活動が第三者機関への委託ではなく自社に内部化する傾向を踏まえて、上記①と②に関しての分析を進めた。①では両産業の人権問題に関与するアクターの特定を行った。アパレル工場では労組の結成が困難であり、NGOと多国籍企業などで作る第三者国際監視団体の役割が大きい。自動車産業では労組の役割が大きく、労使関係を軸に労働基準の交渉が行われる。②では諸アクターの労働人権の監視活動および是正への関与について文献資料と国際人権NGOが公表する告発事例の分析を行った。アパレル産業に関してはNGOと第三者監視団体と企業というGVCの内と外のアクターの利害対立が顕著であり、自動車産業では労使というGVC内部のアクターの関係によって労働人権の保障が左右されることが明らかになった。 以上の研究実績には次の意義がある。法令順守が企業活動の必須要件として途上国にも浸透しつつあるなかで、法令順守活動を企業が内部化することによってGVCの外部アクターの関与が薄れる傾向が指摘できる。GVCにおける労働実態がより不可視化されており、新たな監視・評価体制の構築が不可欠になってきているといえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は以上のような成果を得ることができたが、分析領域③の工場の労使関係の構造と変化および研究成果の公表について進捗が遅れている。Covid-19の世界的拡大により本研究の鍵である現地での聞き取り調査が2020年以降実施できない状況であり、また遠隔授業への対応を含めて本務校での業務の増加があったことも影響して総じて研究の進捗は遅れていることは否めない。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は数量的なデータに現れにくいGVCにおける諸アクターの労働人権の解釈や人権の侵害と保障の構造的なメカニズムの解明およびそれらが企業活動に与える影響を明らかにすることを目指している。したがって現地調査が最もカギになるため、海外渡航が可能になった段階で速やかに着手できるように準備を進める。また同時に、現地の関係者とICTツールを介した聞き取り調査ができるように手配を進める。併せて、本研究が対象とするアパレル産業と自動車産業以外の産業の労働実態に関する数量的データを収集・分析し、不足を補うよう努める。
|
Causes of Carryover |
(理由)2020年8月と2021年3月に予定していた現地調査がCovid-19に伴い実施できなかったため、予算の大半を使用することができなかった。海外シンクタンクのデータベースの使用を予定していたが、非常に高額であり、かつデータの内容が不透明であるため費用対効果の点で疑問があるため取りやめた。これらの理由から未使用額が発生することになった。 (使用計画)まず何より現地調査の実施を最優先に考慮し、渡航可能な状況になれば速やかに着手し、予算を充当する。渡航不可能な場合は、ICTツールによる聞き取りを進める予定であり、その環境整備および調査方法における文献資料と統計データへの依存度が高まることが予想されるため、資料収集と統計解析ソフトに支出する。
|