2023 Fiscal Year Research-status Report
文理融合型学際領域の形成に関する構造分析: 図書館情報学を事例とした実証研究
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19K12702
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
宮田 洋輔 慶應義塾大学, 文学部(三田), 助教 (90568081)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 図書館情報学 / 計量書誌学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,図書館情報学分野の研究における「破壊性」(disruptiveness)に着目して,通時的な分析を行った。破壊性とは,パラダイムシフトに代表されるように,変革的な研究の登場によって,それまでの知識の構造が破壊され,利用されなくなっていくことを意味している。Funk & Owen-Smith(2017)が,特許がもつ引用ネットワークを用いて,直感的に理解されていた破壊性を「破壊指数」(disruption index)として定式化した。彼らの研究以降,計量書誌学研究において破壊指数を用いた研究が盛んに行われていることを受けて,破壊指数を図書館情報学分野の研究に適用し,分野の変化について分析した。オープンな引用文献索引であるOpenAlex から,図書館情報学分野の主要雑誌6誌に掲載された論文の情報15,374件を取得し,収録された引用情報を用いて破壊指数を算出した。雑誌,年代,著者数の観点から,図書館情報学分野の研究における破壊性の傾向を分析し,1)破壊指数は全体として0付近に集中しており大きく外れた値はごく一部であること,2)雑誌による破壊指数の相違,3)先行研究での傾向と同様に,図書館情報学分野でも破壊指数は年代とともに下がり,次第に0付近に収束していること,4)著者数が少ない論文の方が,破壊指数が高い傾向,5)破壊指数の経時的変化と雑誌との関係を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
破壊指数を用いることで,図書館情報学分野の形成過程における「破壊性」の変化について明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
図書館情報学分野における主要雑誌以外のより広範な雑誌に掲載された論文のデータも合わせて取得しており,これらを加えて分析することで,図書館学と情報学の相違などより深い洞察が得ることが期待できる。また,トピック分析との組み合わせや,個別の論文や著者に対する分析,前年度に行った「描出」との関連の分析なども加えることで,学問分野の形成や成熟の過程をより詳細に明らかにできると考えている。
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Causes of Carryover |
計量書誌学分野の動向を踏まえて,オープンに利用できる引用文献データベースからデータを取得したことで,データ利用や作成に関わる予算が抑えられている。また国外への出張旅費の支出がなかったことからも,助成金の使用が抑えられている。今年度は,研究成果の発表に関わる費用などでの使用を計画している。
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Research Products
(1 results)