2020 Fiscal Year Research-status Report
クォータ制導入による女性の政治参画とジェンダー秩序の変容:ネパールを事例に
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19K12601
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
幅崎 麻紀子 埼玉大学, 研究機構, 准教授 (00401430)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 いづみ 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (10846314)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ジェンダー・クォータ / 自己表象 / ジェンダー役割 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、コロナの影響により現地を訪問することができなくなったため、昨年度に収集したヒアリングデータのテープ起こしと翻訳を実施するとともに、クォータ制についての文献調査を行った。また、文献資料の収集及びSNSを利用して、自己表象の戦略について検討した。 本年度の研究を通して、女性政治家の交流の状況及び宗教的マイノリティの女性の政治参画について把握することができた。ネパール南部C郡B市は、ネパール共産党の女性が市長を務めるが、地域を越えた女性政治家の交流が活発に行われている。また、近隣のK市ではムスリムの女性が副市長を務め、S自治体ではムスリムの女性が市会議員を務めるなど、女性の中でもマイノリティの女性達の政治セクターへの参画が見られることがわかった。 女性政治家の自己表象についても調査研究を行った。すなわち、フェイスブック等のSNSを活用し、政治活動を含め、日々の動向や主張を発信しているが、その広報戦略には特徴がみられる。議会の様子、都市開発計画、学校の式典への参加や地域活動の表彰、コロナ対応等の市長としての活動に加え、母や娘としての姿をSNS上で公開していることが特徴的である。例えば、母の日に高齢の母親を訪問する姿、両親の結婚記念日を祝う姿、子どもの誕生日を祝う姿など、家族の中の女性の役割を担っている姿がアップされている。 政治家としての公的な活動の一方で、私的領域における女性役割を遂行する姿を積極的に発信していることがわかった。その背景には、女性の政治家にとって、政治活動に加えて、私的領域における女性役割の表象もまた政治家として発信することが重要であるとの認識を持っていることが窺える。母、娘としての自己表象については、引き続きデータを収集し、分析を重ねていく予定とともに、妻や嫁としての役割が表象されない理由を考察する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、ネパール南部C郡と中央部L郡を中心に、複数の自治体を訪問し、男性市長及び女性市長に聞き取り調査を実施する予定で準備を行っていた。しかしながら、2020年3月以降、コロナの影響により、聞き取り調査のためにネパールを訪問することができなくなってしまった。そのため、調査計画を変更し、現状にて実施できることを先に行うこととし、現地調査については、状況が改善してから実施することとした。 具体的には、昨年度に収集したヒアリングデータのテープ起こしと翻訳を実施するとともに、SNSを駆使して、これまでに築いた人的ネットワークのフォローを行い、コロナの状況改善後すぐに現地調査に入ることができるよう準備活動を行っていた。また、政治セクターへの女性の進出についての文献資料収集と女性政治家の広報戦略データを収集し、そこに表現されるジェンダー化された広報戦略について検討を行い、調査研究を進めているものの、聞き取り調査によるデータ収集は遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、引き続き、SNSを用いて女性政治家の自己表象についてのデータを収集するとともに、そのデータ分析を行う。また、コロナの状況が改善して現地調査が可能になった際にすぐに調査に出かけることができるよう、政治家及び一般の人々への聞き取り調査を行う準備を行う。また、人々のジェンダーをめぐる価値観についての質問紙調査を実施するため、質問内容を精査し、翻訳作業を行う。 しかしながら、現地調査の実施が不可能な場合も想定し、現地協力者と密にコミュニケーションを取り、現地調査が不可能な場合にもデータ収集が可能な方法を検討する。さらに、これまでのデータを分析し、その一部を研究会で発表し、論文執筆の準備を開始する。
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Causes of Carryover |
現地調査を複数回行うことを計画していたが、コロナ禍により、現地訪問調査を実施することができなくなってしまった。そのため、旅費及び現地協力者への謝金が発生しなかったことが、次年度使用額が生じた理由である。 本年度は、現地協力者と連絡を取りながら、現地調査を行う予定であり、そのための旅費と謝金として支出する予定である。また、現地調査が難しい場合は、現地協力者の協力を得て質問紙調査を行うなど、柔軟に状況に応じて調査を継続する。そのための経費として支出する。
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