2021 Fiscal Year Research-status Report
クォータ制導入による女性の政治参画とジェンダー秩序の変容:ネパールを事例に
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19K12601
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
幅崎 麻紀子 埼玉大学, 研究機構, 准教授 (00401430)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 いづみ 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (10846314)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジェンダー・クォータ / 自己表象 / ジェンダー役割 / 選挙運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、コロナ禍以前に収集したヒアリングデータの分析を進めるとともに、文献及びSNSを利用して、女性政治家の広報活動と自己表象について、ネパール南部C郡B市にて市長を務めるネパール共産党の女性に焦点をあてて研究を継続した。 同市長のR氏は、SNSを活用し、市長として各地を訪問する様子(病院建設現場訪問、学校訪問、地域行事への参加等)、政党の集会への参加、要人(中央政府の国会議員等)訪問の様子等、日々の政治活動を毎日1回程度発信している。また、市長としての活動に加え、母の日や子どもの誕生日に、高齢の母親や子どもへの思いを写真とともに公開している。 さらに、R氏は市長として2期目を目指し立候補を表明しており、今年度はその動きに焦点を当てて資料収集を行った。R氏の広報活動は、投票日の2か月前にはSNSの発信が激増している。選挙運動開始以前は、日に1回程度、市長としての活動の様子を伝えるものであったが、選挙期間中は日に5回以上の発信を行っている。特に、「女性」を意識した活動が増加し、女性の貧困や女性の経済的自立に向けた活動に積極的に関わっている様子が見られた。 選挙運動では、R氏が女性であり、母親、娘であることを積極的に表象しており、また、支援者も「女性」という属性を積極的にPRのための「資源」として用いていた。女性グループの集会では、「母親、姉妹の願い、市長には、発展を促す女性の市長を」とのスローガンを掲げてラリーを行っている。 R氏の選挙活動を通じて、政治家として活動をする女性は、私的領域における女性役割を遂行する姿を積極的に発信している姿を確認できた。また、女性であることを前面に出し、母親であり、姉妹であり、娘であるアイデンティティにより支持を訴え、有権者との疑似家族的な繋がりを積極的に築きながら選挙活動を進めていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでにネパール南部C郡と中央部L郡を中心に、複数の自治体を訪問し、男性市長及び女性市長に聞き取り調査を実施する予定で準備を行っていた。しかしながら、コロナによる緊急事態宣のため、現地を訪問することができなくなってしまった。そのため、調査計画を変更し、現状にて実施可能なSNSを利用した調査を行った。 具体的には、これまでのヒアリングデータの分析を行うとともに、SNSによる公開情報をデータとして収集した。また、状況改善後すぐに現地調査に入ることができるよう準備活動を行った。文献資料と広報資料を用いて、女性政治家の広報戦略についての調査研究は進んでいるが、聞き取り調査によるデータ収集は遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、引き続き、SNSによる女性政治家の自己表象についてのデータ収集を継続するとともに、そのデータ分析を行う。特に、統一地方選挙の結果により、市長・副市長・議員の入れ替わりが見られるため、選挙活動及び選挙結果に留意しながら、研究を継続する。2022年度は現地にて聞き取り調査を実施する予定である。政治活動における母・娘・姉妹としての表象について、引き続きデータを収集し、分析を重ねていくとともに、妻や嫁としての役割が表象されない理由の考察を続ける予定である。また、これまでのデータを分析し、その一部を研究会で発表し、論文執筆を開始する。
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Causes of Carryover |
現地調査を計画していたが、コロナによる緊急事態宣言のため、現地訪問調査を実施することができなかった。次年度使用が生じた理由は、旅費及び現地協力者への謝金が発生しなかったことによるものである。 最終年度は、現地協力者の協力のもと、複数回現地調査を行う計画であり、そのための旅費と謝金として支出する。また、学会での発表のための経費として支出する。
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Research Products
(5 results)