2020 Fiscal Year Research-status Report
韓国の知日派知識人をめぐるオーラルヒストリーを基礎とした学際的研究
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19K12508
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
小針 進 静岡県立大学, 国際関係学部, 教授 (40295548)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱田 陽 帝京大学, 文学部, 教授 (70389857)
小倉 紀蔵 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (80287036)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日韓関係 / 知日派 / 日本文化論 / 韓国文化 / 韓国社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
韓国には、日本の学問に接して、日本文化に精通し、日本語が達者な知日派知識人が存在してきた。「反日」イメージがある国のいっぽうで、韓国は他のどの外国よりも、知日派知識人の層が厚かったと言ってよいであろう。 その代表格のひとりが『「縮み」志向の日本人』 の著者としても著名な初代文化部長官の李御寧(イ・オリョン)氏である。これまでの同氏の歩みと思考をオーラルヒストリー・メソッドによって記録するのが本プロジェクトであり、2019年度はソウルを3回訪問して、同氏へのインタビューを実施してきた。幼い頃の言語生活や読書、植民地時代の記憶と学校生活、1945年8月15日、米軍政期、朝鮮戦争期、ソウル大学時代の生活、文芸上の論争、梨花女子大での教職生活、東京や京都での在外研究生活、『「縮み」志向の日本人』についてなど、幅広い内容を聴取することができた。 2020年度はインタビューの音源をもとにして、信頼性のある反訳(音声データの起こしの速記)の専門家と連携しながら、これまでの記録を反訳する第一段階の作業は行ったところである。ただし、新型コロナウイルスの感染拡大により、代表者だけでその校閲と確認作業の実施にとどまった(発言と関係する文献、新聞記事等との照らし合わせる作業など)。予定していた、他のメンバーとの共同作業、さらには話者と接触しながらの校閲作業に関しては、先送りする結果となった。 李御寧氏は日韓両国の知識人社会で幅広い人脈を持ってきた人物として知られる。日本からどのような影響を受け、逆に日本へどのような影響を与え、日本側の知識人とどのようなつながりがあり、時代や社会をどう眺めてきたかの検討は、ディシプリンが異なる他のメンバーとの検討作業が不可欠である。今後、哲学、文学、社会学、政治学、歴史学など、学際的な新たな視座を提供できる検討を進めていく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
オーラルヒストリー実施分の記録化にかかわる諸作業がやや遅れ、話者(李御寧氏)への確認作業および追加インタビューができない状態である。いずれも、新型コロナウイルスの感染拡大の影響である。本務先の大学で諸対応にあたる必要があることから、前者の時間が十分にとれなかったほか、県を跨ぐ移動が難しいため、他のメンバーとの共同作業も留保せざるを得なかった。また、話者が住む韓国への渡航も事実上難しいため、後者の作業もできないでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年は、他のメンバーとの連携をしながら、オーラルヒストリー実施分の記録(反訳)への確認・校閲作業を本格化することを中心とする。李御寧氏側へ記録を渡して、確認・校閲する作業、補足的な追加インタビュー、報告書のため記録案への最終了解を得たい。話者は高齢であるため、対面によるやり取りが必修であり、新型コロナウイルスの感染拡大が長期化し、韓国への渡航が困難な場合は、計画の変更も行いたい。年内の渡航が可能であれば、これらの作業を行い、3月までに報告書を刊行させたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響のため、オーラルヒストリー記録の話者(李御寧氏)への訪問(韓国への渡航)、オーラルヒストリー実施分の記録化にかかわるメンバーとの共同作業(県を跨ぐ移動)がそれぞれ不可能となり、複数の計画を先送りしたことによる。
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Research Products
(1 results)