2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of early-stage cancer detection method and radiotherapy using ultra-small gold nanoparticles
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19K12749
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
北村 成史 東北大学, 医学系研究科, 講師 (50624912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 孝宣 東北大学, 医学系研究科, 教授 (00292318)
多田 寛 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (50436127)
高野 真由美 東北大学, 医学系研究科, 助教 (60806298)
権田 幸祐 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80375435)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 金ナノ粒子 / CTイメージング / CT造影剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
合成した直径約3ナノメートルの極小金ナノ粒子について、酸化鉄ナノ粒子の表面に導入を試みたが、十分な量の結合が得られず、想定よりも大きな凝集塊となる問題が生じた。無機ナノ粒子表面では反応点が非常に多いため、表面に結合する量を再現性良く制御するにはさらなる検討が必要であることがわかった。そこで、まずはより確実に複合体ナノ粒子を作製できる手法を用い、複合体の有効性を検証することを目標とした。アミド結合を介した共有結合で安定したナノ粒子を作製するため、タンパク質を足場材料として極小金ナノ粒子を凝集させ、その生体内での安定性と造影効果を確認する方向に軌道修正を行った。まずは生理学的条件で安定して分散させられることがわかっている還元型グルタチオンで極小金ナノ粒子の表面をコーティングした。得られた極小金ナノ粒子表面のグルタチオン分子のカルボン酸を利用して、タンパク質のアミノ基と脱水縮合反応により、分子量80kDaのタンパク質ラクトフェリンの表面に3~4個の金ナノ粒子を結合した約20ナノメートルの複合体ナノ粒子を作製した。得られた複合体ナノ粒子は、生理学的イオン濃度の水中で安定に分散し、培養細胞に作用させても毒性を示さないことが示された。また、この金ナノ粒子分散液を担がんマウスの静脈中に導入し、その血中滞留性と毒性についても調べた。CTイメージングによる解析の結果、得られたナノ粒子はマウス血中において1~3時間維持されることが示された。また、この金ナノ粒子を造影剤として利用することで腫瘍中の微小な血管を描出できることがわかった。また、導入後に数時間で排出されるため、腫瘍中に残留することが従来の金ナノ粒子造影剤よりも少なく、追加で造影剤を繰り返し導入することで、同一の血管を数日にわたって継続して観察することが可能であった。以上の成果は、英語原著論文として投稿し、採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的である、酸化鉄ナノ粒子の表面に極小金ナノ粒子を結合させる複合体の設計は、現時点では十分な再現性をもって安定した粒子を得るには至らなかった。しかし、タンパク質を足場材料とする方向に軌道修正し、まずは複合体ナノ粒子というアイデアの有効性を検証した結果、マウスモデルを用いた動物実験において十分な有効性を示すことができた。今後は、別のタンパク質を用いてこの手法の汎用性と応用を検討するとともに、無機ナノ粒子表面に結合する量を制御する方法について、引き続き検討を行う予定である。すでに、複合体ナノ粒子という設計思想の有効性は示されているため、酸化鉄ナノ粒子を用いた複合体が首尾よく合成できれば、同様の有効性が期待できる。また、タンパク質の場合と異なり、酸化鉄は肝臓や脾臓で分解されることが知られている材料であるため、その挙動の差異を元に、目的に合わせた粒子の選択を行うことができるかもしれない。さらに、酸化鉄ナノ粒子は、MRIにおけるT2協調造影剤としても利用可能であることから、CTイメージングとMRIの複数のモダリティで血管構造や腫瘍での集積効果などの検証を行うことができると期待される。すでにタンパク質を用いた複合体で一定の結果が得られたことで、最後の1年間は、無機ナノ粒子の複合体を完成させることに多くの力を注ぐことができるため、本研究は加速すると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
酸化鉄ナノ粒子の表面に、極小金ナノ粒子を結合するにあたり、結合する粒子の量を制御することが困難であった理由の一つとして、酸化鉄ナノ粒子、極小金ナノ粒子共に反応点が非常に多く、混合する濃度条件を変えるのみではうまく複合体を制御することができなかった。特に、極小金ナノ粒子の表面のカルボン酸は、鉄イオンのような2価の金属と強く相互作用するため、この量が多すぎることが問題と考えている。そこで、今年度の方針としては、極小金ナノ粒子の表面をカルボン酸源であるメルカプトプロピオン酸のみでコーティングするのではなく、メルカプトプロピオン酸に対して等量以上のメルカプトエタノールを混合し、極小金ナノ粒子表面のカルボン酸分子の量を1~2個程度、もしくは3~4個になるようにコントロールし、多点結合による凝集塊の形成を抑制することを考えている。すでに、予備的な検討により、メルカプトエタノールの混合によって金ナノ粒子表面に導入するカルボン酸の量を変化させられることはわかっているので、詳細な濃度条件の検討を行い、最適な導入量を割り出すことを最初の計画としている。カルボン酸量の最適解が得られたのちには、酸化鉄ナノ粒子の表面に計算上は8~10個程度の極小金ナノ粒子が導入されることが想定されるため、タンパク質を足場として作製した複合金ナノ粒子よりも2~3倍程度高いX線吸収能が得られると予想される。この金ナノ粒子の血中での安定性、滞留性、毒性については、まずは培養細胞を用いたin vitroの実験で確認し、十分有効であることが示されれば、速やかにマウスを用いた動物実験に移行し、CTイメージングによって担がんマウスの腫瘍血管を造影するところまですすめることを目標としている。また、それと同時にMRIによる造影を行い、両者の造影効果の比較も行いたい。
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Causes of Carryover |
進捗状況の欄でも述べた通り、令和2年度に予定していた無機ナノ粒子を用いた実験を後ろにずらし、今年度は別の材料を用いた実験を行ったため、予定していた経費執行が延期になった。具体的には、無機ナノ粒子複合体の合成と精製の条件検討の実験、およびそれを用いた動物実験を年度内に行うことができなくなった。令和3年度にこの実験を行うため、繰越の130500円は実験に必要な試薬等に使用致します。
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Research Products
(2 results)