2022 Fiscal Year Research-status Report
聖地研究 甲子園ー聖地の生成と象徴性再生産プロセスに対する住民評価の研究
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19K12597
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
森田 雅子 武庫川女子大学, 生活環境学部, 教授 (40249503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒田 智子 武庫川女子大学短期大学部, 生活造形学科, 教授 (10223968)
三宅 正弘 武庫川女子大学, 生活環境学部, 准教授 (50335783)
大井 佐和乃 武庫川女子大学, 生活環境学部, 助手 (60779221) [Withdrawn]
加登 遼 大阪公立大学, 大学院生活科学研究科, 助教 (50849396) [Withdrawn]
松山 聖央 武庫川女子大学, 生活美学研究所, 嘱託助手 (10885205)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 聖地 / 景観 / 住民評価 / 象徴性再生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
目的:空間の記憶の共創という点に着目した。甲子園という聖地の生成と象徴性再生産プロセス、例えば若人の聖戦というナラティブに対して住民評価はかかわっているといえるのか。 方法:2020年1-9月地域配達指定郵便で6640世帯に発送し、後納受取人払いで2021年2月までに1870件回収した。通称「甲子園番町街」(甲子園一番町~甲子園九番町)は甲子園球場竣工大正十三年(1924年)まもない時期に、直近東側の隣接地に旧鳴尾村(現兵庫県西宮市)で開発された、住宅街である。 30項目の設問のアンケートで、21の自由記述・記入欄を設けた。 設問内容はそれぞれ甲子園地域の施設(問1~9)、日常生活・住環境(問10~19)、自身(問20~30)、移住(問26~27)地域に対する想い(問28 心理測定的手法)、生活行動(問29 ~30)となる。アンケート巻末に締めくくりとして自由記述欄を配置した。単純集計以外に因子分析、テキストマイニング(自由記述、野球関連、生活行動)の手法も併用した。コロナ禍で可能な範囲でフィードバックとインタビューを行った。アンケート集計結果を自治会、ステイクホルダー関係者中心に配布し、ポスター展示(甲子園球場前大型商業施設)などを行った。なお、全ての回収票は受け入れ番号-番町アルファベット-アンケート通し番号で特定できる(1429-D03779)。 結果:地域住民は好むと好まざるとモニュメントと自宅を回遊する生活行動で日常が過ぎていく。そこでアンケートの書き込みを身体感覚・生活感の言語化ととらえ、景観をアイデンティティの一部、身体≦ボディ・イメージ≦スペース・イメージ≦地域と考えるに至った。景観を身体を包摂する、住居、生活領域、地域の各種特性を含めた印象、経験知、想像の総和特性とし、聖地の生成と象徴性再生産プロセスの描出に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していた計画のうち、主に5件実施した。①アンケート発送、回収、整理、入力確認:2020年1-9月地域配達指定郵便で6640世帯に発送し、後納受取人払いで2021年2月までに1870件回収した。全ての回収票は受け入れ番号-番町アルファベット-アンケート通し番号で特定できる(例:1429-D03779)。②詳細分析の実施:30項目の設問回答分析においては、単純集計以外に因子分析、テキストマイニング(自由記述、野球関連、生活行動)の手法も併用した。③フィードバックとインタビュー:コロナ禍で可能な範囲で行った。該当地域自治会関係者中心に平均1時間程度で、12名インタビューを行った。(a).アンケート集計結果報告書34頁を作成し配布した。冊子を西宮市長、市政策局局長、市民局局長、自治会、阪神電鉄ステイクホルダー関係者中心に配布し、HP告知、PDF アップロードを行った。(b).甲子園球場前大型商業施設ららぽるとポスター展示などを行った。④2022年11月武庫川女子大学生活美学研究所紀要に投稿論文を掲載した。甲子園という地名の郷土史的意義、甲子園球場・高校野球の歴史とナラティブの生成の過程を詳説し、アンケート集計に関しては地域の景観評価、地域に対する想いを緻密に分析・考察した。⑤「第7回武庫川女子大学 研究成果の社会還元促進に関する発表会 2023年2月15日」で報告。報告集に報告を掲載(21-27頁)した。アンケート回答の21の記入欄、自由記述欄、欄外の書き込みを詳細に分析し、解説した。
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Strategy for Future Research Activity |
次の3点を中心に研究を進め、成果について学会発表・論文投稿・著作刊行を行う。 ①地元の野球ファンの役割検証アンケートの地域に対する想い(問28)を詳しくクロス集計すると肯定的な傾向に熱心なファン層が核となっている可能性が示唆された。球場利用者でなくとも景観評価は肯定的であるが、地域に対する想いでは野球ファン(高頻度観戦者)がより高い。結果が示唆するのは、地域住民の聖地ナラティブに対する受容とメディアによる聖地性の強化であると考える。高校野球や甲子園を題材にしたマンガ、アニメが生成するナラティブがあり、全国津々浦々から若人が恒例のトーナメントを駆け抜けてくる。そこではさまざまな出身母体のドラマが喝采を浴びる。しかし地域住民がナラティブに新たに関わる動向は見えてこない。改めて関連文献調査・フィールドワーク調査を実施し、アンケートの書き込みや自由記述欄を見直し、甲子園球場に対する地元反響の現象検証を行う。 ②インタビュー:地域自治会関係者に平均1時間程度で、12名インタビューを行った。甲子園球場からの物理的距離による球場現象感度の違い、スポーツと実生活の乖離、日常生活への埋没が読み取れた。引き続きインタビューを進め、20名以上程度目標に確保する。 ③空間の記憶の共創について:景観とはある地域の持つ特性の総和、身体の延長であると同時に身体を包摂する空間で、地域とは地点・地域に名前が付けられることにより初めて特定できる。記憶・イメージ・想像は共創され付与される。アンケートの書き込みは地域住民評価の身体感覚と生活感に根ざす言語化である。千差万別な喜怒哀楽の要素、イメージや認識のバトルであり、生活感共有・意味生成・共創への意志の発露であることを描出呈示する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため調査研究が滞った。今期は次の3点を中心に順次研究を進め、研究成果について学会発表・論文投稿・著作刊行を行う。①地元の野球ファンの役割検証:野球チームの活動,球場観戦者数を分析する。②インタビュー:地域自治会関係者とのこれまでのインタビュー内容書き起こし、分析、考察する。③空間の記憶の共創について:理論的な要綱提案:言語を通じての住環境ミラーリングについて、アンケートの書き込みなどを分析し、理論的枠組について提案する。
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