2022 Fiscal Year Research-status Report
文理融合型学際領域の形成に関する構造分析: 図書館情報学を事例とした実証研究
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19K12702
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
宮田 洋輔 慶應義塾大学, 文学部(三田), 助教 (90568081)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 図書館情報学 / 計量書誌学 / 科学社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,学術論文における「描出」(inscriptions)の概念に着目して,科学的な学問としての図書館情報学分野の形成過程を分析した。描出とは,科学社会学者のラトゥールによる概念で,学術論文の中のグラフ・表・写真などであり,科学活動の痕跡を示すものとされている。図書館情報学分野の形成過程を見るために,分野の主要な学術雑誌であるJournal of the Association for Information Science and Technology(及びその継続前誌)に掲載された論文を通じて基に分析した。対象誌について,1956年から2016年まで10年ごとの7期に分けて50論ずつを抽出した。計350件の論文をサンプルとして,学術論文中に使用される描出に関する通時的な内容分析を行った。調査の結果,描出を使用する論文の比率は年とともに増加し,1990年代以降はほとんどの論文でなんらかの描出が使用されていた。また初期には写真や実物を見せるための描出の使用が多かったのに対して,時代とともにグラフと表のようなデータの視覚化・要約のための描出の使用が増えていくことが分かった。ほかの雑誌も分析することで,より一般的な傾向が得られると考えている。このように,学術論文における描出の使用を通時的に分析することで,学問分野が科学として成熟していく様子を見ることができた。 また,前年度に作成した三田図書館・情報学会研究大会での学会発表に関するデータベースについて,実践女子大学図書館伊藤民雄氏の協力を得てBIBLIS-PLUSに収録して一般公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データの作成等に時間がかかったものの,「描出」の概念を使用することで新たな観点から学問分野の形成過程を分析することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
科学社会学における「描出」の概念を用いることで,学術論文の形式化の観点から学問としての形成過程を分析することができた。今後は,Journal of the Association for Information Science and Technology以外の図書館情報学分野の主要雑誌に掲載された学術論文も検討し分析対象を増やすこととともに,これまで取り組んできた論文のトピックや引用文献,また著者の学問的背景などのその他の観点を組み合わせることによってより詳細に,科学的な学問としての形跡過程を分析したいと考えている。
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Causes of Carryover |
調査分析に使用するデータを所属機関で利用できるものと自前で作成したもので賄えているため,データ利用に関する予算の使用が抑えられている。また国外への出張旅費の支出がないことなどからも,助成金の使用が抑えられており繰越が生じている。データのバックアップ等に関わる費用や研究成果の発表に関わる費用などの使用を計画している。
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Research Products
(1 results)