2023 Fiscal Year Annual Research Report
複合現実体験としての聖地巡礼:ルルドをはじめとする19世紀西欧における虚実の融合
Project/Area Number |
19K12588
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
石橋 正孝 立教大学, 観光学部, 准教授 (70725811)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽生 敦子 白百合女子大学, 言語・文学研究センター, 研究員 (90744780)
平賀 美奈子 (河野美奈子) 立教大学, 外国語教育研究センター, 准教授 (20795570)
舛谷 鋭 立教大学, 観光学部, 教授 (90277806)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 観光 / 巡礼 / ゲニウス・ロキ / コンテンツ・ツーリズム / 文学散歩 / 複合現実 / 聖母出現 / 観光文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、聖母出現によってカトリック有数の聖地となったフランスのルルド、シャーロック・ホームズに代表される「キャラクター」をめぐってファンが行う「聖地巡礼」、そして19世紀の英米における心霊主義を比較対照することによって、19世紀以後の大衆消費社会に特有の虚実融合現象に基づく特殊な共同体として観光を再定義するとともに、そこでの想像力の役割を解明することを目指している。当該年度の研究実績の概要は、主に以下の3点である。 ①観光における想像力の問題を検討する「観光文学研究会」を引き続き11回にわたって開催し、日本文学研究者、中国文学研究者、中東地域研究者、社会学者らを招いて発表を依頼し、意見交換を行った。とりわけ8月26日と27日の二日間にわたって沖縄文学における拡張現実的側面が孕む政治性を考察できたことが特筆される。 ②研究代表者が立教大学観光学部の機関誌「RT」第3号の責任編集者を務め、特集「観光文学」のための座談会を開催し、スイスのシャーロック・ホームズ巡礼に関する記事を執筆、研究分担者3名も座談会参加や記事執筆を行った。 ③国内における「コピー版ルルド」の研究も進捗し、研究分担者が新たに論文を1本発表したほか、ルルドとの類似事例を検討することで「スピリチュアル系観光地」というより広い枠組みの設定につなげた。 2年延長したため、5年にわたる共同研究となった。コロナ禍のために海外での現地調査が十分に行えなかった代わりに、多くの国内研究者との学術交流を積極的に進め、観光と文学の接点として想像力の役割を再考する「観光文学」という新たな領域の創成を通して、当初の問題設定の一般化をある程度行いえたことは大きな成果といえる。
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