2021 Fiscal Year Research-status Report
Governance of value chains and labor rights in Latin America
Project/Area Number |
19K12490
|
Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
藤井 嘉祥 摂南大学, 外国語学部, 准教授 (30625190)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | グローバル・バリュー・チェーン / ガバナンス / 労働人権 / 産業高度化 / 社会的高度化 / グアテマラ / メキシコ / 中米 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、グローバル・バリューチェーン(GVC)における途上国の経済発展を労働人権の視角から分析し、「社会基盤の強化に基づくGVCの持続的発展」の分析枠組みを提示することを目的としている。グアテマラのアパレル産業とメキシコの自動車産業を事例として、①GVCの統治構造、②企業・国家・NGO・労組・国際機関の労働人権に対する取り組みと利害関係、③企業の労使関係の3つの領域を分析する。 2020年度までに、(1)GVCの統治構造における労働基準遵守の監視活動の自社内部化の深化、(2)アクター間の関係については、アパレル産業におけるGVCの内部アクターと外部アクター(NGO)の対立の深化と自動車産業における経営と事業所内労組の内部アクター間の交渉の閉鎖性の2点が明らかとなった。 以上の知見を踏まえ、2021年度は労働人権のGVCへの組み込み方の違いを明らかにするために、国際的な人権レジームが国内的な人権制度に与える影響の分析に取り組んだ。これによりILOの中核的労働基準(1998年)や国連人権理事会の「ビジネスと人権に関する指導原則」(2011年)によって企業の人権擁護義務が国際基準化される一方で、GVCにおいては価格競争が優先され、国内的には労働人権の侵害が継続していることが明らかになった。 この成果には次のような意義がある。国際レベルのフォーマルな制度として国際労働基準が途上国に浸透する際に、国内的なインフォーマルな人権観念および慣習からの抵抗を受け、国際基準での労働人権の侵害が隠蔽されつつ多発することを示唆している。したがって、GVCにおける産業発展を推進するには、国内的なインフォーマルな制度が国際基準に即して変化する必要がある。国際基準がいかに国内のインフォーマルな制度を変化させるインセンティブを与えられるか、その仕組みの構築の重要性を明らかにした点が成果といえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度までに上述のような成果が手元では得られているが、2020年のコロナ禍以降の本務校における業務の急増および親の在宅介護が佳境にあったことから、公表に至っていない。また本研究は現地における直接的な聞き取り調査を軸に遂行するものであるが、本務校においてコロナ禍による海外渡航制限が解除されていない。オンラインでの聞き取りに手法を切り替えて調査を実施しているが、多様なアクターからの聞き取りが得られていない。引き続き遠隔での聞き取りを重ね、客観的事実を蓄積したのちに、早期に成果を公表するよう努める。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究はGVCに参加する途上国の持続的産業発展の問題について、産業高度化と労働人権の保障という社会的高度化を両立させる持続的なGVCの発展モデルの構築を目指している。そのための手法としてフィールドワークを通じてGVCに関与するアクターの労働人権の解釈といったミクロな事例を収集し、それに基づいて労働現場における人権侵害の構造的メカニズムとそれが企業活動および国の経済発展に与える影響を明らかにすることを志向している。現在まで現地調査は2019年度の一度のみであるため、海外出張が解禁され次第速やかに着手できるように準備を進める。同時にオンラインでの聞き取りを可能な限り進める。また労働人権に関する数量的研究や統計資料も援用して不足を補う方策を取る。
|
Causes of Carryover |
(理由)2021年8月と2022年3月に予定していた現地調査がコロナ禍による海外出張の制限により実施できなかったため、旅費として計上していた予算の大半を使用できなかった。前年度に引き続き新規に海外シンクタンクのデータベースのコンテンツを調べ、活用を検討したが、費用対効果の観点から断念した。これらの理由により未使用額が発生することとなった。 (使用計画)現地調査の実施にかかる費用を最優先の使途とし、渡航可能な状況になれば速やかに着手し、予算を充当する。引き続き人権NGO及び海外シンクタンクの人権関連データベースを精査し、渡航不可能な場合にはデータベース利用の費用および統計解析ソフトに支出する。
|