2019 Fiscal Year Research-status Report
Rethinking the Concept of Agency: From Hegelian Point of View
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19K12925
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Research Institution | Miyazaki Municipal University |
Principal Investigator |
川瀬 和也 宮崎公立大学, 人文学部, 准教授 (90738022)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヘーゲル / 行為の哲学 / 承認 / 実践的アイデンティティ / プラグマティズム |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、行為の哲学における行為と行為者性の理論についての研究と、ヘーゲルの実践哲学とりわけ承認論に関する研究を行った。 日本哲学会における口頭発表「行為・行為者・行為者性」(2019年5月)においては、行為と行為以外の出来事を行為者性の有無によって区別することが可能か否かについて論じた。行為の哲学においては、出来事としての行為と、行為をする主体、そしてその主体が持つ特徴としての行為者性について論じられるが、それらが互いにどう関わり合っているかは必ずしも明確ではない。これについて、この発表では特に行為と他の出来事の区別という観点から、可能なアプローチを整理した。 Setouchi Philosophy Forum: Hume on Action(2019年10月)においては、Constantine Sandisの著書Character and Causation* Hume's PHilosophy of Action(2019)への書評を通じて、現代の行為者性の哲学と、ヘーゲルに先立つ哲学者としてのヒュームの行為論の比較検討を行った。また、論文「ヘーゲルはプラグマティストか?――ブランダムの承認論」(『ヘーゲル哲学研究』所収、2019年12月)において、現代アメリカの哲学者ロバート・ブランダムがヘーゲルの承認論について論じていることについて検討した。 これらの研究成果の発表を通じて、現代行為論においても行為者性の問題は依然として解決していないこと、また、ヘーゲル研究においては承認論の重要性が広く知られているが、その現代哲学における意義については十分明らかにされていないことが確かめられた。また、これらの問題を考える上で、実践的アイデンティティの問題との関係や、社会契約論との関係が重要になることがわかってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヘーゲル哲学と現代の行為の哲学の両面から研究を遂行し、成果を発表することができた。ヘーゲル哲学においては、『精神現象学』を中心とする実践哲学に関わる分析をさらに進めることが重要だと確認できた。また、現代の行為論に関しては、行為者性についての論点整理が進み、実践的アイデンティティの問題との関係を精査していくべきことが確認できた。また、両方の課題に、カントの実践哲学や社会契約論に関する近年の議論が深く関わることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初課題に掲げていた、承認論を中心とするヘーゲルの実践哲学の再整理と、現代の行為者性の哲学の再検討に向けた研究を継続して行う。研究の進展に伴って見えてきた細分化された課題に一つ一つ取り組んでいきたい。具体的には、実践的アイデンティティの問題、ヘーゲル承認論のプラグマティズム的意義の問題、カント哲学における実践哲学の問題、社会契約論的な考え方がヘーゲルの承認論にとって持つ意義に関する問題などがに取り組むべきことが分かってきたため、これらの課題に取り組んでいく。 なお、新型コロナウイルス感染症の影響により、当初予定していた在外研究の計画は見直さざるを得なくなっている。研究計画期間の後半で在外研究が実施できるかどうか慎重に判断しながら、インターネットの活用等、他の方法を駆使して研究を進展させることも考えていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、年度末の出張予定等が相次いでキャンセルになったことにより、次年度使用額が生じた。
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